Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

白狐の行方

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「さて、宴会までは時間もある。そろそろアイネに関する情報を教えてやろう。」

先程まで緩んでいた空気が引き締まるのを感じる。いつになく真剣な表情のナディアの影響だろう。

「その前に、白狐の一族に関しては?」
「オレはある程度ナディアから聞いてます。」
「そうか・・・ならば最初から話してやろう。少し長くなるか。お前達は飲み食いしながら聞いてくれ。ガウスよ、ついでにオレの分も頼む。」
「わかりました。すぐに用意させましょう。ですが、あくまで軽くですからね?」

ガウスさんの言葉だけ聞くと、忠実な臣下と判断出来る。しかし、眉間に皺を寄せた表情からは『軽くだぞ?本当にわかってるんだろうな?』と言っているように感じられた。

「さてと、まずは白狐の国に関してだ。今から50年以上前になるか・・・。ここから北東に向かった所に、ラウラという小さな国があったんだ。そこは白狐の獣人達が治める国でな。この国とも親交のある、本当にいい国だったんだ。」

しかし当時から、アームルグ獣王国には荒くれ者達の住む地域があった。黒狼と呼ばれる獣人達である。狼の獣人の中でも大きな体格で、身体能力も高かった。獰猛で好戦的な性格であり、他の獣人達が迂闊に手出し出来なかった為か、年々その勢力を増していった。

そしてある時突然、宣戦布告を行ったのである。その標的となった国がラウラ。報せを聞いた獣王が兵を差し向ける間も無く、あっという間に攻め滅ぼされたのである。兎に角対処に向かった獣王達が目にしたのは、国民全員の無残な姿であった。

その後、怒りに燃えた獣王の軍勢が黒狼の一族を退けるのだが、自分達の被害も大きく、その多くを逃してしまう。これが今も続く、獣王国における内乱の始まりであった。その後数十年に渡って一進一退の攻防を繰り広げてきた戦も、近年大きな変化を遂げる。黒狼の一族が、他の獣人達を傘下に治め始めたのだ。

以来、獣王国軍は劣勢を強いられる事となり、現在に至るのである。このままでは数年内に、王都が陥落してしまうだろうというのが、獣王の見立てであった。

「とまあ、これが内乱の理由だ。オレがあまり戦場に立てなくなったってのも、劣勢に回った大きな理由かもしれんな。お?やっと食いもんが来たらしい。まぁ、ゆっくり味わってくれ。」

獣王の鼻と耳がピクピクと動くと、扉をノックする音の後にメイド達によって軽食が運ばれて来る。オレ達はそれを味わいながら、肝心の部分について聞いてみる。

「内乱については良くわかりました。それで、ナディアのお姉さん・・・アイネさんでしたか?その方はどうなったのでしょう?」
「あぁ、そうだったな。オレ達は黒狼共を退けた後、ラウラ国民を弔ったんだ。国民全員だからな・・・かなりの日数だったよ。で、同時に王族である白狐達の確認をしたんだが、幼い姫2人が見当たらない事に気付いた。それで急いで情報を集めさせみると、人族の国に逃げ延びた事がわかった。で、合ってるな?」
「はい。あの時の私は、自分の置かれた状況もわからず、姉に連れられるがままに人族の国を渡り・・・カイル王国に辿り着きました。」

隣に座り、辛そうに説明するナディアの肩を抱き寄せると、ほんの少しだけ表情が和らいだ。

「そのまま穏やかに暮らしてくれたら良かったと思うんだが、アイネは突然戻って来た。目的は、一族の復讐を果たす為だったらしい。」
「らしい、とは?」
「アイネはオレの元を訪ねようとしたみたいだが、道中で黒狼に見付かったって話だ。流石に連中の数には歯向かえなくてな?必死に逃げたと聞いている。だが、黒狼達は自分達が殺し損ねた者を見逃すはずもなく、執拗に後を追ったんだよ。」
「それで、姉はどうなったのですか!?まさか・・・」
「いや、捕まらなかった。」

獣王の言葉に、ナディアの表情が明るくなる。しかし対象的に、獣王の表情は険しいままだ。

「それならナディアのお姉さんは何処にいるんです?」
「この国のダンジョンだよ。」
「「「「っ!?」」」」

獣王が発した予想外の言葉に、オレ達は全員固まってしまう。まさか約50年もの間、ダンジョンから出て来てないのか?いくらなんでも、それはあり得ないだろう。

「ちなみに黒狼達も後を追ってダンジョンに入った。だが、ボロボロになって戻って来た所を捕獲してやった。尋問したんだが、奴らはアイネに追い付く事が出来なかったらしい。まぁ、それから今に至るまで出入り口は常に監視しているんだが、アイネはダンジョンから出て来ていない。」
「だから、急ぐ必要も無い、か・・・。」
「そういう事だ。そんな訳で、この国の住民はダンジョンに入ろうとしない。故に、安否も不明って事だ。」

ナディアの気持ちを考えると、口にする事は出来ない。だが、成長を続けるダンジョンに50年。今も攻略を続けていると考えるのは難しいだろう。生き延びて順調にレベルアップしたとして、未だに攻略していないのもおかしい。そうなると恐らく・・・。

そもそも、ダンジョンとは単独で向かう場所では無いのだ。バランスのとれたパーティが念入りに準備して、『攻略出来たらいいね?』って所である。

「じゃあ、お姉ちゃんはもう・・・」
「確認するまでは諦めるべきじゃないと思うよ?もしそうだったとして、お姉さんの所持品はナディアが手に入れるべきだと思うし。」
「そう・・・ね。そうよね!ありがとう、ルーク!!」

ルークが励ますと、泣きそうだったナディアに笑顔が戻る。そして、ここでやめておけば良いものを、余計な一言を発するのがルークである。

「ナディアのお姉さんには生きてて欲しいかな。会ってみたいし。きっと美人なんだろうなぁ。」
「?・・・!?そうね、お姉ちゃんは私よりも美人だったものね。美人にだらしないルークなら、そう言うと思ったわ!!」
「え、あ、いや・・・・・そうだ!宴会の準備を手伝おうと思ってたんだ!!じゃあ、オレはこの辺で、ぐぇ!!」
「私達から逃げられると思った?ルーク、正座!!」
「うっ!・・・はい。」

下心を見透かされ、逃げようとしたら後ろから首を締められた。嫁さん達に囲まれて観念したオレは床に正座し、宴会が始まるまでの間、ひたすら説教されたのであった。

「あーっはっはっはっ!こりゃいいわい!!この分なら、ルークからは全面的に協力して貰えそうだ。ルビアよ、その調子で頼むぞ!」

その後、宴会でルビアとの結婚を祝福されて英気を養ったルーク達は、翌朝ダンジョンへと向かうのである。

お母様、僕、新しい夢が出来ました。『姉妹丼、おかわり!!』
夢だよ?ただの夢だからね?
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