異世界から帰ってきたら、大好きだった幼馴染みのことがそんなに好きではなくなっていた

リコピン

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第五章 近づいたり、離れたり

5.

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5.

「はー、やった。いやいや、油断は良くないね!」

「…明莉の悪い癖」

わざとらしいくらいのテンションで誤魔化してみたけれど、秀が動かない。何も言ってくれない。それが何となく恐くて、近づけない。

「本当だよー。次は油断しない。大丈夫。よし、次はちょっと門を潰してくるね?」

言って、門へと近づく。やり過ぎたかなあ、どうしたもんかと考えながら機械的に門を殴り続ければ、今度は特に何かが出てくることもなく、あっさりと削りきってしまった。

「はい、チサ、交代」

「わかった」

「…」

チサと入れ替わりに秀の傍に近寄ったが、それでも未だ無言のままの秀。

「…あのー、秀さん?」

「明莉ちゃん、右腕見せて」

「あー」

―気づかれてたか

最初に吹っ飛ばされた時、とっさに庇った右腕にモロに衝撃を受けてしまったから、多分、ヒビくらいは入っていると思う。それくらいの痛みはあった。ただ、速効『鎮痛』スキルが仕事をしたらしく、今は鈍い痛みが残るくらいで腕を庇ったりもしていない。なのに、気づかれちゃうんだもんなー。

それでも、とりあえず、へらっと笑ってみる。

「大したことはないと思うんだよね、」

「…見せて」

真顔、恐い。

誤魔化せない雰囲気に、恐る恐る右腕を差し出す。腫れを確かめるようにそっと腕を撫でた手が止まり、秀が頭を下げた。

「…本当に、ごめん」

「秀が謝ることじゃないよ」

「いや。君を危険に晒したのは間違いなく、僕の責任だから」

強い言葉で言う秀に、慌てて首を振る。

「いやいや、油断したのは私だから、完全に私のミス、」

「そもそも、」

今度は、言葉の途中で遮られた。

「門に関しては僕らの仕事で、僕らで対処しなければいけないことだ。それを君に任せきったあげく、僕は応援を呼ぶことすら出来なかった。門が大きいことは、事前に感知出来ていたのに…」

「でも、応援っていっても、部長は今日は遠いところでお仕事だったんでしょ?それに、私も調子ぶっこいてたし。援護とか、必要そうに見えなかったでしょ?」

実際―強がりでも、負け惜しみでもなく―援護は要らなかった。油断していなければ、怪我なんてするような相手じゃなかったのだから。

そう伝えてみても、秀の眉間のシワが伸びることはなく、

「君のミスだろうが、実力だろうが、君をフォロー出来る体制は整えて挑むべきだったんだ。…幸いと言うべきか、今日は怪我で済んだ。だけど次は?僕がまた判断を誤れば、今度は君を失ってしまうかもしれない」

「…」

「…そんなのは、堪えられない」

伸びてきた腕に捕まった。そっと抱き締めるだけのその力はとても弱い。いつでも逃げ出せるほど。だけど、私を抱き締めるその体が、震えているから―

ひどく怯えた様子の彼に、何も言えなくなってしまった。





秀の腕の中、完全に思考が停止して動けなくなってしまった私を再起動させたのは、チサの「何やってるの?」の一言だった。

光速で飛び出した後、彼がどんな表情をしているかは確かめられず、下を向く。結局、そこからはほとんど言葉を交わすこともなく、各々、帰宅の途につくことになった。

そして、その夜から一週間が過ぎた頃、鈍い私でも流石に気がついた異変。

―秀に、避けられてる?

「避ける」まではいかなくても、少なくとも以前のように秀から会いに来てくれることがなくなった。メールも、腕の怪我の具合を聞いてくる内容に、腕の写真つきで「大丈夫」の返事をした後は、「良かった」の一言が返ってきただけ。「遊びに行こう」も「ご飯食べに行く?」の誘いもなく。

そして私は―

それを『寂しい』と感じている―

自分から会いに行くべきか。避けられている理由は知りたいけれど、はっきりと聞くのは恐い。チサに冷たい目で見られながらもウダウダしていたところに、声をかけてきたのは、思いがけない人物だった―

「…明莉」

「?来叶らいと?」




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