異世界から帰ってきたら、大好きだった幼馴染みのことがそんなに好きではなくなっていた

リコピン

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第一章 帰って来た三年前

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4.

三年ぶりの家への帰り道。チサの手を引いて歩きながら、気がついた。

「チサ、そう言えば、どこに住んでるの?」

転入生としてやって来たということは、『仮』だとしても、こちらの世界に住む場所はあるんだろうけれど。

立ち止まって、チサの返事を待つ。

「…『エレガンス佐原』」

「え!同じマンション!?」

予想外の答えに、思わず声をあげてしまった。

「うちも『エレガンス佐原』の506号室!チサは?何号室?」

「505」

「お隣さん!?」

まさかの事実に驚愕する。確かに最近、隣の住人が引っ越して行ったことは知っていた。けれど、その後に誰かが引っ越して来た様子は全く感じられなかったのに。

「えー、じゃあ、まあ、このまま一緒に帰ろうか?」

「…」

無言でうなずいたチサが、繋いだままだった手をすっと引き抜いた。

今度は普通に並んで歩きながら、気になっていたことをチサに尋ねる。

「チサは私をこの世界に送ってきただけで、またそのうち、あちらに帰っちゃうんだよね?」

「…」

チサの無言の肯定に、やはり寂しさが込み上げる。なんと言えばいいのか言葉を探していると、チサの方が口を開いた。

「…こちらの世界には、魔力がほとんど存在しない。帰還の魔法陣を起動できるくらいの魔力が溜まるまではこちらにいる」

「そっかあ…」

それが例え、一年でも、二年でも。残されたチサとの時間を大切にしようと決めてチサに笑いかければ、真顔の返事が返ってきた。

「…多分、五十年くらいかかる」

「!?ごっ!?」

「…」

チサの顔をまじまじと見つめてしまうが、そこに悲観する様子は見られない。

「えー、じゃあ、まあ、それまで、よろしくね?」

「…」

また、二人で歩き出しながら、今度は自分のことを考える。

「それにしても、どうするかなぁ、この体。明日から夏休みだから、学校には行かなくていいけど。お父さんとお母さんにばれないように、何とか元の体型に戻さないと」

「…」

「夏休みは引きこもって暮らすかぁ」

「…付き合う」

チサの提案に笑って首を振る。

「いいよ、いいよ。チサはチサで好きに夏休みをエンジョイしてよ」

「…一人で取り戻すのは、大変」

「えー、大丈夫、大丈夫。食べて寝るだけの生活送るだけだから、楽勝だよ!」

元から、夏休みだからといって海へ山へとアクティブに活動するタイプではない。例え家から一歩も出ることなく夏休みが終わっても、大した苦痛にはならない。そう言って笑ったけれど、チサの真顔が崩れることはなかった。

「…『晴山大学』」

「え?」

「夏休み前にアカリが言ってた。志望校だって」

「!?」

その言葉に、ザッと血の気が引いていった。

「覚えてる?三年前までの授業内容。あと半年で、大学受験」

「無理だー!!」

異世界から帰ってきて、まだどこかフワフワしていた気持ちが、一気にリアルに引き寄せられた。再び崩れ落ちそうになったところで、チサに背中を叩かれる。

「…忘れた分を取り戻せるまで、勉強、付き合う。アカリをあっちに連れていったのは私だから」

「チサー」

友人の励ましは心強いけれど、果たして半年で三年分を取り戻せるだろうか―

「アカリ、『家に籠るのは平気だ』って言った。『出来るか?』じゃない、『やる』の」

「…はい」

何故だろう―

チサの姿が、あちらの世界でど素人の私に半年で剣や魔法の使い方を叩き込んでくれた師匠の姿と重なった。




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