虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven

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いつもと違う朝

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 あぁ、早く起きて姉様たちの朝自宅を手伝わなければ。早く、早く。

「あれ、ここどこだろう」

 起きてからしばらく経ってから私はここがいつもの家ではないということに気がついた。そっか、私あの家を出たんだ。

「もう、あの人たちのもとでこき使われなくて良くなったんだ」

 そう思ったら急に涙が出てきた。今までの恨みつらみが一気に出てきた感じがした。私が泣いていたら、部屋に精霊さんたちが入ってきてしまった。

「どうしたのですか!! セレス様!」
「いえ、なんでもないのです。昨日までと違った生活に少し…」

 侍女さんたちは、私の部屋から変な音が聞こえると思って急いで入ってくれてくれたみたいだ。誰かに心配されるなんていつぶりだろう。そう考えるとすごく心が温かくなった。こんな感覚あの家では到底感じることのできなかっただろう。

 私が泣き止んでからは目の腫れを抑えるために冷たいタオルを用意してくださった。

「ありがとうございます。こんなに」
「いえ、大丈夫でございます。あのセレス様、まだ起きる時間には少々お早いのですが、このままお眠りになられますか?」

 その言葉を聞いて驚いた。私はいつもこの時間に起きていたし、それが当然だと思っていた。だから、二度寝するなんてもってのほかしたことがない。

「いえ、すっかり目が覚めてしまったので、何か手伝うことはできませんか?」

 もうあの生活に慣れていたので、何もしない時間というのがとても落ち着かない。お茶を飲んでいるだけとか、お庭を探検するとかそんなことをしているのであれば掃除などをしていたい。そう思って、そう提案したのだが。

「いえ、セレス様に私共めの仕事を手伝わせるだなんて出来ません」

 そう断られてしまった。どうしよう。断られるだなんて思ってもみなかった。

「窓拭きとかだけでも良いので…」
「いえ、できません」
「なら、私は何をすれば良いのですか」

 その質問をすると、侍女さんたちは困ってしまった。どうやら、本当に私がやることがないようだ。どうしよう。何もすることがないことがこんなにもつらいとは思いもしなかった。

「でしたら、お庭の整備を手伝っていただけませんか」

 そう一人の精霊さんが私の前に出てきた。周りの精霊さんたちはすごくその人に対し驚いているようだった。

「セレス様のお気に召す花があればお贈りしたいので、ついてきてくださいませんか?」
「はい。喜んでお受けいたします」

 やった。仕事がもらえた。今すぐ行こう、そう思ったのだけど。

「あのすいません、着替えをもらえませんでしょうか。この服では汚してしましそうで。できれば、あなたたちが着ているような洋服を貸していただきたいのですが」

 そうだ、昨日まで来ていた汚れてもいい服は取り上げられてしまったのだ。だから、今着ているのは私が着るまでシワひとつなかった服なのだ。だからこそ、貰ってから一日で、汚すなんてできない。私がここにくる前に持ってきたバッグの中には母の形見とか必要最低限のものしか持ってきてない。あと、私に与えられていた服はファリルさんに剥がれてしまったものしかなかったし。

「それでは、ご用意させていただきます。朝食は先にお召し上がりになりますか?」
「迷惑でなければいただきたいです」

 申し訳ない、きっとまだ朝食の時間ではなかっただろうに。

「では、こちらにきてくださいますか?」

 私はそういう侍女さんの後をつけていくと、すごく広い食堂的なとこに連れてこられた。

「ここがこれからセレス様とラーレ陛下がお食事をお召し上がる場所でございます。」
「え、こんな広い部屋で2人だけですか?」
「はい、そうでございます」

 うわー。なんだか空間の無駄遣いって感じがする。

「セレス様はこちらへお座りください」

 そういって椅子をひいてくださった。なんだかお姫様扱いって感じがする。それが愛し子ってやつなのかな。

「セレスが今から食事をとるのは本当ですか?」

 少し乱雑に開けられた扉から放たれた声、その持ち主はただ一人しかいなかった。

「ラーレさん?どうしたのですか?」

 そう、ラーレさんだ。寝起きなのか少し寝癖がついている。

「いえ、少し取り乱しました。私の部屋に使用人が先ほど来まして、セレスがもう朝食を取るということでしたので、急いできたというだけです」

 そんな、私のせいで急がしてしまったということだろうか。申し訳ない。

「ごめんなさい、私のせいで」
「いえ、謝らないでください。私がセレスと一緒に朝食を取りたいという私のエゴですから。朝食ご一緒してもよろしいでしょうか」
「一緒にというのはいいのですが、何より、私はマナーやらなんやら全く分からなくてですね、お目汚しをしてしまうかもしれません」

 そんな急いで来てくれた人を、無下にすることなんてできない。でも、私は今までマナーなんて習ったことがなかったから、精霊王とあろうお方の前で披露できるものではない。それだけが引っかかっていたのだ。

「気にしないでください。少しづつ覚えていきましょうね」
「はい、ありがとうございます」

 心配事も消えたところで侍女さんたちが朝食を持ってきてくださった。とてもじゃないが食べ切れるほどの量ではなかった。

「あの、こんなに私食べきれないのですが……」
「いえ、食べ切る必要はありませんよ。今回は初回ですので、セレス様のお好きな食べ物を知るために豪華にご用意させていただいています。なので、心配なさらないで大丈夫です」

 そうは言っても、食べ物を残すこと自体すごく嫌だ。でも、せっかく私に作ってくださったものだから、大切に美味しくいただきたい。

「では、いただきます」

 朝食は、いろいろなパンと、それにつけて食べるものがあった。適当に二、三個食べてお腹がいっぱいになってしまった。本当に食べるのが下手くそな私とは対照的に、ラーレさんはパンのくず一つ落とさずに食べていた。自分のを食べながら少し見惚れてしまった。

「ごちそうさまでした。こんな柔らかいパンを食べたのは初めてでしたので美味しかったです」
「ありがとうございます。お気に召していただけたようで嬉しいです」

 食後に紅茶を出されたので、それを飲んでから手伝いに行こう。そう思ったのだが、ラーレさんに話しかけられてしまった。

「セレスはこの後何をする予定ですか?」
「少し侍女さんと一緒にお庭の手入れをする予定です」
「そうだったのですか。花はお好きですか?」
「よくわかりません。あまり花などじっとは見たことがないので。ですが、母が昔の昔見せてくださった青い花にすごく感動したのは覚えています。その花は母が持っていた一輪だけなのでそれ以降に全く見たことがなくて少し残念です」

 母が亡くなる前、本当に私が小さな頃、母は特別にと私にだけその花を見せてくれた。一輪だけだったがその一輪だけでも上品さや気品さ、堂々とした凛々しさを感じた。その後私はその花をもらい母といっしょに押し花にしたのだ。

「そうでしたか。人間界の花ですとこちらの世界では見つけることができないので残念です」
「では、お先に失礼しますね」
「はい、では頑張ってきてください」

 話がちょうどいいところで終わったのでもう私は手伝いに行くことにした。花か。人間界の花はこっちにないって言ってたけどそもそも私、人間界の花もよく知らないし。でも、花は綺麗だし見て飽きないよなぁ。そんなことを考えながら私は外に出た。


 


 
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