11 / 17
歓迎パーティと緊急事態
しおりを挟む「緊張、していますか?」
初めて街に出てからすぐに1ヶ月がたった。その間、本当に色々な準備があった。オーダーメイドしたドレスを何度も試着したり、マナーの練習をしたり、ダンスの練習だってした。1ヶ月で全て仕上げられるのか心配だったけれど血の滲む努力のおかげか、講師の方に及第点が出るまでは上達した。本当に大変だった。
そして今、お揃いのデザインを着て私たちは大広間の扉の前にいる。そう今から入場をするのだ。心臓が飛び出るほど緊張している。手汗もだくだくだ。
「はい、とても」
「では一度、私に向き合って両手を出していただけますか?」
私は言われた通り、ラーレさんの方を向き両手を乗せた。するといきなり手が光り、体が暖かくなったのを感じた。
「これは?」
「軽く私の魔法をかけました。どうでしょう、先ほどより緊張は落ち着きましたか?」
完全に緊張がなくなったとは言えないけれど、さっきよりかは楽になった。
「ありがとうございます、魔法って本当に不思議ですね」
私は大きく息を吸った。
「ラーレさん、行きましょう」
「はい、セレス」
私たちの準備が終わったことを悟った門番の方は、トランペットを鳴らし、私たちの入場を宣言した。
「精霊王ラーレ、愛し子セレス様の入場です」
扉がゆっくりと開き広間の様子が光と共に見えてくる。
「さぁ、お手を」
扉が開き切ったのを確認して、ラーレさんは私に手を出した。私はその手の上に私の手を乗せる。呼吸を揃えてまっすぐ前を見据え、背筋を伸ばして歩き始めた。
精霊たちがいっぱいいる。そして、その全てが私たちのことを見ている。とても緊張してしまう。でも、ラーレさんが隣にいるから大丈夫。
「皆、今日はよく来てくれた。隣にいるのが我が長らく探し続けてきた愛し子、セレスだ」
私の紹介をラーレさんがしてくれた。ラーレさんが私の番だという視線を向けてくる。もう一度深呼吸をして一歩前に進んだ。
「皆さん初めまして。私は根っからの人間です。ですが、ラーレさんには返しきれないほどの恩をいただきました。その恩を少しづつでも返していくため、この精霊界で頑張って行くので見守っていてください。これから、よろしくお願いいたします」
最後に軽く礼をする。腰を折ってはいけないから軽く頭を下げる程度だけれど。頭をあげると皆が皆幸せそうな表情で、私に大きな拍手をしてくれた。それがとても嬉しくかった。
「我は今ここに宣言する! セレスを次期王妃にすることを!」
はい。それは以前から聞いていたし、王の愛し子であるということは次期王妃であると同等であることも知っていた。だからこそのあの挨拶だった。私がこれから王妃として歩む道を見ていてほしい、そう意味を込めて言った。
「今日は楽しいパーティだ!皆が忘れられないような日になることを願っている!」
そう言って私たちの挨拶は締められた。
「………………これで、ひと段落ですか?」
「はい、挨拶したいという方はまだまだいるのですが一度ここで休憩いたしましょう」
全体への挨拶が終わった後、個人への挨拶会が始まった。国の宰相に近衛騎士の団長、公爵家の方々などなど。とりあえずいっぱいいた。とてもじゃないが一人一人の名前なんか覚えられるわけがなかった。これでまだまだ後がいるなんて考えられない。隣を見るにラーレさんもかなり疲れているようだった。使用人から渡された飲み物を飲もうとすると、先に口をつけていたラーレさんが私の腕を叩いた。
「――――!セレス、飲むなッ!ど、く、だ…」
バタンッ!
ラーレさんが含んだ飲み物を少し吐き出しながら、椅子から雪崩れ込み倒れたのが見えた。見えたのは分かったけれど、それを頭が認識するのは、叩かれた腕が熱を持ち始めてからだった。
「――――ラーレさん!!!だ、誰か!!早く!!」
私の声を聞いて周りの人が事態に気づく。
どく、どく、毒。何をしたらいいんだっけ。確か毒を飲んだ時の対処法あったはずなのに。思い出せない。ここで思い出せなかったら学んだ意味ないのに。
「陛下今部屋にお連れいたします!!セレス様も一度部屋に!!」
そうだ。こういう時、民に対してしなければいけないことがあったはず。
「皆さん!!本日のことについて箝口令をしきます!!!一言たりとも外に漏らすことは許しません!!万が一そのようなことがあった場合、王族侮辱行為とみなし罰を与えます!!」
これで大丈夫なはず。それよりもラーレさんの元へ行かなければ。
32
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された侯爵令嬢ですが、帝国の次席秘書官になりました ――王の隣ではなく、判断を誤らせない場所へ
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として王宮に仕える侯爵令嬢ゼクレテァ。
彼女は華やかな場に立つことはなく、ただ静かに、しかし確実に政務と外交を支えていた。
――その役割が、突然奪われるまでは。
公の場で告げられた一方的な婚約破棄。
理由はただひとつ、「愛している相手がいるから」。
ゼクレテァは感情を見せることなく、その決定を受け入れる。
だが彼女が王宮を去った後、王国には小さな歪みが生じ始めた。
些細な行き違い、遅れる判断、噛み合わない政策。
それらはやがて、国家全体を揺るがす事態へと発展していく。
一方、行き場を失ったゼクレテァの前に、思いもよらぬ「選択肢」が差し出される。
求められたのは、身分でも立場でもない。
彼女自身の能力だった。
婚約破棄から始まる、
静かで冷静な逆転劇。
王の隣に立つことを拒んだ令嬢は、
やがて「世界を動かす場所」へと歩み出す――。
-
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす
三谷朱花
恋愛
ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。
ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。
伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。
そして、告げられた両親の死の真相。
家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。
絶望しかなかった。
涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。
雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。
そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。
ルーナは死を待つしか他になかった。
途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。
そして、ルーナがその温もりを感じた日。
ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。
旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。
海咲雪
恋愛
結婚式当日、私レシール・リディーアとその夫となるセルト・クルーシアは初めて顔を合わせた。
「君を愛する気はない」
そう旦那様に言い放たれても涙もこぼれなければ、悲しくもなかった。
だからハッキリと私は述べた。たった一文を。
「逃げるのですね?」
誰がどう見ても不敬だが、今は夫と二人きり。
「レシールと向き合って私に何の得がある?」
「可愛い妻がなびくかもしれませんわよ?」
「レシール・リディーア、覚悟していろ」
それは甘い溺愛生活の始まりの言葉。
[登場人物]
レシール・リディーア・・・リディーア公爵家長女。
×
セルト・クルーシア・・・クルーシア公爵家長男。
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
【完結】婚約破棄されたユニコーンの乙女は、神殿に向かいます。
秋月一花
恋愛
「イザベラ。君との婚約破棄を、ここに宣言する!」
「かしこまりました。わたくしは神殿へ向かいます」
「……え?」
あっさりと婚約破棄を認めたわたくしに、ディラン殿下は目を瞬かせた。
「ほ、本当に良いのか? 王妃になりたくないのか?」
「……何か誤解なさっているようですが……。ディラン殿下が王太子なのは、わたくしがユニコーンの乙女だからですわ」
そう言い残して、その場から去った。呆然とした表情を浮かべていたディラン殿下を見て、本当に気付いてなかったのかと呆れたけれど――……。おめでとうございます、ディラン殿下。あなたは明日から王太子ではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる