異世界から帰ってきたら、大好きだった幼馴染みのことがそんなに好きではなくなっていた

リコピン

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第七章 わすれられない

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あの日から一週間、以来、彼女とは会えなくなってしまった。

あの日、彼女が帰りたいと言った「うち」が、大学近くのアパートではなく、彼女の実家だとわかり、「一緒に帰る」と言うチサさんと共に送った日から、彼女は自信の部屋に籠りっきりになってしまった。部屋の外から呼びかければ、辛うじて反応は返ってくるものの、その扉が開かれることはない。

何が原因だったのか、何が彼女を追い詰めたのかもわからない自分では、彼女の力にはなれないとわかってはいても―

それでも、じっとしていることが出来ずに、日に一度は彼女の元を訪ねてしまっている。許されるなら、ずっと側に居たいのに、せめて側で彼女の気配を感じて居たいのに―

門の向こうへ送り返した幽鬼に関して持ち上がった問題が、それさえ許してくれず、幽鬼に関する報告会の準備に終われていた。





呼び出された朱桃しゅとうの屋敷、報告相手の重鎮達は、皆一様に渋い顔を浮かべている。

「…それでは、件の幽鬼については完全に取り逃がした、消息も不明だということか?」

一通りの報告が終わり、口を開いた重鎮の一人の言葉に、隣に並んだ悠司が肩をすくめて答えた。

「『取り逃がした』というか、まあ、俺らじゃ倒せんので、被害を抑えるためには、あの場はああするしかなかったんですよ」

「幽界側へ逃げられたというのは間違いないのか」

「はい」

即答したが、彼らの顔に納得した様子はない。

「…しかし、俄には信じがたい。そう都合よく幽界の門が開くものなのか?」

「それについては、『非常に幸運だった』としか申し上げられません」

悠司と話し合い、チサさんが門を開いたことについては報告しないことに決めた。「門が出現したのは、あくまで偶発的なものだった」と報告には上げている。チサさん本人は「どうでもいい」と言っていたけれど、今は明莉ちゃんのことしか考えられないであろう彼女に、これ以上の負担はかけられない。

「…しかしなぁ」

「まあ、一旦その点は置いておきましょうよ。問題は、その法力の効かない幽鬼というのがまた現れる可能性があるのか、ということでしょう?」
 
本家筋、この報告会に置いても発言力のある重鎮の一人。その視線がこちらを向いた。

「…可能性は高いと考えています。
出現した門は即時閉じましたが、問題の幽鬼自体、一度はこちらへ顕現し、長期に渡って磨針まはりの研究施設に居たわけですから」

顕界けんかいとの親和性が高い、ということね?」

「はい。恐らく、こちらへ戻ってくるでしょう。その際の顕現場所については予測不能です」

「はぁ、厄介ねぇ。法力が効かないなんて」

場に、暫しの沈黙が落ちた。

「…『あの女』はどうなんだ?」

「…」

「前回の戦闘で負傷して使い物にならないと聞いたが、まだ治らんのか?」

男の言葉に込み上がる不快感を抑え込んだ。

「…療養中です」

「は!所詮は、ということか。五家の血も流れておらん余所者が、調子に乗るからだ」

彼女の、あの献身への、五家の評価が『コレ』か―

「…わかりました。そこまでおっしゃるのでしたら、以降、彼女への協力要請は行いません」

「な!?それは!?」

「我々は彼女の好意に甘えすぎていました。彼女との協力関係は解消します」

無為に彼女が傷つく必要など、なかったのだ。己の判断の甘さが、彼女を追い詰めた。その上、このような中傷まで許してしまうなんて。自分が情けなくて、笑えてくる。

「ま、待て!しかし!例の幽鬼には我々の力が通じないのだろう!?あの女の力ならばなんとかなりそうだと聞いている!ならば、」

「先ほどのお言葉」

「!?」

「ご自分がおっしゃった言葉の意味を、今一度お考えください。その上でまだ彼女の好意にすがれるとお考えですか?」

「っ!」

何を驚くことがあるのか。何故、彼女がただ犠牲になることを許せると思うのか。

「…報告は以上になりますので、本日は失礼させていただきます」

「ま、待て!」

呼び止める声は複数。撤回しようとしている言葉も聞こえるが、聞き入れるつもりはない。部屋を後にすれば、悠司が後に続いた。その表情がニヤけきっている。

「優等生のお前が、じいさん達相手にあそこまで言うとはなあ」

「彼女への侮辱は許されない」

「…お前、惚れてんなぁ」

呆れたような悠司の言葉、浮かんだ姿、彼女の笑顔に無性に会いたい。




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