Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

故郷の真実

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ルークは今後の予定を話し合った後、ティナを連れて故郷のエリド村を訪れていた。プロポーズの時以来ではあるのだが、それ程日も経っていない為、2人は何も変わっていないだろうと考えていた。村に着くまでは。

村から少し離れた場所に転移すると、ティナと2人で手を繋ぎながらのんびりと歩いていた。今の自分達を村の者達が見たら何て言うだろう?などという会話を楽しみながら、2人は生まれ育った場所へと辿り着く。

そしてすぐ異変に気付く。村は静まり返っており、人が暮らしている気配が無い。狩りにでも出掛けたのではないか?という考えもあるが、この村は危険地帯の真っ只中に存在している。そうである以上、見張りもいないというのは異常事態であった。

「誰もいないみたいだけど・・・ティナは何か知ってる?」
「いいえ・・・こんな事は初めてです。何かあったのでしょうか?」

心当たりの無い不可解な状況に、2人の心中は穏やかではない。村の入り口から順に家の中を伺ってみるが、どの家ももぬけの殻であった。綺麗なものである。

「荒らされた形跡は無いね?」
「魔物などの襲撃があった訳では無い、という事でしょうか?」
「となると考えられるのは・・・村を捨てた?」
「一体何の為に・・・。」

答えを出せないまま家々を回ってみるが、やはり誰の姿も無い。そうして最後の1軒である、村はずれに建てられたランドルフさんの家へと辿り着く。ここにも荷物は一切残されておらず、きちんと支度を済ませて出て行った事が伺える。

何の手掛かりも見つけられぬまま、2人は工房へと足を運ぶ。そこには本来、壁や棚一面に所狭しと武器や防具が並べられていたのだが、綺麗サッパリ無くなっていた。

「あれだけあった武器なんかが全部無いって事は、村の皆が武装した上に予備武器まで持ち出したって事になるよね?」
「ですが、ランドルフさんはアイテムボックスを持っているのですよね?」
「ん?あぁ・・・持ってるけど、今回は違うと思う。」
「?」

あぁ、ウチは他の家と違うってランドルフさんが言ってたっけ?それならティナは知らないんだろうな。こういうのは他人に話しちゃいけないんだけど、ティナなら大丈夫かな。

「他の家の人達は、専用武器の管理をランドルフさんに任せてたんだよ。普段の狩りで使ってたのは、ランドルフさんが万人の為に作った汎用品なんだって。」
「知りませんでした・・・ですが、ルークは何故それを?」
「オレ、此処に入り浸ってたでしょ?だから皆の武器についても勉強する機会があったから、ランドルフさんが教えてくれたんだ。使う機会は無いだろうけど、手入れは必要だからって。」

友達もいないオレは、時間さえあれば工房に来て鍛冶の見学をしていた。そのうちランドルフさんが色々と教えてくれるようになって、何時しかオレはランドルフさんの技術を叩き込まれていたのである。ちなみにボッチだったのは、村に子供がいなかった為である。

「そうだったのですか・・・・・えっと、それと皆の武装にどのような関係が?」
「だから、専用武器なんだよ。その全てがたった1人の為に作られた物だから、他の人には使い難いだけなんだ。そんな物を、ランドルフさんが態々持ち出す理由が無い。扱いの難しい武器を持ち出す位なら、新しく作った方が早いからね。」

それに、他人の武器に時間を掛けて細かい調整をし直すよりも、持ち主に合った物を初めから作った方が微調整は少ない。武器の長さや重量は微調整出来ないから尚更だ。

「では、皆は一体何と闘うつもりなのでしょうか?」
「普通に考えたら魔物だろうけど、全員で向かうとすると・・・」
「「スタンピード!?」」

魔物という言葉に、オレ達が思い当たったのはスタンピードであった。スタンピードとは、大挙して逃げ出したり押し寄せたりといった、群衆等の突発的な行動の事である。この世界では、魔物に対して使われる言葉だ。

「ですが、周辺にそれらしい気配はありませんよ?」
「オレ達の知らない何かが起きているのかな?もしくは、これから起ころうとしているのか・・・。」
「・・・・・」
「ティナ?」

急に黙り込み、何やら難しい表情をしているティナの様子が気になり声を掛けてみる。すると、予想外の返答があった。

「私達が旅立つ前に、ランドルフさんから伝言があったのを思い出しました。」
「伝言?」
「はい。もしルークがランドルフさんを尋ねるような事が起きた時、さらにはランドルフさんが村にいない場合、工房の地下室にあるノートを渡すようにと。」

ティナの言葉に、今度はオレが難しい表情をしていたようで、ティナから声が掛かる。

「ルーク?」
「あ、ごめん。ちょっと考え事を、ね。・・・オレ、地下室なんて知らないんだよ。」
「え?」
「ここには10年通ったけど、そんな話は1度も聞かされてない。」
「10年・・・長いですがあっという間でしたね。」

ティナの言葉に、工房での出来事が思い起こされる。ランドルフさんは厳しかったけど、お陰でオレの腕前は上達した。2人で失敗作を作り上げたりして笑いあったりもしたっけ。

「オレもそう思う。ランドルフさん、1日1本は武器を作っていたもんね。あれ?1日1本?10年でも3000本以上?」
「その大量の武器は何処に?」
「ひょっとして、それが地下室に収められてるって事になるのかな?とりあえず、地下室を探してみよう。」

オレ達は手分けして、工房を隅々まで調べてみる事にした。黙々と調べる事、30分。スイッチを見つけたティナにより、工房の隅に階段が現れる。中々手の混んだ仕掛けに関心しながらも、オレ達は地下室へと足を踏み入れる。

そこは、驚くべき空間になっていた。村と同じ面積の地下室には、沢山の階段が設置されている。位置的に、全ての家と繋がっているのだろう。

地下室の中央部分には大きなテーブルと椅子が並べられており、テーブルの上には1冊のノートと武器が数点置かれている。すぐ横には、訓練場もあった。傷だらけの床が、戦闘の凄まじさを物語っている。

訓練場の脇には、おびただしい数の酒瓶も転がっている。積み上げられた酒瓶が、戦闘の凄まじさを物語っている。・・・・・ってアホか!!


「ここは一体・・・避難所にしては、日常的に使われていた形跡がありますね。」
「辺境の危険地帯にある村だから訳アリだと思ってたけど、ここまでとは思わなかったよ。」

大量の武器が見当たらない為、とりあえずオレはテーブルに置かれた武器を手に取って眺める。ランドルフさんが作ったと思われる日本刀。その引き締まった直刃からは、技術の高さが伺える。個人的に、直刃は誤魔化しが効かないと思っている。故に難しい。

オレが刀に見惚れていると、ノートを開いていると思っていたはずのティナから1通の手紙を渡される。

「ランドルフさんから、ルークに宛てた手紙のようです。」
「手紙?」

ティナに教えて貰おうと思ったのだが、折角の手紙なので黙って読む事にした。おっさんからの手紙より、美人の声の方がオレは嬉しいのだ。


~ルークへ~

お主がこれを読んでいる時、この村には誰も残ってはいないだろう。ワシから多くを語る事は出来んが、出来る限りの事は伝えようと思う。

そもそもこの村は、同じ目的を持つ者達の手によって作られた。その目的とは、神々の遺産である強力な魔道具や、聖剣と呼ばれる武器を破壊する事。おそらく、カレン様から過去の出来事については聞いている事と思う。

じゃが、カレン様も知らぬ事実がある。この村には、当時の生き残りやその親族が暮らしておる。しかし、それで全員という訳ではないんじゃよ。この大陸に戻った者達の中から数名、密かに他国へと渡った者達がおる。悲劇を引き起こした張本人達じゃ。

その者達は神々の遺産に魅了され、それらを独占しようとした。いや、今でもそれらを狙っておる。何処かの国に取り入って戦力を増強し、その機会を狙っておるとの事じゃ。この村の住人はそれを阻止すべく、神々の遺産を破壊しようと考えておった。

じゃが、ワシの作る武器でも破壊する事は叶わない。来る日も来る日も槌を振り、高みを目指し続けたが届きそうにもなかった。何十年も絶望し続ける日々が続いたわい。そんな時じゃ、お主が突然刀の製法を見せてくれたのは。

ワシは歓喜した。ワシの知らぬ製法で、お主は武器を作り上げたのじゃ。その製法があれば、ワシは最高の武器を作り出せると確信した。しかし同時に、そのままでは無理だとも思った。故に、槌を振り続ける日々は続いた。じゃがな、今度抱いたのは絶望ではなく希望じゃった。

それから10年。ようやく完成したのじゃよ。神々の遺産を破壊出来るだけの武器が。故に皆、目的を果たすべく旅立つ事となった訳じゃ。

おっと、言っておくがお主のせいではないぞ。裏切り者が行動を起こせば、武器の完成を待たずに行動する計画じゃったからの。じゃから皆、お主に感謝しておる。村の住人達は神々を憎んでいるが、お主は別じゃ。お主は大切な家族みたいなもんじゃからな。

さて、長くなったので最後とするが、ルークにはワシの技術の全てを伝授する。村の住人達からの礼じゃ。お主が作る武器では、必ず行き詰まる時が来るじゃろう。これまでのワシのように・・・。1冊の手帳に記した事を、その頭に全て叩き込め。そして、手帳は処分して欲しい。二度と悲劇を繰り返さぬ為にもな。

生きて帰れたら、また一緒に武器でも作ろうか。いや、今度は包丁にしておくか。じゃあ、元気でな。

                             ランドルフより。


「村にこんな秘密が・・・。」
「私も知りませんでした。ただ、我が家にも階段が繋がっている事を考えると・・・。」
「父さんと母さんも・・・というより、2人は中心人物かもしれないね。」
「村を出て行動していましたから、きっとそうでしょうね。・・・これからどうしますか?」
「他国が絡む恐れがある以上、勝手に動くと皆に迷惑を掛けるかもしれない。それに、村の皆が何処にいるのかもわからないし。現状は打つ手が無いね。こっちもまずは情報収集かな?」
「確かにそうですね・・・。」

こうしてオレとティナは、カレンに報告すべく城へと戻る事になったのである。
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