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安堵
しおりを挟む私たちを包む光が消え去った後、しばらくしてから、握っている手がかすかに動くのを感じた。それを感じた直後信じられないことが起こった。
「せ、れす?」
もう聞くことができるはずがないと思った声、とても愛おしい人の声。私はゆっくりと顔を向けた。
「らーれさん?」
「泣いているのですか?泣かないでください、私あなたが泣くととても苦しいのです」
そう言って、ラーレさんは私の涙を手で拭った。お医者様でもお手上げだった毒にやられていた人がもう一度動き始めた。一度冷たくなり始めた手が動いているのが信じられなくて、それが温かみを取り戻し始めてるのが嬉しくてまた私の頬を涙がつたった。
「あぁ、泣かないで?」
そう目の前の愛おしい人は、困ったように笑う。
「らーれさん」
「はい」
そう呼びかけていつも通り、返ってくる声がとても愛おしくて嬉しくてまた涙が出た。
「らーれさんらーれさんらーれさん!」
私はそのことを必死に確かめるように何度もその人の名前を呼んだ。その度に返事が聞こえて何度も何度もこれが現実であると思わせてくれた。
「いきてるいきてるいきてるぅぅ」
私はそう言って寝ているラーレさんに覆い被さる形で抱きしめた。さっきまで冷たくなっていた体が暖かくなっていて、手がおかしくなってしまっているのではないかと思ったけれど、抱きしめ返してくれるその腕がおかしくはないということを示していた。
「本当にほんとうに、しんでしまうかとおもいました」
「えぇえぇ、ごめんなさい」
私が叫んでラーレさんを責める。けど、ラーレさんはとても笑顔で謝る。本当に反省しているのかと思ったけれど疑うのはまた後でいい。
今はただ、この体温を、ただただ確かめていたい。
この人がここにいるということを私の身に沁みつけておきたい。
「セレス様、陛下のご様子は」
そのままセレスが寝てしまった後、ラーレの様子を見るため医者が部屋に来た。言葉の途中で止まってしまったのは目の前にラーレが起き上がっているのを見たせいだろう。
「陛下!!ごぶ――――――」
「陛下ご無事であったのですね」その言葉を全て言い切る前に医者は言葉を止めた。なぜならば、ラーレが、しゃべるなとジャスチャーをしたからであった。ラーレが愛おしそうに向ける目線の先を見ればすやすやと気持ちよさそうに眠るセレスの姿があった。
「私が起きてからたくさん泣いていて、私のことを抱きしめたと思ったらそのまま寝息を立てて寝てしまいました」
「そう、でしたか。とても愛らしいすがたですね」
そう医者が思ったことをそのまま言うと、ラーレが殺気を出しながら微笑んだ。
「この子は私だけの愛し子ですからね」
「――!わかっております」
医者はその殺気に畏怖した。早く殺気をおさえてほしいと切実に願った。
「うぅん。ら、ーれさん」
その寝言を聞いたラーレは元の優しい表情へ戻った。医者は非常に安堵し、「朝になってまた伺います」といって部屋を去ったのだった。
「きっと、あなたが私を救ってくれたのですよね。ありがとう、セレス」
医者が部屋を去ってからしばらくの間王はその愛し子を見つめ続けていた。
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