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第七章 わすれられない
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「お前、このまま帰るのか?なら乗っけてくぞ?」
朱桃家の敷地を出たところで、悠司が振り返る。近くに車を止めているという悠司の言葉に首を振った。
「彼女のところに顔を出して帰る」
「あー、なるほど、了解」
軽く手をあげてから去っていく悠司の背中を見送る。その姿が、屋敷の角、塀の向こうに完全に消えてから、今出てきた門を振り返った。屋敷の中から感じていた気配、自分達の後をずっとつけていた馴染み深いその気配の持ち主が、門の影から姿を現した。
「…にい様」
「久しぶりだね、菖」
「あの!にい様、明莉さんが怪我をされたというのは本当ですか?」
「…ああ」
前置き無しに彼女のことに触れてくる菖。彼女のことを心配しているわけではないのが、言葉の端々から感じられた。
「…明莉さんでは、やはり五家のお役目には力不足だったのではないのですか?」
「そんなことはないよ」
誰が、どういう意図で、悪意ある言葉をこの子に囁くのか―
「ですが、彼女は全くの役立たず、足手まといにさえなっているそうではないですか」
「…」
そして何故、この子は気づかないままなのか、そこに込められた悪意に。いや、気づいているのだろう。気づいていて、そのまま受け入れている。なんと醜悪な―
「にい様!もう、いいではありませんか。明莉さんにとって、これ以上お役目を続けることは不可能なのです!ご自身のためにも、彼女は五家と、にい様と縁を切るべき、」
「それは、彼女が決めることだよ」
助けに成りたいと言ってくれた言葉が嬉しかった。共に戦えることも。だけど、彼女が「もう無理だ」と言うなら、それはそれで構わない。ただ、彼女の決断を、選択を他の誰かが邪魔することだけは許せない。
「…秀にい様、私を選んで。私なら、にい様を、」
「何度も言っているよね?菖は僕にとって大切な妹だ。それ以上の気持ちを菖に抱くことはない」
「でも!それは、花守の家のことがあるから!」
何度言っても彼女が聞き入れない言葉を、繰り返す。
「関係ないよ、家のことは。これは、僕の気持ちの問題だから」
「そんな!だって!?」
「菖、僕の言葉をちゃんと考えて。僕は何度も同じことを言っている。言葉の意味をそのまま受け入れて欲しい。君の勝手な解釈や、周囲の声に惑わされずに」
「…あの、女のせいなのですか?あの女が!にい様のお心を惑わせて!私から秀にい様を!」
「…」
溢れそうになる溜め息を、何とか堪えた。どれだけ言葉を重ねても届かない徒労に、疲弊していく。
「…菖、彼女に何かしようとは考えないで。言ったよね?彼女に危害が加えられるようなことがあれば、僕は花守の家を出るよ」
例え、それがどんなに無責任なことであろうと。どんな手を使うことになろうと。
「なんで!?にい様!何であの女なの!?戦えるから!?力があるから!?私が!私に力があればにい様は私を!」
「…菖、関係無いんだ。彼女が力を持っていようと、いまいと。僕の気持ちは変わらないから」
彼女を、彼女の笑顔を守りたいというこの想いは―
「にい様!」
「もう行くよ。菖も、もっと周囲をよく見て。誰が本当に菖の味方なのか、ちゃんと見て、聞いて、考えるんだ」
大切な妹だった菖。君の未来に、僕はもう居られない。
「お前、このまま帰るのか?なら乗っけてくぞ?」
朱桃家の敷地を出たところで、悠司が振り返る。近くに車を止めているという悠司の言葉に首を振った。
「彼女のところに顔を出して帰る」
「あー、なるほど、了解」
軽く手をあげてから去っていく悠司の背中を見送る。その姿が、屋敷の角、塀の向こうに完全に消えてから、今出てきた門を振り返った。屋敷の中から感じていた気配、自分達の後をずっとつけていた馴染み深いその気配の持ち主が、門の影から姿を現した。
「…にい様」
「久しぶりだね、菖」
「あの!にい様、明莉さんが怪我をされたというのは本当ですか?」
「…ああ」
前置き無しに彼女のことに触れてくる菖。彼女のことを心配しているわけではないのが、言葉の端々から感じられた。
「…明莉さんでは、やはり五家のお役目には力不足だったのではないのですか?」
「そんなことはないよ」
誰が、どういう意図で、悪意ある言葉をこの子に囁くのか―
「ですが、彼女は全くの役立たず、足手まといにさえなっているそうではないですか」
「…」
そして何故、この子は気づかないままなのか、そこに込められた悪意に。いや、気づいているのだろう。気づいていて、そのまま受け入れている。なんと醜悪な―
「にい様!もう、いいではありませんか。明莉さんにとって、これ以上お役目を続けることは不可能なのです!ご自身のためにも、彼女は五家と、にい様と縁を切るべき、」
「それは、彼女が決めることだよ」
助けに成りたいと言ってくれた言葉が嬉しかった。共に戦えることも。だけど、彼女が「もう無理だ」と言うなら、それはそれで構わない。ただ、彼女の決断を、選択を他の誰かが邪魔することだけは許せない。
「…秀にい様、私を選んで。私なら、にい様を、」
「何度も言っているよね?菖は僕にとって大切な妹だ。それ以上の気持ちを菖に抱くことはない」
「でも!それは、花守の家のことがあるから!」
何度言っても彼女が聞き入れない言葉を、繰り返す。
「関係ないよ、家のことは。これは、僕の気持ちの問題だから」
「そんな!だって!?」
「菖、僕の言葉をちゃんと考えて。僕は何度も同じことを言っている。言葉の意味をそのまま受け入れて欲しい。君の勝手な解釈や、周囲の声に惑わされずに」
「…あの、女のせいなのですか?あの女が!にい様のお心を惑わせて!私から秀にい様を!」
「…」
溢れそうになる溜め息を、何とか堪えた。どれだけ言葉を重ねても届かない徒労に、疲弊していく。
「…菖、彼女に何かしようとは考えないで。言ったよね?彼女に危害が加えられるようなことがあれば、僕は花守の家を出るよ」
例え、それがどんなに無責任なことであろうと。どんな手を使うことになろうと。
「なんで!?にい様!何であの女なの!?戦えるから!?力があるから!?私が!私に力があればにい様は私を!」
「…菖、関係無いんだ。彼女が力を持っていようと、いまいと。僕の気持ちは変わらないから」
彼女を、彼女の笑顔を守りたいというこの想いは―
「にい様!」
「もう行くよ。菖も、もっと周囲をよく見て。誰が本当に菖の味方なのか、ちゃんと見て、聞いて、考えるんだ」
大切な妹だった菖。君の未来に、僕はもう居られない。
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