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2章 村での生活
10話 とある冒険者達の遭遇 ①
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リョウがカイエンナッツの根本で目を覚ます少し前、青い髪のプレイヤーが森に入り込んでいた。
このプレイヤーは、以前森の入り口付近を探索していて、森から飛び出してきた猪に追いかけ回されたことがあった。
戦うのが面倒で逃げてばかりいたので、未だに基礎レベルは二。
チュートリアルが終わった時のままだった。
戦いを嫌がる一方で、拾い物や採取をするのは非常に楽しみにしていた。
なので、いいものが拾えそうな森まで、懲りることなく再びやってきた。
しかし、逃げ隠れに徹しているだけではろくに素材も手に入らない。
そこで思い付いたのが、傭兵を雇うことだった。
たまたま森の入り口付近をうろついていた時、フードを被ったプレイヤーが、樹の上から弓でモンスターを狙撃している姿を見かけて、ピンと来たらしい。
そうか! 戦うのが面倒なら、依頼して代わりに戦ってもらえばいいんだ!
……などと言う独自の解釈で。
見かけたプレイヤーの戦闘が終わると、早速声をかけた。
「おーい、今暇?」
「……そりゃ、戦闘終わったから手は空いてるけど……あんた誰……?」
「謎の冒険者だ!」
樹の上にいたプレイヤーは思った。
これは、関わると面倒そうだな……と。
「そうですか。じゃ、俺はこれで──」
「まあまあ! ボクはジアス! 謎の冒険者だ!」
樹の上から降りたプレイヤーはその場を離れようとしたが、名乗られてしまったので逃げ損なってしまう。
「はぁ……俺はフロンド。で? 謎の冒険者さんは、なんのご用で?」
「ちょっとボクに雇われてみない?」
「お断りします。それじゃ」
食い気味に断ると、フロンドは森の奥に行こうとしたが、そこにジアスが回り込んだ。
「勿論ただでなんて言わないぞ! 報酬として、この中から好きなものを進呈しよう! ジャジャーン!!」
そう言って、ジアスが自分で発した効果音と共に取り出したのは、拾い物のアイテム達。
町で拾ったものから、森の入り口付近で拾ったものまで多種多様……と言うほどのことはなく、五種類だったが。
「おおっ……って、その辺に落ちてるもんばっかりじゃん…………んっ!? こ、これは!?」
「お目が高いね! これはついさっき土の中から発見した素材さ!」
「土の中……? えっと、詳細を見てもいい?」
「いいとも!」
フロンドは土の中と聞いて微妙な顔をしたが、念のために許可をとってからタップして説明文を表示してみた。
『フォレストスパイダーの毒袋
フォレストスパイダーの毒を溜め込んでいる器官。
牙に含まれている毒は、毒腺を経由して毒袋から送り込まれている』
間違いない。弓を強化するのに必要なレア素材だ。だが……
(森蜘蛛自体全然見付からなかったから、素材は欲しい……でも、この人なんかヤバそうなんだよな……)
フロンドは基本的にソロプレイヤー。
コミュ障だからと言うのもあるが、揉め事に巻き込まれるのが嫌だったからこそのソロプレイ。
このジアスと言うプレイヤーは、なんとなく厄介事を運んできそうな気がする……
うん、素材は惜しいが断わろ──
「そうそう、倒したモンスターの素材は全部そちらに譲るよ! それに、今OKしてくれるならなんと! これもつけちゃうぞ!」
そう言ってジアスが取り出したのは、見た目的に中級のポーションだ。
手持ちのポーションを使い果たしていたフロンドには、非常に魅力的な提案だった。
「……雇用期間はどれくらいで?」
やっといい返事がもらえそうなので、ジアスはニヤリと笑って答えた。
「この森に入って一時間くらい採取して、それから町に戻るまで! ……でどうかな?」
「それくらいならいいか……分かった。引き受けるよ」
「わーい、やったー!」
子供っぽく喜ぶジアスを見て、そこはかとなく不安になるフロンド。
(見た目は中年? くらいの人なのにこの子供っぽい態度……これは、早まったかな……)
「では、すぐ出発しよう! 時間が勿体ないし!」
「……了解」
ジアスは大喜びで、フロンドは一抹の不安を抱えながら森に踏み込むのだった。
森に入ったジアス達は、フロンドが索敵→安全ならジアスが採取で、敵がいればフロンドが討伐→進む方向をジアスが伝える。
この繰り返しで、どんどん森の奥へ進んでいた。
フロンドは索敵と戦闘スキルが上がり、モンスターのドロップ品が手に入る。
ジアスは、土に埋まりかけた物や茂みに隠れた物などをめざとく見つけては採取。
お互いにとってかなり有益な探索となっていた。
だが、全くデメリットが無いわけではなかった。
ジアスが進みたい方向に、モンスターが複数いることもあり、基本的に単体の敵ばかりと戦ってきたフロンドには荷が重いこともあった。
フロンドとしては避けて通りたかったのだが、そちらにいいものがありそうだからとジアスが譲らなかったのだ……
流石に森狼の群れを一人では厳しかったので、ジアスにフォローをお願いしたが……
当たりもしない投げナイフを、「とりゃー」とか「おりゃー」などと気合いの抜ける声で投げるという支援に、返って神経をすり減らす羽目になってしまった。
(どこ投げてんだ……って、危なっ! 当たるかと思ったぞ……余計なことを頼まなきゃよかった……)
しかし、フロンドが気付いていなかっただけで、ジアスは投げナイフを罠として使って、モンスターの足止めに成功していた。
(ふむ……やはり目の前にいきなり物が飛んでくると怯むな。ナイフでも木の実でも木の枝でも同じ反応と言うことは、脅威度で回避してるんじゃなくて条件反射か)
ジアスは戦闘は好きではない。だが、検証することは好きなため、冷静に森狼の挙動を調べていた。
以前猪に追われていた時は余裕がなかったために逃げ回るしかなかったが、今はヘイトをフロンドが稼いでくれる。
なので、安心して検証することができた。
(正面から飛んでくるものは余裕をもって避けるか。視界の外からいきなり近くに物が来る時のみ、怯む……か。体は毛があるから、軽い衝撃だと反応は無し……)
その後もジアスは検証を続け、調査が一段落したため、苦戦しているフロンドのフォローに入ることにした。
このプレイヤーは、以前森の入り口付近を探索していて、森から飛び出してきた猪に追いかけ回されたことがあった。
戦うのが面倒で逃げてばかりいたので、未だに基礎レベルは二。
チュートリアルが終わった時のままだった。
戦いを嫌がる一方で、拾い物や採取をするのは非常に楽しみにしていた。
なので、いいものが拾えそうな森まで、懲りることなく再びやってきた。
しかし、逃げ隠れに徹しているだけではろくに素材も手に入らない。
そこで思い付いたのが、傭兵を雇うことだった。
たまたま森の入り口付近をうろついていた時、フードを被ったプレイヤーが、樹の上から弓でモンスターを狙撃している姿を見かけて、ピンと来たらしい。
そうか! 戦うのが面倒なら、依頼して代わりに戦ってもらえばいいんだ!
……などと言う独自の解釈で。
見かけたプレイヤーの戦闘が終わると、早速声をかけた。
「おーい、今暇?」
「……そりゃ、戦闘終わったから手は空いてるけど……あんた誰……?」
「謎の冒険者だ!」
樹の上にいたプレイヤーは思った。
これは、関わると面倒そうだな……と。
「そうですか。じゃ、俺はこれで──」
「まあまあ! ボクはジアス! 謎の冒険者だ!」
樹の上から降りたプレイヤーはその場を離れようとしたが、名乗られてしまったので逃げ損なってしまう。
「はぁ……俺はフロンド。で? 謎の冒険者さんは、なんのご用で?」
「ちょっとボクに雇われてみない?」
「お断りします。それじゃ」
食い気味に断ると、フロンドは森の奥に行こうとしたが、そこにジアスが回り込んだ。
「勿論ただでなんて言わないぞ! 報酬として、この中から好きなものを進呈しよう! ジャジャーン!!」
そう言って、ジアスが自分で発した効果音と共に取り出したのは、拾い物のアイテム達。
町で拾ったものから、森の入り口付近で拾ったものまで多種多様……と言うほどのことはなく、五種類だったが。
「おおっ……って、その辺に落ちてるもんばっかりじゃん…………んっ!? こ、これは!?」
「お目が高いね! これはついさっき土の中から発見した素材さ!」
「土の中……? えっと、詳細を見てもいい?」
「いいとも!」
フロンドは土の中と聞いて微妙な顔をしたが、念のために許可をとってからタップして説明文を表示してみた。
『フォレストスパイダーの毒袋
フォレストスパイダーの毒を溜め込んでいる器官。
牙に含まれている毒は、毒腺を経由して毒袋から送り込まれている』
間違いない。弓を強化するのに必要なレア素材だ。だが……
(森蜘蛛自体全然見付からなかったから、素材は欲しい……でも、この人なんかヤバそうなんだよな……)
フロンドは基本的にソロプレイヤー。
コミュ障だからと言うのもあるが、揉め事に巻き込まれるのが嫌だったからこそのソロプレイ。
このジアスと言うプレイヤーは、なんとなく厄介事を運んできそうな気がする……
うん、素材は惜しいが断わろ──
「そうそう、倒したモンスターの素材は全部そちらに譲るよ! それに、今OKしてくれるならなんと! これもつけちゃうぞ!」
そう言ってジアスが取り出したのは、見た目的に中級のポーションだ。
手持ちのポーションを使い果たしていたフロンドには、非常に魅力的な提案だった。
「……雇用期間はどれくらいで?」
やっといい返事がもらえそうなので、ジアスはニヤリと笑って答えた。
「この森に入って一時間くらい採取して、それから町に戻るまで! ……でどうかな?」
「それくらいならいいか……分かった。引き受けるよ」
「わーい、やったー!」
子供っぽく喜ぶジアスを見て、そこはかとなく不安になるフロンド。
(見た目は中年? くらいの人なのにこの子供っぽい態度……これは、早まったかな……)
「では、すぐ出発しよう! 時間が勿体ないし!」
「……了解」
ジアスは大喜びで、フロンドは一抹の不安を抱えながら森に踏み込むのだった。
森に入ったジアス達は、フロンドが索敵→安全ならジアスが採取で、敵がいればフロンドが討伐→進む方向をジアスが伝える。
この繰り返しで、どんどん森の奥へ進んでいた。
フロンドは索敵と戦闘スキルが上がり、モンスターのドロップ品が手に入る。
ジアスは、土に埋まりかけた物や茂みに隠れた物などをめざとく見つけては採取。
お互いにとってかなり有益な探索となっていた。
だが、全くデメリットが無いわけではなかった。
ジアスが進みたい方向に、モンスターが複数いることもあり、基本的に単体の敵ばかりと戦ってきたフロンドには荷が重いこともあった。
フロンドとしては避けて通りたかったのだが、そちらにいいものがありそうだからとジアスが譲らなかったのだ……
流石に森狼の群れを一人では厳しかったので、ジアスにフォローをお願いしたが……
当たりもしない投げナイフを、「とりゃー」とか「おりゃー」などと気合いの抜ける声で投げるという支援に、返って神経をすり減らす羽目になってしまった。
(どこ投げてんだ……って、危なっ! 当たるかと思ったぞ……余計なことを頼まなきゃよかった……)
しかし、フロンドが気付いていなかっただけで、ジアスは投げナイフを罠として使って、モンスターの足止めに成功していた。
(ふむ……やはり目の前にいきなり物が飛んでくると怯むな。ナイフでも木の実でも木の枝でも同じ反応と言うことは、脅威度で回避してるんじゃなくて条件反射か)
ジアスは戦闘は好きではない。だが、検証することは好きなため、冷静に森狼の挙動を調べていた。
以前猪に追われていた時は余裕がなかったために逃げ回るしかなかったが、今はヘイトをフロンドが稼いでくれる。
なので、安心して検証することができた。
(正面から飛んでくるものは余裕をもって避けるか。視界の外からいきなり近くに物が来る時のみ、怯む……か。体は毛があるから、軽い衝撃だと反応は無し……)
その後もジアスは検証を続け、調査が一段落したため、苦戦しているフロンドのフォローに入ることにした。
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