異世界から帰ってきたら、大好きだった幼馴染みのことがそんなに好きではなくなっていた

リコピン

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第五章 近づいたり、離れたり

6.

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6.

「よぉ、久しぶり。学校じゃなかなか会わないよな」

「久しぶり。確かに、全然会わなかったね」

遠目には見かけたし、目が合うことも何度かあったのだけれど。そんな時は直ぐに目をそらされたし、来叶らいとが近寄ってくることなんてなかった。なのに。

「…」

「…」

「あのさ、ちょっと、話、しないか?」

来叶らいとが?私と?」

一体どういう心境の変化があったというのか、マジマジ見つめてしまう。ばつの悪そうな顔が下を向いた。

「悪かったよ、昔のことは。その話もしたいからさ、どっかで飯でも食おうぜ?」

「うん、まあ、いいよ。今は時間あるし」

美歌に「ライトに会ったら話してみる」って約束したし。

「じゃあ、駅前の、」

「いや、そこのカフェテリアにしよう」

立っている場所からもよく見える、学内カフェテリアを指差した。

「はぁ?何で、あんなとこ。もっと、駅前のさ」

「そんなとこまで行かないよ。美味しいよ。カフェのコーヒー」

「…」

渋々だか、頷いた来叶。先に帰ると言うチサとは別れ、大きなガラス張りの明るい店内へと足を踏み入れた。

「あ、来叶の話の前に、言っとかないと。美歌がね?寂しがってたよ、来叶に会えなくて」

「…いいんだよ、あいつのことは、もう」

「え?もういいって、どういうこと?」

もしや―

「別れちゃったの?美歌と」

「…まあな、遠距離なんてそんなもんだろ」

不機嫌そうではあるけど、落ち込んではいなさそうな来叶。いや、それにしても、

―マジかぁ

美歌と会ってから三ヶ月くらいしか経っていないのに。展開が、急過ぎる。

「うん、でも、まあ、そっか。それは二人の問題だもんね。わかった、外野はこれ以上は言わない。黙っとく」 

面倒なことには巻き込まれまい。

「…お前は?」

「うん?」

「誰かと付き合ってんのか?」

「!?いやいやいや!」

『誰か』で、一瞬浮かんでしまった彼の顔。素直すぎる自分の欲望を、首を振って思いっきり否定する。

「ふーん、まあ、そうだろうな」

「…」

何だその反応は。まあ、確かに私に彼氏がいないことは不思議でも何でもないけど。その「当然だな」みたいな納得のされ方は、それはそれで腹が立つ。

「お前さ、明日、何限から?」

「?三限からだけど?」

「岡島教授の講義だよな?俺、二限からあるからさ、お前、早めに出てこいよ。どっかで一緒に昼飯食ってから三限出ようぜ。そこでゆっくり話してさ、」

「…何で?」

ちょっと、本気で来叶が何を言ってるのかわからない。

「何でって…」

いやいや、そんな「信じられない」みたいな顔されても。私の方が意味がわからん。

「何で急にそんなこと言い出したの?いつも一緒にいる人達は?」

きらびやかな一団がいつも一緒にいるではないか。お昼だって、講義だって、彼らととればいい。

「あいつらは…」

「…?」

「あいつらとは話が合わねえんだよ。どこに旅行に行ったとか、誰のパーティー呼ばれたとか、話題がくだらなすぎる。大学に遊びに来てるだけなんだよ。自己中なやつらばっかだし」

「…」

「馬鹿なやつらと付き合ってたら、こっちが疲れる」

それからも、少なくともしばらくは友人だったであろう人達に対する愚痴を延々と垂れ流す来叶の話を聞いていたけれど、何か、ようするに、僻みにしか聞こえない。

来叶はイケメンだ。地元では有名だったし、高校では、他校でも名が知られていたくらいには。それに、難関大学と言われる晴山に入れるだけの頭の良さもある。

だけど、それはあくまで地元での、高校までの話でしかない。晴山は流石に都会にあるだけあって、客観的に見て、来叶よりイケメンはたくさんいる。皆、同じ大学に通っているのだから、頭の良さも来叶の優位にはならない。大学から始めたテニスに関しても、今から大活躍出来るほどの運動神経は持ち合わせていない。

高校までとは、周囲の評価がまるで違う―

それが、来叶の愚痴の端々から感じられた。

まだまだ続きそうなその愚痴を遮って、引き止める来叶に別れを告げて席を立つ。もちろん、明日のランチも断った。

店を出ても、来叶は追って来ない。席を立った時に慌ててはいたけれど、まあ、彼の性格上「追う」ことはしないだろう。のんびり歩いて50メートルほど店を離れたところで、声をかけられた。

「ねえ、あなた嘉島かしま来叶の新しい彼女?」

「…彼女じゃないよ」

「ふーん」

初対面の女の子からの喧嘩腰の第一声にも驚くが、その「ふーん」は何だ。更に言えば、相手をジロジロ見るのも失礼だよ。

「まあ、あいつのタイプじゃないか。でも、一応言っておくけど、嘉島来叶には関わらない方がいいよ?」

「それは自分で決めるんで」

関わるつもりはないけど、それを人に決められるつもりもない。

「…何よ、こっちは親切で言ってんだけど。アイツに関わって痛い目見るのはアンタだから!」

言うだけ言うと、ふん、と鼻息荒く去っていってしまった。確か、来叶と同じキラキラ集団に居た子だとは思うんだけど。

何だったんだ、一体。




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