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ロカール日常シリーズ ▶️50話
【ゴブリンの討伐】#4 依頼完了。出待ちされました
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「はい、お疲れ様。依頼達成おめでとう。救助依頼の方も、うん、助かったよ。彼らも一度死ぬくらいの目に会えばいいとは思うんだけどね?流石に本当に死なれたら、こちらも寝覚めが悪いから。」
受けた指名依頼は両方とも無事に完了し、ギルドでの報告を上げていた。対応してくれていたイグナーツさんがハハハと爽やかに笑う。言ってることはエグいのに。
「それで、今回の救助依頼の方、報酬は出ないけど、その分、ギルドの評価ポイントは高いから、A級昇格が一気に近づいたね?いやー、良かった良かった。」
「…」
冒険者ギルドの各支部が、自らの支部からS級冒険者を出すことを「誉れ」、もしくは「便利」だと考えているのは知っているけれど─
「えーっと?イグナーツさん、その、もしかして、今回の件、態と彼らに…」
「ハハ!シオン君、何言ってるの。偶然だよ、偶然。」
「偶然…」
「そうそう。偶然の巡り合わせ。たまたま僕が君らに依頼しようとした案件に、馬鹿で向こう見ずなぼんくらパーティがシャシャって来ただけ。それで、たまたま居合わせた君らに救助依頼を出しただけだから、ね?」
「…」
(…偶然とは。)
異世界語の難しさに囚われていたら、珍しく、ルキがイグナーツさんに話しかけた。
「…すいません、一つ報告っつーか、気になったことあるんすけど。」
「ん?何かな?」
「あー、今回の群れ、ボスゴブリンの統率力?って言うんすか?キングでもない癖に、他の奴らが必死にボスを庇うというか、そんな動きしてて。まぁ、それで黎明の星の奴らもやられてたんっすけど…」
「ああ。それね。」
頷いたイグナーツさんが、一瞬、遠い目をした気がする。
「…居るんだよねぇ。たまに、そういう個体が。」
「そういう…?」
「うん。何故か妙にカリスマ性があるというか、モテる個体が居てね。」
「モテる…?」
ちょっと、脳が混乱を起こしている。
(…モテるゴブリン…?)
「ボス以外のゴブリン、全員、雌だったでしょ?」
「ええっ!?いや、えっと、すみません、そこまで見てなかったというか、見ても気づかなかったというか…」
イグナーツさんの発言に兄も混乱している。
「多分、雌だったと思うよ。…僕もね、現役の頃に一度目にしたことがあるし、ここで働き出してからは何度か耳にしたこともあるんだけど、まぁ、要するに、そういう群れなんだよ。」
「…えっと、それは、つまり…?」
「そのボスゴブリンのハーレムだったんだろうね。」
「…」
(…ハーレム?)
思い出してみる。彼らの姿。特に、ボスゴブリンの─
(…うん、ただのゴブリン。)
他との差異なんて、特には無かったはず。
「…ちょっと、僕らの感性では理解出来ないところではあるけれど、ゴブリンにはゴブリンなりの社会があり、イケメンが居る。そういうことだよね。」
「…そういうこと、ですか…?」
「うん。そういうこと。」
断言されて、異世界の広さを思い知った。
「あ。」
「うわぁ、待ち伏せ?僕らに何か用?」
「…」
ギルドを出たところで、なんちゃらの星の三人組に出くわした。明らかに人待ち顔だったから、狙いは恐らく私達。
「…用、というか、まぁ、一応、礼に。」
「え。」
「今日は、助かった。あのままじゃ、流石にヤバかった、からな…」
「…」
己の敗北も失敗も認めないタイプだと思っていたリーダー剣士が、予想外なことに頭を下げてきた。彼の後ろに立ってる僧侶の男に何か言われたのかもしれないけれど、そんなことよりも─
(…なぜ、また、ローブを脱いでいる?)
リーダー剣士の後ろ、僧侶と並び立つ女魔導師の服装が前回よりも過激になっている。
(…確かに、街中だし、防御を固める必要はないかもだけど。)
別の意味で防御力ゼロの女を睨む。
(また、ルキのこと見てるし…)
警戒心マックスでガン見してたら、女魔導師と目が合って、ついでに微笑まれた。
(なぜ…)
前回と、あまりにも違う態度に、顔が引きつりそうになる。
「セリ君?だっけ?今日は、本当にありがとうねー?すっごく助かっちゃったぁ!」
「はぁ…」
そういう依頼だったから、としか答えようがない。
「それでね?考えたんだけどぉ、今日のお礼の代わり、私達に一杯おごらせてくれないかなぁ?私達、始まりがあんまりよくなかったじゃない?けど、これからお互いをちゃんと知っていけば、上手くやっていけるんじゃないかと思うんだぁ。」
「…」
絶句。
なんか、以前はルキにのみ向けられていたはずの媚態がこちらにも。ゾワゾワーっときた。動けずにいたら、隣からルキに背中を叩かれる。
「…話がそれだけなら、俺らもう行くから。…セリ、行こうぜ。」
「う、はい。」
硬直していた身体が動き出す。
(…なんか、気持ち悪い。)
ぎこちない歩き方になる背中をルキの掌が支えてくれて、心臓が跳ねた。背後、女魔導師とリーダー剣士の呼び止める声がした気がするけど、こっちは、ルキとの近すぎる距離に、それどころじゃない。
受けた指名依頼は両方とも無事に完了し、ギルドでの報告を上げていた。対応してくれていたイグナーツさんがハハハと爽やかに笑う。言ってることはエグいのに。
「それで、今回の救助依頼の方、報酬は出ないけど、その分、ギルドの評価ポイントは高いから、A級昇格が一気に近づいたね?いやー、良かった良かった。」
「…」
冒険者ギルドの各支部が、自らの支部からS級冒険者を出すことを「誉れ」、もしくは「便利」だと考えているのは知っているけれど─
「えーっと?イグナーツさん、その、もしかして、今回の件、態と彼らに…」
「ハハ!シオン君、何言ってるの。偶然だよ、偶然。」
「偶然…」
「そうそう。偶然の巡り合わせ。たまたま僕が君らに依頼しようとした案件に、馬鹿で向こう見ずなぼんくらパーティがシャシャって来ただけ。それで、たまたま居合わせた君らに救助依頼を出しただけだから、ね?」
「…」
(…偶然とは。)
異世界語の難しさに囚われていたら、珍しく、ルキがイグナーツさんに話しかけた。
「…すいません、一つ報告っつーか、気になったことあるんすけど。」
「ん?何かな?」
「あー、今回の群れ、ボスゴブリンの統率力?って言うんすか?キングでもない癖に、他の奴らが必死にボスを庇うというか、そんな動きしてて。まぁ、それで黎明の星の奴らもやられてたんっすけど…」
「ああ。それね。」
頷いたイグナーツさんが、一瞬、遠い目をした気がする。
「…居るんだよねぇ。たまに、そういう個体が。」
「そういう…?」
「うん。何故か妙にカリスマ性があるというか、モテる個体が居てね。」
「モテる…?」
ちょっと、脳が混乱を起こしている。
(…モテるゴブリン…?)
「ボス以外のゴブリン、全員、雌だったでしょ?」
「ええっ!?いや、えっと、すみません、そこまで見てなかったというか、見ても気づかなかったというか…」
イグナーツさんの発言に兄も混乱している。
「多分、雌だったと思うよ。…僕もね、現役の頃に一度目にしたことがあるし、ここで働き出してからは何度か耳にしたこともあるんだけど、まぁ、要するに、そういう群れなんだよ。」
「…えっと、それは、つまり…?」
「そのボスゴブリンのハーレムだったんだろうね。」
「…」
(…ハーレム?)
思い出してみる。彼らの姿。特に、ボスゴブリンの─
(…うん、ただのゴブリン。)
他との差異なんて、特には無かったはず。
「…ちょっと、僕らの感性では理解出来ないところではあるけれど、ゴブリンにはゴブリンなりの社会があり、イケメンが居る。そういうことだよね。」
「…そういうこと、ですか…?」
「うん。そういうこと。」
断言されて、異世界の広さを思い知った。
「あ。」
「うわぁ、待ち伏せ?僕らに何か用?」
「…」
ギルドを出たところで、なんちゃらの星の三人組に出くわした。明らかに人待ち顔だったから、狙いは恐らく私達。
「…用、というか、まぁ、一応、礼に。」
「え。」
「今日は、助かった。あのままじゃ、流石にヤバかった、からな…」
「…」
己の敗北も失敗も認めないタイプだと思っていたリーダー剣士が、予想外なことに頭を下げてきた。彼の後ろに立ってる僧侶の男に何か言われたのかもしれないけれど、そんなことよりも─
(…なぜ、また、ローブを脱いでいる?)
リーダー剣士の後ろ、僧侶と並び立つ女魔導師の服装が前回よりも過激になっている。
(…確かに、街中だし、防御を固める必要はないかもだけど。)
別の意味で防御力ゼロの女を睨む。
(また、ルキのこと見てるし…)
警戒心マックスでガン見してたら、女魔導師と目が合って、ついでに微笑まれた。
(なぜ…)
前回と、あまりにも違う態度に、顔が引きつりそうになる。
「セリ君?だっけ?今日は、本当にありがとうねー?すっごく助かっちゃったぁ!」
「はぁ…」
そういう依頼だったから、としか答えようがない。
「それでね?考えたんだけどぉ、今日のお礼の代わり、私達に一杯おごらせてくれないかなぁ?私達、始まりがあんまりよくなかったじゃない?けど、これからお互いをちゃんと知っていけば、上手くやっていけるんじゃないかと思うんだぁ。」
「…」
絶句。
なんか、以前はルキにのみ向けられていたはずの媚態がこちらにも。ゾワゾワーっときた。動けずにいたら、隣からルキに背中を叩かれる。
「…話がそれだけなら、俺らもう行くから。…セリ、行こうぜ。」
「う、はい。」
硬直していた身体が動き出す。
(…なんか、気持ち悪い。)
ぎこちない歩き方になる背中をルキの掌が支えてくれて、心臓が跳ねた。背後、女魔導師とリーダー剣士の呼び止める声がした気がするけど、こっちは、ルキとの近すぎる距離に、それどころじゃない。
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