Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

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変革

生存への道3

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結局オレもスフィアも言い倦ねていると、カレンがリリエル達を連れて来てしまう。その他の嫁さん達も呼び集めようとするカレンだったが、流石に執務室では狭すぎる。そう考えたスフィアの案内で会議室へと移動した。

終始無言で待ち続けるオレ達であったが、到着した嫁達によって沈黙が破られる。

「「「「「ルークが2人!?」」」」」

同じ顔があるんだし、当然そうなるよな。まずは状況を説明しようとしたが、そんなオレを制して最高神が口を開く。

「流石にこの嫁の数は壮観だな。とりあえずオレがルークの父親、アークだ。少し長くなるから、楽な姿勢で聞いてくれ。」
「「「「「はい!!」」」」」

流石に神々のトップが相手で緊張してるんだと思っていた。後で聞いた所、それよりも義理の父親との初対面だった事の方が大きかったらしい。

「アーク様、此方がルークの・・・」
「おぉ!息子を大事に育ててくれたっつう2人か!!」
「「は、はい!!」」

流石に父さんと母さんも緊張しているらしく、見た事も無い程畏まっている。

「何もしてねぇオレ達よりもよっぽど親って事だよな。これからもルークの父親、母親として宜しく頼むよ。」
「い、いえ、そんな・・・」
「ありがとうございます!」
「オレは父親って言えた義理でもないしな。最高神として接するとしよう。」

それは有り難い。今更父親面されてもピンと来ない。寧ろイラッとするだろう。

「とりあえずどうすっかな・・・まずはこの世界で起こっている問題からか?」
「「っ!?」」

アークの言葉に真っ先に反応したのも父さんと母さんだった。問題を起こした当事者なのだ、処罰を覚悟したのだろう。だがアークの口から出たのは意外とも言える言葉だった。

「正直、オレは一切口を挟むつもりはない。この世界の事は、この世界に生きる者達が決める事だ。だからまぁ、オレが直接何かをする事はない。」
「「・・・ハァ」」

2人が安堵の息を吐く。だがそれは、他の者達にとっては聞き捨てならない言葉であった。代表してオレが口を開く。

「それはつまり、救う事も無いって意味か?」
「結論から言えばそうなるな。だが勘違いするなよ?本来であれば、手の空いてる神々を送り込んで沈静化する所だ。」
「本来であれば?」
「あぁ。今回は複雑な事情があって難しい。それを説明する為にオレが来たんだよ。」

やっぱりフラグだったんじゃねぇか!

「まずこの世界で起きている魔物の大移動。これは最初から仕組まれたものだ。」
「誰が何の目的で?」
「ん~、この世界に来たい女神の誰かだろうな。」
「「「「「?」」」」」
「まさかっ!?」

オレ達には意味不明だったが、カレンには心当たりがあったようだ。

「実は神々の世界を跨いだ引越しには、オレの許可がいるんだ。」
「悪いけど、言いたい事がわからない。」
「・・・だろうな。」
「アーク様は1人の例外無く、一切許可しないと言っているのですよ。」
「何で?」

予想通りといった表情のアークが呟き、カレンが代弁する。だがそれすらも理解出来ないので、素直に聞いてみる。

「お前の嫁達、とりわけカレンを守る為だな。」
「大抵の女神は、独占欲が強いのです。自分以外の妻など認めませんから、私達を排除するのは明らかです。」
「いや、そんなのオレが納得しないだろ。」
「嫁達を殺すって脅されたとしてもか?」
「それは・・・」

確実に抵抗するはずだが、絶対に守り切る保証は無い。状況次第では相手に従う可能性もある。そう考えてしまった為、オレは断言出来なかった。

「実際には、お前との間に子供が出来れば嫁達には手を出さない、って条件を出すだろうけどな。」
「子供?」
「アーク様の、つまりはこの世界で言う王族の仲間入りとなるのです。」
「それってそんなに魅力的な物なのか?」
「ルーク、この世界の王族とは規模が違うのですよ?」
「・・・?」

じぇ~んじぇんわっかりましぇ~ん!などと言える空気でもない為、首を傾げるだけにした。

「全ての世界を管理する権限を持つのです。まさに欲望のまま、世界や神々に対して好き放題出来る事になります。」
「それに何の意味があるんだ?」
「・・・・・」

やはり魅力を感じないオレには理解出来なかった。カレンもお手上げだったのか、それ以上の説明をしてくれない。

「くっくっくっ。やっぱりオレの血を受け継いでるよ。カレンは言い難いみたいだし、オレがわかり易く教えてやる。長く生きてるとな、退屈するんだ。で、大抵の神が過激な遊びをし始める。生き物を唆したり拐かしたり。方法は様々だが、世界を滅茶苦茶にして楽しむんだ。殊更女神にその傾向が見られる。」
「それって・・・」
「滅びた世界も幾つかあるそうです。」
「「「「「なっ!?」」」」」

カレンの発言に、全員が驚愕する。

「それが許されるのかよ!?」
「勿論許したりはしない。だが、大抵が気付かれないように上手くやるもんでな・・・ほとんどが明らかとなっていない。だからオレは伴侶を求めなかった。だって怖ぇもん。」
「最高神様なんですよね?」
「ん?お前・・・なるほど。おっと、何だっけ?」

口を挟んだティナに視線を向け、何やら考え事をしたアーク。ティナに何かあるのだろうか?

「最高神様でしたら、簡単に調査出来るのではありませんか?」
「残念ながら無理だ。例えるなら、この世界の全ての王に代わって執務をこなし、同時に自力で全住人の安否を確認するようなものだ。」
「それは無理ですね・・・。この国だけでも不可能でしょう。」

言い直したティナの問いにアークが答える。誰が聞いても不可能なのは明白。誰よりも納得したスフィアが声を上げる。

「永く生きてるとな、おかしくなる奴が出て来るんだ。だからと言って、年寄りを殺して回る訳にもいかない。そんなのがコイツの嫁になってみろ。世界なんて消えて無くなるぞ?」
「魔神と似たようなもんじゃねぇか・・・」
「そりゃそうだ。魔神ってのは魔族の神だからな。つっても純粋な神じゃねぇ。最初の魔神ってのは、罪を犯して逃げた神だ。逃げる際に痕跡を消そうとして神力を捨てた。だからこそ神力を持ってないんだが、代わりに魔力が途轍もなく多い。丁度お前みたい・・・って、お前の母親は魔神なんだけどな。」
「はぁ!?」

突然のカミングアウトに、カレンが真っ先に反応する。オレってハーフなの?カレンの反応を見るに、前代未聞っぽいな。新しいハーフ・・・オネェじゃないぞ!

「あ、今のナシ!これは内緒だった!!」
「ちょっ、アーク様!ちゃんと説明して!!」

口の滑ったアークが無かった事にしようとするが、カレンが瞬時に掴みかかる。動揺し過ぎて言葉遣いが・・・。

「お、落ち着け!それよりも、オレが態々ここに来た理由がソレだ。」
「どれだよ?」
「お前の母親が居なくなった。多分お前に会いに来るぞ?」
「・・・は?」

母親が魔神でオレに会いに来る?・・・どゆこと?

「事情が事情だけに、お前が産まれてすぐに引き離したんだ。時々様子を伺ってはいたんだが、ついに我慢の限界を超えたんだろう。突然居なくなった。」
「同じ母親として、気持ちはわかります。」

今度は母さん、エレナが口を開いた。だがアークの言いたい事は違うらしい。

「別にオレも好きで引き離した訳じゃねぇ。問題なのは、アイツの性格・・・性質か?」
「性質?」
「気分屋で、とにかく悪戯好きなんだ。」
「可愛いものじゃない。」

微笑みながらナディアが呟く。しかしアークの表情は険しい。

「お前の母親だから、きちんと説明してやる。名前はヴィクトリア。現魔神王の1人娘だ。容姿は・・・見ればすぐにわかる。」
「「「「「魔神王!?」」」」」
「いいか?くれぐれも機嫌を損ねるなよ?」
「怒らせるとマズイのか?」
「そうだ。キレたらカレンでも手がつけられん。子育てでストレスを溜められたら、世界が滅茶苦茶になる。って事で引き離したんだ。今回はこれをやるから、少しでもマズイと感じたらすぐに鳴らせ。」

そう言って渡されたのは、虹色に輝く小さなベル。使用人を呼ぶのによさ気である。

「これはオレを強制召喚する為の神具だ。鳴らせば瞬時に飛んで来る。」

ダメだった。こんな使用人は、こっちから願い下げである。

「最高神を強制召喚するって至宝じゃないですか!!」
「凄いの?」
「普通は私でも簡単には会えないんですよ!?そんなのを呼び出すんですから、それはもう!!」

カレンがすっかり壊れている。最高神をそんなの呼ばわりしている事に気付いていない。当然アークの頬は引き攣っているのだが、指摘するつもりはないらしい。

「確実に振り回されるだろうが、何があっても我慢しろ。満足すれば帰るだろうから、竜巻が100個一度にやって来たと思うしかない。」
「死んでしまうわ!!」

恐ろしい例えをしないで欲しいものだ。



ここで捕捉しておくが、アークは真実を語っていない。ルークが生後間もなく引き離された最大の理由。それは魔神王が娘の懐妊、出産の事実を知らなかったからである。娘を溺愛していた魔神王がその事実を知った場合、間違いなく怒り狂って攻め込んで来ていただろう。

そう考えた神々の上層部、アークの直臣達が2人を説得したのだった。余計な波風を立てぬよう、アークとヴィクトリアは自分達に非がある事にすると決めていたのだ。アークが説明する場合はヴィクトリアを、逆にヴィクトリアが説明する場合はアークを悪者にしようと。

自分に非があると言えば、余計な詮索をされる恐れがある。そう考えての事であった。まぁ、お互いが説明する理由も嘘では無いのだが。



「とまぁ・・・ここまでで質問はあるか?」
「1つ宜しいでしょうか?」

おずおずとスフィアが手を挙げる。

「ん?」
「魔神とは罪を犯して逃げた神との事でしたが、義母様は罪人という事ですか?」
「あぁ、それは違う。最初の魔神がそうだっただけで、今居る魔神は只の子孫だ。子供に罪は無いだろ?」
「そうですね。安心しました。」

スフィアが胸を撫で下ろす。見れば他の嫁達も同じであった。


「なら次の話に移るぞ。ここから南西の大陸に何があるのか、だったな?」
「そうそう。何で話すのに許可がいるんだ?」
「そこにある種族を押し込めたからだ。所謂鬼と呼ばれるものだな。」
「「「「「鬼?」」」」」

またしても物騒な単語が飛び出した。もうお腹いっぱいである。

「これはカレンが産まれる前の話になるか。まぁ、そんなに大した内容じゃない。突然湧いたように現れた鬼と呼ばれる者達が、この世界を荒らし回った過去があってな?世界が滅びる寸前まで追い込まれたんだ。当然オレは手の空いてる者達を送り込んだ。が・・・全滅させられた。」
「「「「「っ!?」」」」」
「まぁ、送ったのが問題を起こしてばっかの、戦闘に不向きな奴等だったせいなんだが。」
「「「「「・・・・・。」」」」」

こんなのが最高神でいいのかよ!?みんなが半目になってるぞ?

「とは言っても神が負けるような相手だ。オレは急遽、魔神王に対処を一任した。そしたら「滅ぼすのは同意出来ない」って言い出したもんだから、「ならきちんと管理しておけよ?」って事で終わらせたんだ。」
「それでいいのかよ!?」
「オレは本来不干渉なんだよ。それに、危険だからっていちいち滅ぼしてたら、生物なんていなくなるぜ?」

それはまぁ正論である。自分達に都合のいいようにするのはよろしくないだろう。

「じゃあその大陸も、今回は使えないって事か・・・。」
「それは交渉次第じゃねぇか?管理する魔神もいないんだし。」
「交渉?鬼と?」
「あぁ、お前勘違いしてるな?鬼って言っても角が生えてるアレじゃねぇぞ?」
「ならどれだよ?」
「吸血鬼だ。」
「「「「「吸血鬼?」」」」」 「吸血鬼!?」


この場に居合わせた全員が首を傾げている。転生して15年。異世界で定番とも言える吸血鬼の話を一切聞かないと思っていたが、ここで登場するとは。しかも世界を滅ぼしかけたって・・・美人でボインの姉ちゃんと、キャッキャウフフな展開は無さそうで安心した。これ以上は体が保たない。
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