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ロカール日常シリーズ ▶️50話
【ゴブリンの討伐】#3 ゴブリン殲滅のついでに
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「やだーっ!?ヤダヤダヤダ!来るな!来るなって言ってんでしょー!?」
「クソッ!アイラ!雑魚は相手にすんなっつってんだろっ!?ボスを狙え!」
「そんなこと言ったってー!」
見下ろす崖の下、ワラワラと集まるゴブリンに囲まれてしまっている女魔導師はパニック状態。放つ水魔法が悉く外れてしまっている姿に、激しくデジャブを感じた。
「…なんつーか、全然、成長してねーのな。」
「ですね。」
同じことを感じていたらしいルキの言葉に、頷いた。
「えー?でも、コレ、マジでヤバいんじゃなーい?回復、全然間に合ってなさそー☆」
「あー、うん。じゃあ、まあ、行こうか?」
「はーい☆」
「ういーっす。」
「…了解。」
兄のゴーサインを持って、三人が崖を駆け降り始めた。私にそんな身体能力は無いので、風魔法を使ってフヨフヨ降りる。
(あ。ルキ、もう突っ込んでってる。)
地に足をつける頃には、ルキがボスゴブリンに一太刀を浴びせていた。それだけで、周囲のヘイトを全てかっさらっていくルキのポテンシャルの高さ。
(…格好いい。)
見惚れながら、エルがまとめてヒールをかけている三人組に近づいた。兄が、呆けた状態の三人組にギルドからの依頼書を掲げて見せている。
「…ってわけだから、はい、これがギルドからの冒険者救助依頼ね。」
「どーする?救助されちゃう?されないんだったら、僕らこのまま帰るけどー?」
「っ!?」
冒険者同士が互いのピンチに助け合う共助とは違う、ギルドからの正式な依頼としての救助。本人たちの承諾が必要とはなるけれど、受け入れてしまえば彼らの依頼は未達成、失敗と見なされる。
(…かと言って、この状況から自分達で立て直せる余裕はないだろうし。)
どう判断するか、リーダー剣士をじっと見ていたら、
「…分かった。救助を、頼む。」
「おい!ヘルマン!てめぇ、勝手に!」
横から、冷静な判断を下したのは僧侶の人。怒るリーダー剣士をなだめるように首を振った。
「ヴィム、今回のこれは、俺達では無理だ。このまま無駄に消耗してもあいつらを倒せる見込みはない。」
「っ!クソっ!たかがゴブリンの群れだぞ!?何でだよ!?何でやれねぇっ!?」
(…それが分からないからやれないのでは?)
ついでに言うと、イグナーツさんはきっちり情報も出してくれていた。それを無視した結果に同情の余地はない。
「えーっと、じゃあ、救助依頼は承諾ってことでいい?で、あいつらは俺らでやるけど?」
「…」
依頼横取りにならないよう確認した兄の言葉に、剣士の男はフイっと顔を背けた。そのまま、聞こえるか聞こえないかくらいの小声で「ああ」とつぶやかれた承諾の声。拾ったのは「救助依頼書」、淡く発行した魔法契約の文字が承諾を伝えた。
「はーい☆んじゃあ、こっちの三人は僕に任せて。」
「うん、頼んだ。…じゃあ、セリ、行こうか?ルキ一人じゃ、狩り切るのは難しいだろうし。」
「うん。」
ここまで、背景と化しながらもゴブリンの群れと一人やり合っていたルキ。ルキの実力なら問題無いって分かっていても、視界の隅でちゃんと見てた。
戦線に近づきながら、兄に確認する。
「…まだ、三十体くらい残ってる。数、全然、減らせてない…?」
「ああ、うん。多分、あの、棒?杖?みたいなの持ってる五体くらいがメイジなんだろうけど。交互にヒール使ってる感じ、かな?」
「一つの群れに、メイジが五体…」
「うん。メッチャ多い。」
百体くらいの群れで一体か二体出現する程度の魔法職ゴブリンが、五十に満たない群れで五体も居るというのは異常事態だけれど─
「…ボスゴブリン、…キングではない?よね?」
「うーん。多分?」
あやふやな兄の返事、私も、自信が持てない。見た目はキングではないくせに、キング以上の群れを統率するボス。
「まぁ、でも、やることは一緒だしな!」
「うん…」
接敵と同時、こちらに気づいた数体を火魔法で焼く。それに気づいたボスゴブリンがルキへの攻撃の手を止め、こちらを向いた。それを見て、兄が笑う。
「はは。すげぇ底上げ。これ、キング超えしてんじゃない?」
「…分からない。」
ボスゴブリンが全身に魔力をまとっているのは分かる。
(あと、何か、妙に筋肉ムキムキだし。)
だけど、その魔力がどういった類の効果で、どの程度の威力があるのか。正確に読み取れるのは、呪術師である兄だけ─
「よしよし。おーけーおーけー。こいつはチートゴブリン。けど、俺は、そういう調子乗ってる奴から力を奪うのは嫌いじゃない。てか、割と好きだ。」
「…」
突然、黒いことを言い出した兄は、前世、何か嫌なことでもあったんだろうか?
「セリ、こいつの魔法防御力、一気にはがすからな?瞬殺で頼む。」
「…了解。」
兄のデバフ、メイジが再び動く前に、頭をつぶす。
「クソッ!アイラ!雑魚は相手にすんなっつってんだろっ!?ボスを狙え!」
「そんなこと言ったってー!」
見下ろす崖の下、ワラワラと集まるゴブリンに囲まれてしまっている女魔導師はパニック状態。放つ水魔法が悉く外れてしまっている姿に、激しくデジャブを感じた。
「…なんつーか、全然、成長してねーのな。」
「ですね。」
同じことを感じていたらしいルキの言葉に、頷いた。
「えー?でも、コレ、マジでヤバいんじゃなーい?回復、全然間に合ってなさそー☆」
「あー、うん。じゃあ、まあ、行こうか?」
「はーい☆」
「ういーっす。」
「…了解。」
兄のゴーサインを持って、三人が崖を駆け降り始めた。私にそんな身体能力は無いので、風魔法を使ってフヨフヨ降りる。
(あ。ルキ、もう突っ込んでってる。)
地に足をつける頃には、ルキがボスゴブリンに一太刀を浴びせていた。それだけで、周囲のヘイトを全てかっさらっていくルキのポテンシャルの高さ。
(…格好いい。)
見惚れながら、エルがまとめてヒールをかけている三人組に近づいた。兄が、呆けた状態の三人組にギルドからの依頼書を掲げて見せている。
「…ってわけだから、はい、これがギルドからの冒険者救助依頼ね。」
「どーする?救助されちゃう?されないんだったら、僕らこのまま帰るけどー?」
「っ!?」
冒険者同士が互いのピンチに助け合う共助とは違う、ギルドからの正式な依頼としての救助。本人たちの承諾が必要とはなるけれど、受け入れてしまえば彼らの依頼は未達成、失敗と見なされる。
(…かと言って、この状況から自分達で立て直せる余裕はないだろうし。)
どう判断するか、リーダー剣士をじっと見ていたら、
「…分かった。救助を、頼む。」
「おい!ヘルマン!てめぇ、勝手に!」
横から、冷静な判断を下したのは僧侶の人。怒るリーダー剣士をなだめるように首を振った。
「ヴィム、今回のこれは、俺達では無理だ。このまま無駄に消耗してもあいつらを倒せる見込みはない。」
「っ!クソっ!たかがゴブリンの群れだぞ!?何でだよ!?何でやれねぇっ!?」
(…それが分からないからやれないのでは?)
ついでに言うと、イグナーツさんはきっちり情報も出してくれていた。それを無視した結果に同情の余地はない。
「えーっと、じゃあ、救助依頼は承諾ってことでいい?で、あいつらは俺らでやるけど?」
「…」
依頼横取りにならないよう確認した兄の言葉に、剣士の男はフイっと顔を背けた。そのまま、聞こえるか聞こえないかくらいの小声で「ああ」とつぶやかれた承諾の声。拾ったのは「救助依頼書」、淡く発行した魔法契約の文字が承諾を伝えた。
「はーい☆んじゃあ、こっちの三人は僕に任せて。」
「うん、頼んだ。…じゃあ、セリ、行こうか?ルキ一人じゃ、狩り切るのは難しいだろうし。」
「うん。」
ここまで、背景と化しながらもゴブリンの群れと一人やり合っていたルキ。ルキの実力なら問題無いって分かっていても、視界の隅でちゃんと見てた。
戦線に近づきながら、兄に確認する。
「…まだ、三十体くらい残ってる。数、全然、減らせてない…?」
「ああ、うん。多分、あの、棒?杖?みたいなの持ってる五体くらいがメイジなんだろうけど。交互にヒール使ってる感じ、かな?」
「一つの群れに、メイジが五体…」
「うん。メッチャ多い。」
百体くらいの群れで一体か二体出現する程度の魔法職ゴブリンが、五十に満たない群れで五体も居るというのは異常事態だけれど─
「…ボスゴブリン、…キングではない?よね?」
「うーん。多分?」
あやふやな兄の返事、私も、自信が持てない。見た目はキングではないくせに、キング以上の群れを統率するボス。
「まぁ、でも、やることは一緒だしな!」
「うん…」
接敵と同時、こちらに気づいた数体を火魔法で焼く。それに気づいたボスゴブリンがルキへの攻撃の手を止め、こちらを向いた。それを見て、兄が笑う。
「はは。すげぇ底上げ。これ、キング超えしてんじゃない?」
「…分からない。」
ボスゴブリンが全身に魔力をまとっているのは分かる。
(あと、何か、妙に筋肉ムキムキだし。)
だけど、その魔力がどういった類の効果で、どの程度の威力があるのか。正確に読み取れるのは、呪術師である兄だけ─
「よしよし。おーけーおーけー。こいつはチートゴブリン。けど、俺は、そういう調子乗ってる奴から力を奪うのは嫌いじゃない。てか、割と好きだ。」
「…」
突然、黒いことを言い出した兄は、前世、何か嫌なことでもあったんだろうか?
「セリ、こいつの魔法防御力、一気にはがすからな?瞬殺で頼む。」
「…了解。」
兄のデバフ、メイジが再び動く前に、頭をつぶす。
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