異世界から帰ってきたら、大好きだった幼馴染みのことがそんなに好きではなくなっていた

リコピン

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第六章 元勇者とお姫様

6.

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6.

中庭へ戻ると、明らかに空気が変わっていた。部外者である私が秀と親しそうにしているせいかとも思ったが、どうやらそれだけてはないらしい―

―花守の無能が、余所者に取り入ろうと必死だな

―力を持たず、なりふりかまわないというところなのだろう。哀れな

―五家の面汚しが!

久しぶりに使ったアクティブスキル『遠耳』。聞こえてきたのは、凄いヤナ感じの言葉の数々。腹が立つ。ちょっとあの辺の小僧どもにご挨拶に、と思ったら、近づいてくる雰囲気イケメン。

部長だった。アロハ着てないとわかりづらい。

「よ。橋架はしかけ、捕獲できたみたいだな」

「…閉じ込められていた。悠司、何故お前がついていながら」

「お姫様を助けるナイトの役目は、俺じゃなくてお前のもんだろ?」

言って、ウィンクまでする部長。酔ってるの?素面?なんだ、ただのキザか。

この場合の『お姫様』は私なんだろうけど、あっちの世界で本物のお姫様に会ったこともあるから、姫を名乗るなんておこがましくて出来ない。私、元勇者だし。

「そんで?お前は、あやめと何を話して来たんだ?」

「…」

ほぼ、『秀の取り合い』だった気がするから、言わない。部長はすっごいニヤニヤしてるし。この人、最初からわかってて私を行かせたな。

「まあ、なに話したか知らんが、お前が居ない間に、菖がお前に対して『不快感を示した』からな。今、結構なアウェーだぞ?」

「…」

なるほど。このヒソヒソ感には、秀への悪口だけじゃなくて、私への悪口も多分に含まれていると。なら、まぁ、いいか。秀と私で悪意を半分個、いや、相乗効果?それは、ちょっと…

やっぱり、あの辺のお嬢さん方にもご挨拶を、と思ったところで、中庭の一角に違和感を感じる。さすがと言うか、それを口にする前に秀の視線は既にそちらを向いていた。部長が秀の視線の先を追う。

何だろう、アレは。犬?のようなナニか―

「また始めやがったのか。こんな場所まで連れてきやがって。悪趣味な奴らだぜ」

「あれ、ナニ?」

「獣型の、低級の幽鬼を法力で縛ってんだよ。幽界の研究のために捕らえたもんなんだろうけど。俺らみたいなのにも見えるように、わざわざ法力で可視化までしてやがる。見世物だな」

答える部長の眉間にはシワが寄っている。一点を見つめる秀の表情も険しいままだ。

「…磨針まはり家は幽鬼の使役について研究していて。低級の幽鬼を調教して、他の幽鬼と戦わせる、戦力としての利用に力を入れてるんだ」

「…そんなこと、出来るの?」

「獣型、低級と言われるものについては、ある程度成功しているみたいだね。今までにも何度か研究成果としてお披露目があったんだ」

「へー」

まあ、それがただの見世物ではなく、秀や部長の助けになる研究なら。なんて呑気に眺めていたら、どうやら、その研究成果の一団が、こちらに向かっているらしいということに気づく。

「…明莉ちゃん、下がってて」

「え?」

目の前に迫る一団。秀と部長が私の前に立ち塞がった。二人の間から見える、鎖に繋がれた四つ足の幽鬼は、近づくと大型犬よりも一回りは大きいことがわかる。近づいてきたうちの一人、幽鬼に繋いだ鎖の先を手にした二十代くらいの男が口を開いた。

「花守秀、冴木悠司、どけ。我々は、その女に用がある」

「どきません。彼女に一体、何のご用件でしょう?」

「…無能が。幽鬼一つ倒すことも出来ない貴様に用はない。失せろ」

―あ?

ちょっと今のは、カチンと来たよ?一歩、前に出て、秀に並ぶ。

「私に、何の用ですか?」

「…明莉ちゃん」

「ふん、無能が拾ってきた余所者がどの程度の力を持つのか、確かめてやろうというだけだ。貴様、我々の用意した実験体と戦ってみろ」

つまり、この幽鬼とのバトルショーを見せろと。そんなの―

「いや。見世物になるつもりはないよ」

「貴様!?言われた通りにしろ!」

激昂した男の声に呼応してか、幽鬼のうなり声が激しくなる。そして突如、繋いである鎖を引きちぎりそうな勢いで暴れだした。

「くそっ!?急に何だ!大人しくしていろ!」

男が幽鬼を蹴飛ばし、法力を使う。大人しくなった様子の幽鬼に、男がニヤリと笑った。

「どうやら、暴れたくて堪らないらしいな。行け、お前の敵は、あの女だ」

男の指先が、真っ直ぐにこちらを差した。




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