【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン

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S級試験 ▶34話

#7 試験二日目、運を天に任せるために

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S級試験二日目の実技、今回の試験は、冒険者同士が一対一で戦う対戦形式で行われることが発表され、十のグループに別れた後はそれぞれの試験会場へと連れていかれた。

(…緊張、してきた。)

たどり着いた会場は円形の屋内演習場、休憩を挟むこともなく、名前を呼ばれた四組が、早速、対戦を始めている。

(よりによって、対人戦…)

S級試験の実技は、その年によって内容が変わる。対人戦以外にも、実際にモンスターと戦ったり、剣技や魔術のお披露目の場合だったり。その中でも、一番苦手な対人戦に当たってしまうなんて。

別グループになったルキが、別れ際にかけてくれた言葉を思い出す。

─セリ、無理だけはすんな。ヤバいと思ったら、直ぐに棄権しろ

(…棄権、はしたくないけど。)

私は、師や兄との修行以外で人に向けて魔法を使ったことがない。S級受験が決まってから、空いた時間で兄やルキが軽く相手をしてくれたことはあったけれど。

(…怖い。)

人に剣を向けられたり、魔術を撃たれたりすることよりも、自分の魔術が人を傷つけることの方が―

「─深淵をのぞく四翼しよくの風、セリ。前へ。」

「っ!」

名前を呼ばれて、ハッとする。どうやら、前の組の試験が終わったらしい。名前を呼んだ試験官─白いローブに白い面をつけ、男か女かも分からない─の元へ歩き出そうとして、

「邪魔だ!」

「っ!」

他の受験者、同じく名前を呼ばれて前へ出ようとしていた剣士らしき男にぶつかって、弾みで転んだ。慌てて起き上がろうとして、足がもつれる。

(私、震えてる…)

身体が思うように動かないという初めての体験に焦っていると、目の前に、綺麗な指先の手が差し出された。

(…え?)

顔を上げれば、目の前には白い面をつけた試験官の姿、思わずその手を取れば、身体をぐっと引き起こされる。

「あ、あの、すみません!ありがとうございます…」

「…」

礼を言えば、小さく頷いて返された。女性だろうか?自分よりも少しだけ高い目線の試験官に背中を押されて、名前を呼んだ試験官の方へと促される。促されるまま歩き出して、

「?」

「…」

背中から手が離れる直前、軽く背中を叩かれた気がして振り返る。振り返った先のお面の下の表情は見えないけれど、また、小さく頷かれた気がした。

(…頑張れ、ってことかな?)

それだけで、さっきまでのガチガチの緊張と恐怖が、少しだけ薄らいだ。どうやら対戦相手だったらしい、先ほどの剣士と並んで立たされながら、小さく気合を入れる。

(人事を尽くす…)

それだけに集中して、今の私の出来る限り、やるしかないのだから。



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