46 / 65
第六章 元勇者とお姫様
5.
しおりを挟む
5.
結果、部屋に一人取り残された。一応、招かれた立場のはずなのだけど。
私も部長のとこに戻るかと、立ち上がってドアへと向かった。ドアノブを引いたところで異変に気づく。ドアが、開かない。あれ?何か、閉じ込められた?一応、押してみる。開かない。
ちょっと、ため息が出た。
だいたい、こんだけ高級感漂わせてるホテルの部屋のドアが、あんなに大きな音を立てて閉まるのがおかしい。あの時に何か、多分、秀たちが「法力」と呼んでいる力を使ったのだろう。やったのがお姫様本人なのか、お付きの人なのかはわからないけれど。
―本当に、どうするかなぁ。
何とかならないこともないとは思う。ただ、今はまだ気が立ってるのもあって、下手したらドアを粉砕してしまいかねない。自信がある。
―仕方ない
とりあえず、お茶を飲みきってしまおう。お高いホテルで出されるだけあって、かなり美味しかった。椅子に戻ってカップに口をつけた。ちょっと休憩。ゴージャスソファに深々と身を沈めてみる。お行儀悪いけど、これはなかなか―
気持ちもちょっと静まってきた。よく考えたら、ホテルのスイートに入れるなんて滅多に出来ない経験。今後、こんなとこに来れるかわからない。もう少し、このステイを楽しむかと、テーブルの上に置かれたガラスの器、そこに盛ってあるお茶菓子に手を伸ばしたところで―
突然、部屋の扉が激しく叩かれた。
「っ!?」
くぐもった声が僅かに聴こえた。その声が私の名前を呼んでいる。ビクリとした。危ない、お皿割るとこだった。久しぶりに聞いた声に、まだ動揺している。本当に、相変わらず、気配が薄い、秀って―
恐る恐るドアまで近づいていけば、何とか扉の向こうの声も聞きとれるようになった。
「明莉ちゃん?大丈夫?」
「大丈夫、です」
心配してくれている声に、不謹慎にも気持ちが弾んでしまう。駆けつけてくれた、ってことだよね?
「本当に?ドア、中から開けられる?これ、扉に呪がかかってるんだけど」
「あ、やっぱり」
浮かれてる場合じゃなかった。申し訳ない。
「ごめん、僕じゃ開けられない。悠司を呼んでくる」
「あ、待って待って、大丈夫。多分、自分でいける」
うん、いける。気分が上がって、やる気が出た。これは、アレだ。マハトの天空城。檻に閉じ込められて、魔力も封印された時にやったやつ。あの感覚で、封印だけを引き剥がす。ドアは壊さないように。
ノブに手をかけ、かける力を徐々に大きくしていく。抵抗を感じる。これが封印だから、これだけ。思いっきり引き剥がす。
「あ」
パリーンって音がしそうな感じで何かが壊れた。ドアの抵抗が無くなり、外側へと大きく開いた。
「明莉ちゃん!?大丈夫だった?」
「…大丈夫っす」
両腕を掴まれ、視線を合わせて確かめられた。顔が近い。
「…良かった、本当に」
「…」
あー、秀が笑ってる。こんな風に笑ってる秀を見るの、久しぶりだな。なんか、さっきまで投げやりになってた気分も完全に復活した。
「ごめんね、なんの力にもなれなくて」
「ううん、迎えに来てくれたんだよね?ありがとう!」
秀に、救われたよ―
結果、部屋に一人取り残された。一応、招かれた立場のはずなのだけど。
私も部長のとこに戻るかと、立ち上がってドアへと向かった。ドアノブを引いたところで異変に気づく。ドアが、開かない。あれ?何か、閉じ込められた?一応、押してみる。開かない。
ちょっと、ため息が出た。
だいたい、こんだけ高級感漂わせてるホテルの部屋のドアが、あんなに大きな音を立てて閉まるのがおかしい。あの時に何か、多分、秀たちが「法力」と呼んでいる力を使ったのだろう。やったのがお姫様本人なのか、お付きの人なのかはわからないけれど。
―本当に、どうするかなぁ。
何とかならないこともないとは思う。ただ、今はまだ気が立ってるのもあって、下手したらドアを粉砕してしまいかねない。自信がある。
―仕方ない
とりあえず、お茶を飲みきってしまおう。お高いホテルで出されるだけあって、かなり美味しかった。椅子に戻ってカップに口をつけた。ちょっと休憩。ゴージャスソファに深々と身を沈めてみる。お行儀悪いけど、これはなかなか―
気持ちもちょっと静まってきた。よく考えたら、ホテルのスイートに入れるなんて滅多に出来ない経験。今後、こんなとこに来れるかわからない。もう少し、このステイを楽しむかと、テーブルの上に置かれたガラスの器、そこに盛ってあるお茶菓子に手を伸ばしたところで―
突然、部屋の扉が激しく叩かれた。
「っ!?」
くぐもった声が僅かに聴こえた。その声が私の名前を呼んでいる。ビクリとした。危ない、お皿割るとこだった。久しぶりに聞いた声に、まだ動揺している。本当に、相変わらず、気配が薄い、秀って―
恐る恐るドアまで近づいていけば、何とか扉の向こうの声も聞きとれるようになった。
「明莉ちゃん?大丈夫?」
「大丈夫、です」
心配してくれている声に、不謹慎にも気持ちが弾んでしまう。駆けつけてくれた、ってことだよね?
「本当に?ドア、中から開けられる?これ、扉に呪がかかってるんだけど」
「あ、やっぱり」
浮かれてる場合じゃなかった。申し訳ない。
「ごめん、僕じゃ開けられない。悠司を呼んでくる」
「あ、待って待って、大丈夫。多分、自分でいける」
うん、いける。気分が上がって、やる気が出た。これは、アレだ。マハトの天空城。檻に閉じ込められて、魔力も封印された時にやったやつ。あの感覚で、封印だけを引き剥がす。ドアは壊さないように。
ノブに手をかけ、かける力を徐々に大きくしていく。抵抗を感じる。これが封印だから、これだけ。思いっきり引き剥がす。
「あ」
パリーンって音がしそうな感じで何かが壊れた。ドアの抵抗が無くなり、外側へと大きく開いた。
「明莉ちゃん!?大丈夫だった?」
「…大丈夫っす」
両腕を掴まれ、視線を合わせて確かめられた。顔が近い。
「…良かった、本当に」
「…」
あー、秀が笑ってる。こんな風に笑ってる秀を見るの、久しぶりだな。なんか、さっきまで投げやりになってた気分も完全に復活した。
「ごめんね、なんの力にもなれなくて」
「ううん、迎えに来てくれたんだよね?ありがとう!」
秀に、救われたよ―
44
あなたにおすすめの小説
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました
三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。
優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。
優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。
そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。
絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。
そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる