異世界から帰ってきたら、大好きだった幼馴染みのことがそんなに好きではなくなっていた

リコピン

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第四章 夏合宿で開いた門

7. Side S

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7. Side S

「…家には、報告をあげる」

「それは…」

必要なことなのだと、理解はしている。それでも―

「お前が上にあげなくても、俺んとこからお前んちに情報は行くぞ」

「…」

目の前の彼女は、先程のことなどまるで無かったかのように暢気に笑っていて。どうしようもない思いが込み上げる。報告が上がれば、彼女達の力は必ず必要とされる。彼女を危険な目に会わせることになる―

橋架はしかけ、佐藤、何でお前らにあんな力があんのか、言いたくなきゃ言わなくていい」

睨むような悠司の視線に、彼女はまた笑った。

「ただな、俺達、俺らの家は長く『幽界の門』を封じることを生業としてきてるような家なんだよ。お前らの力について、家に報告無しってわけにはいかねえ」

悪いが、と続けた悠司の言葉に、顔を見合わせた二人は頷いた。本当に『何でもないこと』みたいに―

「…明莉ちゃん、チサさん。嫌なら断って。君達の力が知られれば、それを利用しよう、取り込もうとする人達は必ずいる。それが嫌なら」

「大丈夫だよ、花守さん。力について説明は出来ないけど、おうちに報告?するのは全然問題なし」

「!?だけど!」

わかっているのだろうか。彼女の人生が変わってしまうのだ。彼女達を引き込もうとする権力ちからは強い。個人で抗うことが難しい程度には。

表に出来ない苦労と危険に身をさらすことになる。家族にさえ、それを明かすことも出来ずに。

「私、手伝うよ」

「…?」

「花守さんとか部長のお手伝い。『幽界の門を封じる』の、手伝う」

彼女の穏やかさが恐い―

「…そんな、簡単に…」

「え?え?何で!?そんな泣きそうな顔しないで!私、全然嫌じゃないよ!花守さんとか、部長の力になれるなら嬉しいし、大丈夫、こう見えて、結構鍛えてるから!」

「…明莉ちゃん、」

状況が、彼女達を逃さないことをわかっていて、彼女の優しさに甘えてしまう僕は、ズルい―

「…ありがとう、ごめんね」

―僕に、力がなくて

「いやいやいや、お礼を言うのはこっちの方だから。知らなかったけど、花守さん達は私達の知らないところで、日夜、あんなんと戦ってくれてたんでしょ?」

周囲を明るくする、彼女の満面の笑顔―

「ありがとう!」

この笑顔を、曇らせたくない―

「…明莉ちゃん、お願いがあるんだけど…」

「何?この際、何でも言って!何でも協力する!」

「ありがとう。じゃあ、僕のこと『秀』って呼んでくれる?」

「はっ!?」

限界まで見開かれた目が揺れている―

「嬉しかったから、また呼んで欲しい」

「『また』!?」

「うん。明莉ちゃんの方からそう言ってくれて嬉しかったのに、直ぐに『花守さん』に戻っちゃったから」

「ファッツ!?」

顔を朱に染め上げた彼女のこの明るさ、強さを、「守りたい」と心から思う―




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