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2章 村での生活
9話 カイエンナッツの樹上にて
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地面がかなり下に見える……
どうやら、二階建ての家の屋根より高いくらいまで急成長したみたいだ。
急成長したカイエンナッツの枝に引っ掛けられてしまい、慌てて太めの幹に捕まったらここまで持ち上げられてしまったが…………
……俺は、どうやって降りたらいいんだろう……?
半ば呆然としながらも、降りるための方法を考えようとしていると、同じ高さまでブレンが飛んできた。
《リョウさん! ご無事でしたか!》
「うん、まあ……ね。この状態が、無事と言えるのか微妙だけど……」
実際、落ちたらHPが吹き飛ぶのは間違いないだろう。
幹を掴んで滑り降りるにしても、幹は太くまっすぐに育っている……
恐らく、まともに掴めずに滑り落ちるだろうな。
枝を伝って降りようにも、枝葉が繁っているのは俺がいるかなり上の方だけだ。
周りにそこそこ大きな樹があるせいか、その辺りには枝が一切見当たらない。
……つまり、枝を伝って降りても途中から飛び降りなければならない……
それでも高さは二階の部屋のベランダより高そうだから、恐らくHPは吹っ飛ぶだろう。
俺が腕をブレンの方に差し出すと、ブレンは腕を伝って肩まで──いつもの所まで登ってきた。
「なあブレン、どうやったら無事に降りられると思う?」
《そうですね……では、槍を使──》
「カイエンナッツに傷をつけない方向で」
《…………》
下を向いて黙り込んでしまったブレンを見て、ちょっと意地悪な言い方だったかな……と反省する。
でも、折角ここまで育った樹を傷付ける選択肢は俺にはない。
しかしそれは俺の都合な訳で、ブレンはちゃんと考えてくれたのだから……
うん、やはり謝ろう。
俺は、肩に止まっているブレンの頭を軽く撫でながら謝ることにした。
「ごめん、嫌な言い方しちゃったよな……」
《……いえ、無事に降りることだけを考えてしまい、リョウさんが植物を大事にする人だということを失念していました……こちらこそごめんなさい……》
《あの~……》
「いやいや、ブレンは質問に答えただけじゃないか。謝るのはこっちだよ」
《あの……》
《いいえ、ナビゲーターとして──》
俺もブレンも引くに引けず、お互いに謝りあっていると──
《……こほん! 仲がいいのは分かりますが、その辺りにしてくださいませんか?》
いきなり聞こえた声に驚き、肩に向けていた視線を正面に戻すと、目の前にはしかめっ面のドリアドネさんが……
「うわぁっ!?」
驚いて思わず後ろにのけぞったので、幹から手を離しかけて落ちそうになり、必死にしがみついた。
い、今のは危なかった……
「ドリアドネさん、脅かさないでくださいよ……危うく、落ちるところだったじゃないですか……」
《……っ! 何度も声をお掛けしましたわ! ブレンさんの少し後に来ましたのに……なぜ私には気付きませんの……》
少し怒った様子のドリアドネさんの目には、涙が滲んでいた。
参ったな、全然気付かなかった……
《そういえば……リョウさんと話をしているときに何か聞こえていたような……?》
マジですか……
「……ドリアドネさん、ごめんなさい……」
《はぁ……もういいですわ。それより、周りをよく見てくださいませ》
ドリアドネさんに言われて周囲をよくよく見れば、あちらこちらにカイエンナッツの蕾があった。
一部の蕾は既に開き始めているように見える。
滅多に見れない花だし、こんな場所でなければもっとじっくり見たかったなぁ……
「お、一部の蕾が開き始めてますね!」
《カイエンナッツのお花は、花火みたいです!》
カイエンナッツの蕾は遠目に見たら枝にしか見えないだろう。
でも、咲き始めると花火のように綺麗なんだよな。
……でも、開花から結実まで一ヶ月以上はかかるはず。
少し時間を空けて、種類の違う成育を促進するものか、実の成育を促すものを作る必要があるな……
《それもこんなにたくさん……里でも、こんなに花がついているのは見たことありませんわ》
ドリアドネさんの表情を見るに、心の底から喜んでるのが分かる。
しかし……ドリアドネさん達の里の、例の枯れてしまったカイエンナッツ……
花があまりつかなかったと言うことは、老齢でかなり弱っていたか、肥料要素が足りなかったのか。
もしくは──害虫の仕業か。
考え込んでいてつい力が緩んでしまったのか、掴んでいた幹から少しずり落ちる。
慌てて掴み直すが、握力がもうあまりなさそうだ……
《リョウさん、一度地面に降りませんこと? 大分お辛そうですわ》
「そうしたいんだけど……降りる方法が……思い付かないんだよね……」
《私が抱えて降りればよろしいですわ!》
言われて初めてドリアドネさんの足元を見ると、地面まで根が伸びているのが見えた。
いや、むしろ地面から根を伸ばしてここまで来てくれたのか……?
確かに、ドリアドネさんに抱えてもらえたら安全に降りれるかもしれない……が。
「それはちょっと……ほら、いい年の大人が抱えられるなんて恥ずかしいと言うか……」
俺がぼそぼそと呟くと、ブレンは呆れたような仕草をしながらため息をついた。
そしてドリアドネさんの方へ頭を向けると、なにやら念話をしているように見える。
などとよそ見をしていたせいか、ドリアドネさんの方から根が伸びてきているのに気付くのが遅れた。
俺が気付いた時には、ドリアドネさんから伸びた根が俺の足に触れる直前だった。
「ドリアドネさん? この根は──」
伸びてきた根について聞こうとしたが、根が俺に触れた途端に視界が真っ暗になった……
……風が頬を撫でていく感触と、木々のざわめき、それと……グワーというアヒルの声……?
爽やかな風で意識が覚醒した俺が目を開けると、俺はいつの間にかカイエンナッツを背もたれにして地面に座っていた。
どうやら、二階建ての家の屋根より高いくらいまで急成長したみたいだ。
急成長したカイエンナッツの枝に引っ掛けられてしまい、慌てて太めの幹に捕まったらここまで持ち上げられてしまったが…………
……俺は、どうやって降りたらいいんだろう……?
半ば呆然としながらも、降りるための方法を考えようとしていると、同じ高さまでブレンが飛んできた。
《リョウさん! ご無事でしたか!》
「うん、まあ……ね。この状態が、無事と言えるのか微妙だけど……」
実際、落ちたらHPが吹き飛ぶのは間違いないだろう。
幹を掴んで滑り降りるにしても、幹は太くまっすぐに育っている……
恐らく、まともに掴めずに滑り落ちるだろうな。
枝を伝って降りようにも、枝葉が繁っているのは俺がいるかなり上の方だけだ。
周りにそこそこ大きな樹があるせいか、その辺りには枝が一切見当たらない。
……つまり、枝を伝って降りても途中から飛び降りなければならない……
それでも高さは二階の部屋のベランダより高そうだから、恐らくHPは吹っ飛ぶだろう。
俺が腕をブレンの方に差し出すと、ブレンは腕を伝って肩まで──いつもの所まで登ってきた。
「なあブレン、どうやったら無事に降りられると思う?」
《そうですね……では、槍を使──》
「カイエンナッツに傷をつけない方向で」
《…………》
下を向いて黙り込んでしまったブレンを見て、ちょっと意地悪な言い方だったかな……と反省する。
でも、折角ここまで育った樹を傷付ける選択肢は俺にはない。
しかしそれは俺の都合な訳で、ブレンはちゃんと考えてくれたのだから……
うん、やはり謝ろう。
俺は、肩に止まっているブレンの頭を軽く撫でながら謝ることにした。
「ごめん、嫌な言い方しちゃったよな……」
《……いえ、無事に降りることだけを考えてしまい、リョウさんが植物を大事にする人だということを失念していました……こちらこそごめんなさい……》
《あの~……》
「いやいや、ブレンは質問に答えただけじゃないか。謝るのはこっちだよ」
《あの……》
《いいえ、ナビゲーターとして──》
俺もブレンも引くに引けず、お互いに謝りあっていると──
《……こほん! 仲がいいのは分かりますが、その辺りにしてくださいませんか?》
いきなり聞こえた声に驚き、肩に向けていた視線を正面に戻すと、目の前にはしかめっ面のドリアドネさんが……
「うわぁっ!?」
驚いて思わず後ろにのけぞったので、幹から手を離しかけて落ちそうになり、必死にしがみついた。
い、今のは危なかった……
「ドリアドネさん、脅かさないでくださいよ……危うく、落ちるところだったじゃないですか……」
《……っ! 何度も声をお掛けしましたわ! ブレンさんの少し後に来ましたのに……なぜ私には気付きませんの……》
少し怒った様子のドリアドネさんの目には、涙が滲んでいた。
参ったな、全然気付かなかった……
《そういえば……リョウさんと話をしているときに何か聞こえていたような……?》
マジですか……
「……ドリアドネさん、ごめんなさい……」
《はぁ……もういいですわ。それより、周りをよく見てくださいませ》
ドリアドネさんに言われて周囲をよくよく見れば、あちらこちらにカイエンナッツの蕾があった。
一部の蕾は既に開き始めているように見える。
滅多に見れない花だし、こんな場所でなければもっとじっくり見たかったなぁ……
「お、一部の蕾が開き始めてますね!」
《カイエンナッツのお花は、花火みたいです!》
カイエンナッツの蕾は遠目に見たら枝にしか見えないだろう。
でも、咲き始めると花火のように綺麗なんだよな。
……でも、開花から結実まで一ヶ月以上はかかるはず。
少し時間を空けて、種類の違う成育を促進するものか、実の成育を促すものを作る必要があるな……
《それもこんなにたくさん……里でも、こんなに花がついているのは見たことありませんわ》
ドリアドネさんの表情を見るに、心の底から喜んでるのが分かる。
しかし……ドリアドネさん達の里の、例の枯れてしまったカイエンナッツ……
花があまりつかなかったと言うことは、老齢でかなり弱っていたか、肥料要素が足りなかったのか。
もしくは──害虫の仕業か。
考え込んでいてつい力が緩んでしまったのか、掴んでいた幹から少しずり落ちる。
慌てて掴み直すが、握力がもうあまりなさそうだ……
《リョウさん、一度地面に降りませんこと? 大分お辛そうですわ》
「そうしたいんだけど……降りる方法が……思い付かないんだよね……」
《私が抱えて降りればよろしいですわ!》
言われて初めてドリアドネさんの足元を見ると、地面まで根が伸びているのが見えた。
いや、むしろ地面から根を伸ばしてここまで来てくれたのか……?
確かに、ドリアドネさんに抱えてもらえたら安全に降りれるかもしれない……が。
「それはちょっと……ほら、いい年の大人が抱えられるなんて恥ずかしいと言うか……」
俺がぼそぼそと呟くと、ブレンは呆れたような仕草をしながらため息をついた。
そしてドリアドネさんの方へ頭を向けると、なにやら念話をしているように見える。
などとよそ見をしていたせいか、ドリアドネさんの方から根が伸びてきているのに気付くのが遅れた。
俺が気付いた時には、ドリアドネさんから伸びた根が俺の足に触れる直前だった。
「ドリアドネさん? この根は──」
伸びてきた根について聞こうとしたが、根が俺に触れた途端に視界が真っ暗になった……
……風が頬を撫でていく感触と、木々のざわめき、それと……グワーというアヒルの声……?
爽やかな風で意識が覚醒した俺が目を開けると、俺はいつの間にかカイエンナッツを背もたれにして地面に座っていた。
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