Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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転生〜統治(仮題)

神々の動向

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フォレスタニアとは次元を隔てた場所。ルークの父であるアークの住まう居城では、人払いをした一室にアークの姿があった。眼前には跪く3人の男女の姿。

「さてと・・・報告を聞こうか。」
「「「はっ!!」」」
「では私から。アーク様の指示通りに調査しましたが、魔神達の封印に変化はありませんでした。」
「そうか。ならばエールラ、そのまま監視を続けてくれ。」
「畏まりました。」

エールラと呼ばれた美女は報告しながらもアークに見惚れていたが、新たな指示により面を伏せる。すると、隣で跪いていた初老の男性が声を上げる。

「次は私の番ですかな?アーク様のご指摘通り、現在神域で不審な動きを見せている男神が数名おりました。尋問の結果、全員がある女神の頼みを聞いていたようです。」
「・・・ディグノス、詳しく聞きたい。」
「宜しいのですかな?」

ディグノスと呼ばれた初老の男性が、周囲の者達を伺いながら聞き返す。他の者達に聞かれても良いのか、という意味なのだろう。しかし、アークは迷う様子も見せずに頷き返す。

「・・・では。全員が下級神でしたが、どの者もある世界の情報を集めておりました。1人はフォレスタニアと呼ばれる世界。1人はそこに住まう戦女神カレン。最後の1人は・・・。」
「オレの息子か。」
「「っ!?」

未だに跪く2人の女神が驚きに面を上げる。しかし、そんな事には構わずディグノスは応える。

「左様。想定通りといった様子ですな?」
「まぁな。それで、探っていたのは誰だ?」
「・・・美の女神です。」
「よりにもよって、アイツかよ・・・マズイな。」

一切表情を崩す事の無かったアークの表情が険しい物となる。しかし、相変わらずディグノスは相手の様子に構わず報告を続ける。

「何がマズイのかはさておき、その美の女神ですが・・・姿を消しました。気付かれた様子も無かったのですが、あの者の勘の鋭さだけは侮れませんのぉ。ほっほっほっ。」
「おい、ディグノス!笑うのはオレの不幸だけにしろ!!」
「おっと、これは失礼。そうですな・・・どうやら対象が変わった様子。由々しき事態ですかな?」
「どういう意味でしょうか?」

話の意図が掴めないエールラが訪ねる。その様子に、アークは気まずそうな様子で告げる。

「エールラ、ディグノス。ご苦労だった。もう下がっていいぞ。」
「「はっ!!」」

アークの言葉に従い、2人が退出する。アークは口止めしなかったので、他の部屋に行ってディグノスが説明する事だろう。しかしこれは、考えあっての事である。ディグノスと呼ばれた初老の男性の生きがいは、他の神々の不幸を楽しむ事。彼が忠実にアークへ仕える理由は、アークの下にいれば存分に楽しむ事が出来る為であった。

アークは立場上、女神に言い寄られる機会が多い。その様子を見る事を生きがいとしているのは、周知の事実であった。アークも当然理解している。理解した上で放置しているのだ。それ位で優秀な者を手元に置いておけるのなら、何の文句も無いのである。

女性をけしかけるといった行動を起こすような相手であれば、何か対策もしよう。しかし、ディグノスは傍観するだけなのである。自ら手を出す必要も無いのだから、当然であった。


最後に残された女神が、突然立ち上がる。それを一瞥し、アークは女神と共に移動する。2人は部屋に置かれた椅子に腰掛けると、女神が口を開く。

「まさか、美の女神が動くとは想定外でしたね。」
「あぁ・・・狙いはルークだろうな。」
「一向に籠絡出来ないアーク様を捨て、何とかなりそうなルーク様に狙いを移したと見るべきですからね。見た目もアーク様と大差無く、次期最高神・・・狙っている女神は多いと聞きます。」
「それは・・・お前もか?ヴァニラ。」

テーブルに頬杖をつき、気の抜けた表情のアークが問い掛ける。その様子に、笑いを堪えながらもヴァニラと呼ばれた女神が答える。

「勿論です。あれ程の優良物件、みすみす見逃す手はありませんよ?」
「そうかよ。まぁ、息子の恋愛に口を出すつもりは無いからな。好きにするといい。しかしそうなると、カレンに与えた褒美は大き過ぎたか?」
「そうですね。他の神々が見捨てた世界に残った唯一神・・・その功績を考えたとしても、ルーク様の妻というのは些かやり過ぎでしょう。手がつけられなくなりますよ?」

説明しておくと、カレンの性格は神々の間でも問題視されていた。元々キレると手がつけられない問題児が、その力・・・権力を増す事に繋がったのだ。現在、神域における懸案事項の筆頭に挙げられている。しかし有識者達だけは、この問題を特に問題とは思っていない。

「カレンはバカ息子にベタ惚れだからな。バカ息子の舵取りを間違えなければ、何の問題でも無い。それよりも、美の女神・・・あとは報告も聞こうか。」
「そうですね・・・美の女神カナンですが、まず間違い無くフォレスタニアへ向かったでしょう。問題なのは、戦女神との不仲。最悪の場合、戦女神に手を掛ける可能性も・・・。」

搦手主体の美の女神と、真っ向勝負の戦女神。正反対の性格を持つ2人の女神の折り合いの悪さは、知らぬ者のいない事実であった。当然、ヴァニラも知っていたのでそんな想像をする。しかし、どうやらアークだけは違う考えだったようだ。

「いや、ルークの性格を調べているのならそれは無い。アイツはオレの息子だからな。正面切って嫁に手を出せば、取り入る事は不可能になるはずだ。計算高い美の女神が、そんな愚かな真似をするとは思えん。精々、カレンを遠ざけた隙をついての色仕掛けが関の山だろう。」
「アーク様が一晩カナンの相手をすれば済む話なのですけどね?」
「それは無理だろ。あの女と一晩過ごしたら、確実に骨抜きにされる。」
「・・・ルーク様も同じでは?」

最高神であるアークが骨抜きにされるのならば、神としての格が最底辺のルークに抗う術など無いはずである。そう考えたヴァニラは呆れたように呟くが、アークは苦笑混じりに反論した。

「あいつの嫁には、美の女神並の美貌を持ったのがいるだろ?かなりの耐性が付いてるだろうからな。骨抜きにはならんさ。・・・確実に手は出しちまうだろうがな。」
「自身の安全確保の為に、息子を犠牲にする・・・流石は最高神ですね?やり口がとんでもない。」
「おい!!」

大抵の事を無表情でやり過ごすアークではあったが、ヴァニラの皮肉は応えたらしい。身を乗り出して反論しようとする。しかし、ヴァニラは機先を制してアークに反撃の機会を与えないのであった。

「指示されていた奥様の行方ですが、我々の目が届く場所には無いようです。」
「・・・何?」
「ですから・・・ご実家に帰られたのではないかと言っているのです。」
「実家・・・それはマズイな。」

この時のアークの動揺は、側近であるヴァニラでさえも見た事が無い程であった。それも当然だろう。下手したら戦争である。

「えぇ。非常にマズイです。魔神王の娘に手を出し孕ませた挙句、成人した息子を巡って喧嘩して実家に帰られたなどと、他の魔神に知れ渡ったら大問題です。下手したら戦です。フォレスタニアで繰り広げられた神魔対戦の比ではありませんよ。」
「あの時の戦は確か・・・魔神王に逆らった馬鹿共がフォレスタニアで暴れたんだったか?」
「はい。何故フォレスタニアだったのかは不明ですが、偶然にも戦女神の担当する世界だった事もあり事なきを得ました。ですが、全面戦争となれば戦女神と言えど・・・いえ、今回はその心配も無いでしょう。」

どういう訳か、確信を持ったようにヴァニラが告げる。そして流石は最高神といった所か。アークは、ヴァニラが何を言いたいのか察してしまった。

「まさか・・・オレを矢面に立たせようと・・・・・」
「何を言っているのです?夫婦喧嘩に他者を巻き込まないで下さい。まぁ夫婦喧嘩と言っても、魔神王の娘に対する溺愛っぷりは有名な話です。直接乗り込んで来るでしょう。・・・頑張って下さいね?」

不敵な笑みを浮かべながら、ヴァニラがアークに告げる。当然、焦ったアークは苦し紛れの嘘を並べようとするのだった。

「お、オレも実家に用事が!息子に伝えないといけない事もあったなぁ!!」
「貴方の実家は此処ですよ。ルーク様にはカレンから伝えて貰えばいいでしょう?さぁ、観念して下さい。それよりも、溜まっている仕事を片付けましょうか?」
「は、離せ!うぉっ!!お前の何処にこんな力が!?ち、ちくしょー!!」

ヴァニラに襟首を掴まれ、アークはズルズルと引き摺られて行く。部屋の外には多くの者達がいたのだが、いつもの光景に生暖かい視線を向けられる最高神であった。


実は誰にも気付かれず、その光景を見ていた者がいたのだが、当然アークも気付かなかった。知っていたのは、黙っているように頼まれたヴァニラのみである。


「ありがとう、ヴァニラ。お陰でやっと、自分の息子に会いに行けるわ。折角お腹を痛めて産んだ子に、1度も会わせて貰えないなんて我慢出来ないもの。さてと、どんな出会い方がいいかしら?勢いに任せて突撃・・・は面倒な事になりそうだし、暫くフォレスタニアで作戦でも考えた方が良さそうね。楽しくなってきたわ!」

満面の笑みを浮かべながら、その女性が心底楽しそうに呟く。この女性の登場によりルーク達が大騒ぎする事になるのは、想像に容易いのは言うまでもない。


真紅に輝く瞳が怪しく光り、腰まである銀髪を揺らしながら振り向くと、その女性の姿は静かに消えるのであった。口元に不敵な笑みが浮かんでいたのをアークが見ていたら、神々の決まりを破ってでもフォレスタニアへ向かっていた事だろう。アークの妻、つまりルークの母は、神界魔界を問わず知らぬ者のいない屈指のトラブルメーカーなのだから。
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