Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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動乱の幕開け

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店を閉め、2階に集合したルークと嫁達は休憩がてらに状況を確認していた。


「ーーーと言う訳なのです。本当に申し訳ありませんでした!ですから城へ戻って頂けないでしょうか!?」
「・・・事情は理解した。でも、帰るつもりは無い。」
「そんな!?」

スフィアの説明を受け、可哀想だとは思ったものの帰る気にはならない。そう告げるルークの言葉に、納得の行かないスフィアが喰らい下がる。

「正直な所、オレは権力に興味が無い。出来る事なら皇帝の座なんて誰かに譲ってしまいたい程だ。そして今回の件はスフィアが悪いと思ってるんだろ?」
「それは・・・はい。」
「だったらオレが素直に従う道理もない訳だ?」
「・・・おっしゃる通りです。」

スフィアならば言い返す事は出来るだろう。口撃力であれば、恐らくスフィアが最強なのだから。しかしここでそんな真似をすれば、ルークは2度と戻らないかもしれない。そう思ったからこそ、スフィアは大人しくするしかなかった。

「まぁ、スフィアを懲らしめる為に他のみんなまで巻き込むのは気が引けるから、そこは妥協点を探ろう。そうだな・・・労働、は充分過ぎる程してるからなぁ。う~ん、戦闘・・・ならこうしよう!スフィアには戦闘訓練を受けて貰う。期限は定めない。だが単独でCランクの魔物を倒せるようになるまで終わらない。それで良ければ数日おきに城へ顔を出すと約束する。」
「ルーク様!それは無茶です!!」
「そうですよ!下手したら死ぬまで終わらないじゃないですか!!」

ルークの提案に対し、真っ先に異を唱えたのはセラとシェリーである。残念な事に、スフィアの運動神経が壊滅的な事実を誰よりも知っている。だからこそ真っ先に声を上げたのだ。

しかしルークも鬼ではない。人間何がキッカケで目覚めるのかわからない。それに、Cランクの魔物であれば不可能とは言えなかった。どんなに才能が無くとも、Cランクであれば倒せるようにはなる。だがそれにも条件はある。普通、幼少の時分より鍛錬に明け暮れる。スフィアの場合は20代後半。肉体は今後衰えるだろう。そうなれば現状維持もままならないのだ。

ヒト種である以上、時間に制約があった。ただしその制約に当てはまらないのがルークの妻、つまりは加護を受けた者達である。その事に気付いた面々が呟く。

「Cランクならすぐじゃない?」
「そうね。幸いにも、私達にはルークの加護があるんだし。」

ドーピングと言うか、気持ち程度のチートである。加護によるレベルの上乗せ。それを加味すればすぐにでも戦えるだろう。しかしそれに待ったをかけたのはルークである。

「残念だけど加護は与えない。当然夜の相手もしない。これはカレンも同様だな。」
「「「「「なっ!?」」」」」
「何故です!?」

この発言には全員が驚き、納得のいかないカレンが声を張り上げる。自分が一体何をしたというのか、その理由がわからないままだったからだ。

「悪いがカレンに対しても思う所がある。」
「それはルークの加護を失う程の物ですか?」
「あぁ。そもそもオレが加護を与えられるのに、カレンから何の加護を受けていないのは何故だ?」
「「「「「え?」」」」」

これは初耳だったのだろう。嫁達も驚いている。詳しい話は聞かされていなかったが、普通に考えれば互いに加護を与え合う事が出来ると思うだろう。しかしそれが一方通行だったと聞かされれば、当然耳を疑う。そんな嫁達を一瞥してルークは続ける。

「悪いけど信用出来ないんだよ。どうしても加護が欲しい訳じゃないけど、正直納得が行かない。オレが我慢すればいいと思っていたけど、今回のような事が度々起こっても困る。だから今回は徹底的に、オレが満足する方法を取らせて貰う事にした。異論があるなら結構。オレの好きにさせて貰うんだから、みんなも好きにするといい。誰が何処で何をしようと構わない。オレの下を去ると言うなら受け入れる。」
「「「「「・・・・・。」」」」」

突然別れを切り出した恋人同士のような空気となり、その場に居た全員が黙り込む。しかしスフィアとカレン以外は完全なとばっちりである。重苦しい雰囲気となったのは、スフィアとカレンを気遣っての事だった。

「・・・わかりました。私はルークの提示した条件を受け入れます。」
「「スフィア様!」」
「構いません。今の立場を守り抜く事に必死で、ルークの気持ちを考えていませんでした。これではルークの隣に立つ資格がありませんよ。」

完全に吹っ切れたのか、清々しい表情のスフィアに嫁達が声を掛ける。

「はぁ・・・仕方ないわね。協力してあげる。」
「思い切り鍛えてあげるわ。」
「「私も!」」
「ルビアさん、フィーナさん、みなさん・・・ありがとうございます!!」

犬猿の仲であるルビアが真っ先に協力を申し出た事で、他の者達も次々と協力を申し出た。感激のあまり、スフィアの瞳にはうっすらと涙が。全員が笑顔でスフィアの下に駆け寄る中、ふと視線を移したナディアが声を掛ける。

「カレンはどうするの?」
「私は・・・少しだけ時間を頂けますか?」

何か思う所があるのだろう。この場での決断を避け、カレンは猶予を求めた。当然ルークに急がせるつもりはない。何日でも何年でも構わないと思っていた。

「カレンの思う通りにするといいよ。」
「ありがとうございます。先に城へ戻りますね。」

複雑そうな表情を浮かべて一礼し、カレンは部屋を後にした。他の者達は声を掛け辛かったようで、黙って見守るのだった。


嫁側の問題が片付き、次はルークの抱える問題である。今まで無言を貫いていた鬼軍曹がルークに向き直る。

「で?シノンとカノンについての説明は?」
「はい!それにつきましてはーーーーー」

恐縮しっ放しのルークであったが、何とか事情を説明する。すると納得したのか、鬼軍曹も鳴りを潜めたいつものティナさんの姿がそこにはあった。

「そういう事情でしたか。ですが、女の子の面倒をルークに任せる訳にもいきませんね。」
「で、でもさ、城に連れて行くのはナシだからね!?2人には普通に育って欲しいんだ!!」
「「「「「・・・・・。」」」」」

一体どの口が物を言うのか。お前が普通を語るなとばかりに、嫁達が冷ややかな視線をぶつける。勿論ルークも、自分が城に戻る事を拒絶して言っている訳ではない。偶々2人を保護したが、そんな事で城へと招き入れては大変な事になる。それを理解しているからこそ、嫁達も口を閉ざしているのだ。

「そうですね・・・では私が一緒に暮らします。」
「ちょ、ズルいわよ!」
「それなら私も!」
「ルビアとフィーナはスフィアを鍛えるんでしょ!?なら私が!」
「ナディアは竜王達の相手があるでしょ!」

ティナの言葉を皮切りに、他の嫁達が自分もと声を上げる。しかし誰もが何らかの仕事を抱えている。そういった意味で、自給自足のティナ以外は共に暮らす訳にもいかないだろう。収拾がつかなくなりつつある中、スフィアが全員を窘める。

「お静かに!皆さんの言い分は最もです。ですからここは、手を挙げられない私が取り纏めます。宜しいですね?」
「「「「「・・・はい。」」」」」

別にスフィアは再び調子に乗り始めた訳ではない。色々と吹っ切れた事で、普段のスフィアに戻っただけの話である。みんなの纏め役であるスフィアの提案に、全員が渋々頷く。

「まず、ルビアさんは地下農園があります。フィーナさんは・・・私の訓練ですか。ナディアさんは竜王達の相手。リリエルさん達は置いておくとして、残るはティナさん、セラ、シェリー、エミリアさんですね。」
「私はスフィア様の訓練をお手伝いします。」
「あ、私も!」

スフィアの呟きに、セラとシェリーは辞退を申し出る。今までスフィアに仕えて来た為、この3人を離す必要は無い。子供の教育や商売に向いていないからではない。という事にしておこう。

「そうですか?では宜しくお願いしますね。でしたらティナさんとフィーナさんにお任せしましょうか。」
「「「意義アリ!」」」
「ちょっと~!何でなの!!」

当然の如く、ナディアとルビアが意義を申し立てた。色んな意味で意外だったのがリリエルである。普段面倒な事は逃げるのだが、今回は何だか積極的である。

「ですからルビアさんは地下農園、ナディアさんも竜王達の相手。エミリアさんは次期聖女として、この国では有名ですよね?リリエルさんは・・・翼が邪魔!」
「「「くっ!」」」
「ガーン!!」

あまりにも簡潔な説明ではあるが、全員が自覚していたのか崩れ落ちる。翼が邪魔だと言われたリリエルに至っては、この世の終わりといった表情であった。

翼の生えた人間などいない為、彼女達の翼はある方法で見えなくしている。しかしそれは見えないだけで、器用に折り畳まれているのだ。確かに存在しているのだから、狭い屋内では邪魔にしかならない。それ以外にも、常識に疎い彼女達に子供の世話を任せられないといった理由が存在する。


無駄な抵抗もせず大人しくなった者達に夕食を振る舞ってから帝国へと送り届け、ルークはラミスの拠点へと戻った。単純にシノンとカノンが心配だったからである。いや、ティナ、フィーナと結託される事が心配だったと言える。

「「お帰りなさいなの!」」
「ただいま。」

嫁達の同意を得られた為、ティナとフィーナが2人に転移魔法の説明を行っていた。とは言っても、情報の取扱に関してのみではあるが。そんな数秒で済む説明にルークが勝てるはずもなく、4人は一緒にお風呂を楽しんでいたようだ。

「ルークのお出迎えも終わった事ですし、シノンとカノンは寝ましょうか。」
「おやすみなさいなの!」
「おやすみなの!お姉ちゃん、一緒に寝るの!!」
「あぁ、おやすみ。」

ティナに促され、2人は素直に自室へと向かって行った。残っていたフィーナの正面に座り、ルークはニヤニヤしながら今後の相談をする。ちょっと気持ち悪いのだが、フィーナも同じ気持ちである為何も言わない。

「明日からティナとフィーナは、2人のサポートって事でいいかな?」
「そうね。あまり表立って働くのもどうかと思うし。あの子達がここで生きる為の目的を奪うのも、ね?ルークはそう考えてたんでしょ?」
「あぁ。正直助かるよ。それで2人と交渉したと?」
「えぇ、お風呂でね。だから私達は陰ながらお手伝い。」

赤の他人であるシノンとカノンがルークと共に暮らす条件、働かざる者食うべからず。ティナとフィーナがこの店を手伝えば、2人は追い出されるかもしれない。そう考えた2人は最初、彼女達の助力を拒んだ。

しかしこのままではいずれ倒れてしまう。そう考えたティナ達が譲歩する形を取ったのだ。自分達は只のお手伝いさんです、仕事は取りませんよ、と。自分達を脅かす存在でないと理解した2人が、ティナ達を信用するのに時間は掛からなかった。


2人を寝かし付けたティナがリビングに戻って来る。フィーナとの話を打ち切り、ルークは話題を変えるのだった。そう、先日目撃したリューとサラの件へと。
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