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フォレスタニア調査隊
継承2
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「正直、どういう意図があってこの技が産み出されたのか、オレには理解出来ない。」
「防御なのに?」
「あぁ。守るよりも攻撃した方が手っ取り早いだろ?」
「・・・そう、だね。」
シュウの言い分はもっともである。態々リスクのある守りを固めるよりも、相手の攻撃手段を奪ってしまえば済む話なのだ。
もしも、遥か格上と相対したとしよう。防戦一方の展開になるとすれば、ほぼ勝ち目は無いと言える。防御技があれば負けないかもしれないが、同時に勝ちも無い。相手が隙を見せるまで耐える、という使い方をするのかもしれないが、そんな隙を見せる者を遥か格上とは呼べないのだ。
「とりあえず、この技に関しては口頭で説明するよ。」
「え?」
てっきり実演するものだと思っていただけに、ユキは間の抜けた声を上げてしまう。だがそんなユキに構わず、シュウは耳打ちするのだった。
「・・・・・。」
「・・・え?そんな事?」
思わず聞き返すが、シュウは頷くだけであった。
「まぁ、言いたい事はあるだろうけど、以上が奥義に関してかな。」
「そう・・・。とりあえず理解したよ。」
「残るは終の太刀なんだけど・・・一応『神威』って名前になる。」
「神威・・・何かの漫画で読んだなぁ。神の威を狩る?それとも、神の威を代る?」
「はは・・・そこまで深い意味じゃないと思うよ?」
雪は晩年、本を読んで過ごしていた。専門書から、果ては漫画まで。その光景を思い出し、シュウは苦笑いを浮かべるのであった。
「終の太刀かぁ・・・拾の太刀じゃないのね?」
「そうみたいだね。オレも時々使うんだけど、オレの場合はなんちゃってだからさ。ユキが完成させたら見せて欲しいと思ってる。」
「どうせなら『見様見真似神威!』とか呼ぶべきじゃないかな!?」
「?・・・ゴメン、ちょっとわからない。」
恐らく漫画のフレーズなのだろうとは思ったが、漫画を読まなかったシュウには理解出来ない。素直に謝るシュウに、ユキは不満げに頬を膨らませるのであった。
ともあれ、あまり時間を掛けてもいられないと考え、シュウは刀を構える。
「ば、抜刀術じゃない!?」
「抜刀?あぁ、居合か。・・・何で自分から不利になる事をするんだよ。」
「間合いを悟らせないとか、鞘走りで太刀筋を加速させるとか溜めを作るとかあるでしょ!?」
剣術の奥義と言えばアレを想像したのだろう。興奮したユキが声を荒らげる。
「あのさぁ、終の太刀を使うのは、その技が適してる状況って事だよ?言い換えれば、終の太刀じゃなきゃ仕留められないって事。その前に散々刀を振り回してるんだから、間合いを悟らせないとかあり得ないでしょ?それに鞘走り?刀身が鞘に触れたら、鞘が割れるか刃が潰れるからね?」
「そんな・・・」
見も蓋も無い説明に、両手を地面に突いて項垂れるユキ。ハッキリ言って、漫画の見過ぎであった。この段階で、シュウは何の作品なのか思いつく。
「あ~、実写映画になった作品か。暗殺って意味だと、あながち間違ってもいないんだよな、アレ。」
「っ!?く、詳しく!」
「あ、あぁ。武士って言っても、常に刀を抜いてる訳じゃないよね?つまり、遅くても出会い頭に抜く訳だ。」
「うんうん!」
「その場合、相手よりも早く抜刀出来れば有利になるのはわかるよね?」
子供でもわかる質問に、ユキはコクコクと頷き返す。何故神崎流を継承するはずだったユキが詳細を把握していないのか。それは静が実戦しか教えなかった為である。
病弱な雪に、余分な体力など無い。だからこそ、基本となる技を教えておけば良いと判断したのだ。理論だとか知識なんてものは、後からでも学ぶ事は出来る。そう考えてすっ飛ばしたのだ。走り回れる貴重な時間を、人殺しの技に費やすのが忍びなかったのもあるが。
そんな雪とは対象的に、出来る限りの時間を使って叩き込まれたのが秀一である。ユキが覚悟したからこそ、シュウは一から説明しようと考えたのだ。
「不意打ちなら相手が刀に手を掛ける前にバッサリいけるだろうけど・・・まぁ、現実は相手もある程度まで刀を抜く訳だ。」
「それは・・・」
その光景が容易に想像出来てしまい、ユキは言葉を失う。シュウの喩えは地球の話。腐っても武士。天と地ほどの実力差でもない限り、相手が反応出来ずに斬られる事などまず無い。そうである以上、相手も刀に手を掛けるだろう。あとはスピードの差。どんな武士でも、数センチ或いは数十センチならば抜くかもしれない。
「抜刀術ってさ、ある程度は太刀筋が決まってるでしょ?もしも相手が半分抜いてたとしよう。それで斬れると思う?」
「・・・微妙かも。防がれる気がする。」
「オレもそう思う。だから不意打ちっていうか、暗殺向き。故に剣術じゃなくて抜刀術。そもそも抜刀術って相手よりも速く抜刀出来たら斬る、遅かったら受ける為に編み出されたと思う。」
「・・・だから神崎流には抜刀術が無いの?」
「そう。神崎流は剣術だから。最初から抜刀してるでしょ?納刀してるなら、まずは距離を取って刀を抜く訳だ。」
「ちょっとショックかも・・・。」
現実を叩きつけられ、ショックを受けた様子のユキ。そもそも、何故今までユキが知らなかったのかと言うと、漫画を読むようになったのが晩年だったからである。雪が剣術を学んでいた時、その漫画が無かったのだから。
晩年になって出会いはしたものの、その頃には刀を持つ事も無くなっていた為、深く気に留める事も無かったのだ。
「地球じゃ太刀筋が見えない事はあっても、体の動きまで見えない事はまず無いからね。正面切って死合う場合、例え初太刀でも抜刀術はあり得ないよ。」
「なら、この世界ならあり得るのよね?」
どうしても抜刀術を捨てられないユキが食い下がる。しかし、シュウから告げられるのは非情とも言える言葉だった。
「練習や格下相手なら構わないけど、本気で神崎流剣術を継ぐなら抜刀術からは離れた方が良いと思う。今じゃ驚異的な身体能力を誇る上に、魔力で強化すれば気付かれずに斬って納刀するのも不可能じゃない。ただ・・・そうする意味は無い。」
「か、カッコイイよね!?」
「カッコよければ斬れる?」
「・・・・・。」
ユキが沈黙したのは、答えがわからないからではない。充分過ぎる程理解出来たからである。カッコつける意味など無いのだ。例えどれ程醜い姿を晒そうとも、勝たなければならない。完成された武は美しいかもしれないが、それはカッコつけるような物とは異なる次元にある。
「オレは神崎の技を無理に押し付けようとは思わない。ユキがどうしても抜刀術に拘るのなら、自分の道を進んでもいいと思ってるから。」
「その場合、神崎の剣術はどうするの?」
「うん?そうだな・・・フィーナ辺りにでも聞いてみるさ。」
「っ!?」
神崎の跡取り、その妻に受け継がれる剣術。これまでの長い歴史と異なるのは、妻の人数が多いという事。ユキを最も愛しているが、だからと言って他の妻を蔑ろにしている訳ではない。誰でも良いとは思っていないが、望む者であれば教えるのも吝かではないと言っているのである。
当然ユキにも理解出来た事で、彼女は息を呑んだ。そう簡単には揺るがないと思っていた絶対的優位。実は非情に危うい綱渡りであると再認識したのだった。
「抜刀術には執着してないからいいの!それより今は終の太刀よ!!」
「そうなの?まぁいいけど。」
何となく腑に落ちない様子のシュウではあったが、あまり時間も掛けられないと再び刀を構える。
「なんちゃってだから奥義程の技じゃないんだけど、これが終の太刀『神威』だ!」
「っ!?」
シュウが繰り出した技に目を見開くユキ。驚いてはいるものの、その目はシュウの動きを余すこと無く捉えていた。そんな彼女は神崎流の全てを知り、驚愕と共にある事実に思い至る。
(これはひょっとして・・・)
そんなユキの様子に気付いたのか、シュウが問い掛ける。
「何か気付いた?」
「え?うん・・・確証は無いけど、シュウ君には難しい技だと思う。ううん、シュウ君には合ってないって言った方がいいかな?」
「合ってない?」
「そう。多分だけど神崎の剣術、私の背丈でギリギリなんだと思うよ?」
「背丈?」
ユキの言葉に、シュウは思わず首を傾げる。
「シュウ君の身長だと、刀身も長くなるでしょ?高い身体能力で同じように動けても、移動距離は伸びる訳で。技の1つ1つは大差無く繰り出せるかもしれない。でも連続した動きとなると・・・」
「僅かな誤差が積もり積もって、最終的に破綻するって事か。」
「そう。だからしっかりと準備して使う事は出来ても、実戦となると上手く繋がらないんじゃないかな?」
「なるほど・・・昔の人は小柄だった。だが徐々に平均身長が伸びたせいで、徐々に神崎の技が合わなくなっていった、と。」
「うん。私も小柄とは言えないけど、ギリギリ許容範囲内だったんだと思う。で、自然と導き出された結論が『女性に継承させる』」
「・・・確証は無いけど納得だな。」
ユキの推測、当然の如く的を得ていた。実際には、身長が高ければリーチは伸びる。筋力量も多くなる為、戦闘においては有利に働くだろう。しかし剣術とは本来、刃と刃を合わせるものではないのだ。少なくとも神崎流においては顕著である。
150センチ前後の身長で、スピードを活かして相手の懐に潜り込む。その上で一刀のもとに斬り伏せるのが理想の剣術。そういった考えに基づいて完成したのが神崎流だった。
一方のシュウは30センチ以上大きい。自分に合わせた刀は想定よりも長く、無意識の内に腕力へと頼った戦い方をする事もあった。自分に見合った剣術を模索していれば話は違ったのだが、それを指摘する者がいなかったのである。
当然祖母である静は気付いていたが、彼女は見て見ぬ振りをした。只でさえ神崎家の男性後継者は直接的な武術を修めている。それ以上の武力は手に余ると判断したのだ。必ずしも聖人君子の子が聖人君子となるとは限らない。抑止力たる為に妻を迎え入れる側面もあったのだから。
だがユキは誰よりもシュウを信頼している。だからこそ正直に告げたのだが、シュウは予想外の考えを口にする。
「神崎の剣術、シュウ君には合わないけど・・・どうするの?」
「そうだなぁ・・・丁度いい機会だし、剣術はユキに任せてオレは別の道を選ぶよ。」
「別の道?」
「前々から考えてたんだ。誰かが継いでくれたら、オレは刀を置こうって。」
「じゃあ、ロングソードとか?」
「いや。料理人らしく、包丁にしようと思う。」
「は?・・・え?」
一瞬聞き間違いかと思ったユキだったが、自信満々のシュウを見てその考えを振り払う。その上で理解が追い付かず、もう一度聞き返すのであった。
「防御なのに?」
「あぁ。守るよりも攻撃した方が手っ取り早いだろ?」
「・・・そう、だね。」
シュウの言い分はもっともである。態々リスクのある守りを固めるよりも、相手の攻撃手段を奪ってしまえば済む話なのだ。
もしも、遥か格上と相対したとしよう。防戦一方の展開になるとすれば、ほぼ勝ち目は無いと言える。防御技があれば負けないかもしれないが、同時に勝ちも無い。相手が隙を見せるまで耐える、という使い方をするのかもしれないが、そんな隙を見せる者を遥か格上とは呼べないのだ。
「とりあえず、この技に関しては口頭で説明するよ。」
「え?」
てっきり実演するものだと思っていただけに、ユキは間の抜けた声を上げてしまう。だがそんなユキに構わず、シュウは耳打ちするのだった。
「・・・・・。」
「・・・え?そんな事?」
思わず聞き返すが、シュウは頷くだけであった。
「まぁ、言いたい事はあるだろうけど、以上が奥義に関してかな。」
「そう・・・。とりあえず理解したよ。」
「残るは終の太刀なんだけど・・・一応『神威』って名前になる。」
「神威・・・何かの漫画で読んだなぁ。神の威を狩る?それとも、神の威を代る?」
「はは・・・そこまで深い意味じゃないと思うよ?」
雪は晩年、本を読んで過ごしていた。専門書から、果ては漫画まで。その光景を思い出し、シュウは苦笑いを浮かべるのであった。
「終の太刀かぁ・・・拾の太刀じゃないのね?」
「そうみたいだね。オレも時々使うんだけど、オレの場合はなんちゃってだからさ。ユキが完成させたら見せて欲しいと思ってる。」
「どうせなら『見様見真似神威!』とか呼ぶべきじゃないかな!?」
「?・・・ゴメン、ちょっとわからない。」
恐らく漫画のフレーズなのだろうとは思ったが、漫画を読まなかったシュウには理解出来ない。素直に謝るシュウに、ユキは不満げに頬を膨らませるのであった。
ともあれ、あまり時間を掛けてもいられないと考え、シュウは刀を構える。
「ば、抜刀術じゃない!?」
「抜刀?あぁ、居合か。・・・何で自分から不利になる事をするんだよ。」
「間合いを悟らせないとか、鞘走りで太刀筋を加速させるとか溜めを作るとかあるでしょ!?」
剣術の奥義と言えばアレを想像したのだろう。興奮したユキが声を荒らげる。
「あのさぁ、終の太刀を使うのは、その技が適してる状況って事だよ?言い換えれば、終の太刀じゃなきゃ仕留められないって事。その前に散々刀を振り回してるんだから、間合いを悟らせないとかあり得ないでしょ?それに鞘走り?刀身が鞘に触れたら、鞘が割れるか刃が潰れるからね?」
「そんな・・・」
見も蓋も無い説明に、両手を地面に突いて項垂れるユキ。ハッキリ言って、漫画の見過ぎであった。この段階で、シュウは何の作品なのか思いつく。
「あ~、実写映画になった作品か。暗殺って意味だと、あながち間違ってもいないんだよな、アレ。」
「っ!?く、詳しく!」
「あ、あぁ。武士って言っても、常に刀を抜いてる訳じゃないよね?つまり、遅くても出会い頭に抜く訳だ。」
「うんうん!」
「その場合、相手よりも早く抜刀出来れば有利になるのはわかるよね?」
子供でもわかる質問に、ユキはコクコクと頷き返す。何故神崎流を継承するはずだったユキが詳細を把握していないのか。それは静が実戦しか教えなかった為である。
病弱な雪に、余分な体力など無い。だからこそ、基本となる技を教えておけば良いと判断したのだ。理論だとか知識なんてものは、後からでも学ぶ事は出来る。そう考えてすっ飛ばしたのだ。走り回れる貴重な時間を、人殺しの技に費やすのが忍びなかったのもあるが。
そんな雪とは対象的に、出来る限りの時間を使って叩き込まれたのが秀一である。ユキが覚悟したからこそ、シュウは一から説明しようと考えたのだ。
「不意打ちなら相手が刀に手を掛ける前にバッサリいけるだろうけど・・・まぁ、現実は相手もある程度まで刀を抜く訳だ。」
「それは・・・」
その光景が容易に想像出来てしまい、ユキは言葉を失う。シュウの喩えは地球の話。腐っても武士。天と地ほどの実力差でもない限り、相手が反応出来ずに斬られる事などまず無い。そうである以上、相手も刀に手を掛けるだろう。あとはスピードの差。どんな武士でも、数センチ或いは数十センチならば抜くかもしれない。
「抜刀術ってさ、ある程度は太刀筋が決まってるでしょ?もしも相手が半分抜いてたとしよう。それで斬れると思う?」
「・・・微妙かも。防がれる気がする。」
「オレもそう思う。だから不意打ちっていうか、暗殺向き。故に剣術じゃなくて抜刀術。そもそも抜刀術って相手よりも速く抜刀出来たら斬る、遅かったら受ける為に編み出されたと思う。」
「・・・だから神崎流には抜刀術が無いの?」
「そう。神崎流は剣術だから。最初から抜刀してるでしょ?納刀してるなら、まずは距離を取って刀を抜く訳だ。」
「ちょっとショックかも・・・。」
現実を叩きつけられ、ショックを受けた様子のユキ。そもそも、何故今までユキが知らなかったのかと言うと、漫画を読むようになったのが晩年だったからである。雪が剣術を学んでいた時、その漫画が無かったのだから。
晩年になって出会いはしたものの、その頃には刀を持つ事も無くなっていた為、深く気に留める事も無かったのだ。
「地球じゃ太刀筋が見えない事はあっても、体の動きまで見えない事はまず無いからね。正面切って死合う場合、例え初太刀でも抜刀術はあり得ないよ。」
「なら、この世界ならあり得るのよね?」
どうしても抜刀術を捨てられないユキが食い下がる。しかし、シュウから告げられるのは非情とも言える言葉だった。
「練習や格下相手なら構わないけど、本気で神崎流剣術を継ぐなら抜刀術からは離れた方が良いと思う。今じゃ驚異的な身体能力を誇る上に、魔力で強化すれば気付かれずに斬って納刀するのも不可能じゃない。ただ・・・そうする意味は無い。」
「か、カッコイイよね!?」
「カッコよければ斬れる?」
「・・・・・。」
ユキが沈黙したのは、答えがわからないからではない。充分過ぎる程理解出来たからである。カッコつける意味など無いのだ。例えどれ程醜い姿を晒そうとも、勝たなければならない。完成された武は美しいかもしれないが、それはカッコつけるような物とは異なる次元にある。
「オレは神崎の技を無理に押し付けようとは思わない。ユキがどうしても抜刀術に拘るのなら、自分の道を進んでもいいと思ってるから。」
「その場合、神崎の剣術はどうするの?」
「うん?そうだな・・・フィーナ辺りにでも聞いてみるさ。」
「っ!?」
神崎の跡取り、その妻に受け継がれる剣術。これまでの長い歴史と異なるのは、妻の人数が多いという事。ユキを最も愛しているが、だからと言って他の妻を蔑ろにしている訳ではない。誰でも良いとは思っていないが、望む者であれば教えるのも吝かではないと言っているのである。
当然ユキにも理解出来た事で、彼女は息を呑んだ。そう簡単には揺るがないと思っていた絶対的優位。実は非情に危うい綱渡りであると再認識したのだった。
「抜刀術には執着してないからいいの!それより今は終の太刀よ!!」
「そうなの?まぁいいけど。」
何となく腑に落ちない様子のシュウではあったが、あまり時間も掛けられないと再び刀を構える。
「なんちゃってだから奥義程の技じゃないんだけど、これが終の太刀『神威』だ!」
「っ!?」
シュウが繰り出した技に目を見開くユキ。驚いてはいるものの、その目はシュウの動きを余すこと無く捉えていた。そんな彼女は神崎流の全てを知り、驚愕と共にある事実に思い至る。
(これはひょっとして・・・)
そんなユキの様子に気付いたのか、シュウが問い掛ける。
「何か気付いた?」
「え?うん・・・確証は無いけど、シュウ君には難しい技だと思う。ううん、シュウ君には合ってないって言った方がいいかな?」
「合ってない?」
「そう。多分だけど神崎の剣術、私の背丈でギリギリなんだと思うよ?」
「背丈?」
ユキの言葉に、シュウは思わず首を傾げる。
「シュウ君の身長だと、刀身も長くなるでしょ?高い身体能力で同じように動けても、移動距離は伸びる訳で。技の1つ1つは大差無く繰り出せるかもしれない。でも連続した動きとなると・・・」
「僅かな誤差が積もり積もって、最終的に破綻するって事か。」
「そう。だからしっかりと準備して使う事は出来ても、実戦となると上手く繋がらないんじゃないかな?」
「なるほど・・・昔の人は小柄だった。だが徐々に平均身長が伸びたせいで、徐々に神崎の技が合わなくなっていった、と。」
「うん。私も小柄とは言えないけど、ギリギリ許容範囲内だったんだと思う。で、自然と導き出された結論が『女性に継承させる』」
「・・・確証は無いけど納得だな。」
ユキの推測、当然の如く的を得ていた。実際には、身長が高ければリーチは伸びる。筋力量も多くなる為、戦闘においては有利に働くだろう。しかし剣術とは本来、刃と刃を合わせるものではないのだ。少なくとも神崎流においては顕著である。
150センチ前後の身長で、スピードを活かして相手の懐に潜り込む。その上で一刀のもとに斬り伏せるのが理想の剣術。そういった考えに基づいて完成したのが神崎流だった。
一方のシュウは30センチ以上大きい。自分に合わせた刀は想定よりも長く、無意識の内に腕力へと頼った戦い方をする事もあった。自分に見合った剣術を模索していれば話は違ったのだが、それを指摘する者がいなかったのである。
当然祖母である静は気付いていたが、彼女は見て見ぬ振りをした。只でさえ神崎家の男性後継者は直接的な武術を修めている。それ以上の武力は手に余ると判断したのだ。必ずしも聖人君子の子が聖人君子となるとは限らない。抑止力たる為に妻を迎え入れる側面もあったのだから。
だがユキは誰よりもシュウを信頼している。だからこそ正直に告げたのだが、シュウは予想外の考えを口にする。
「神崎の剣術、シュウ君には合わないけど・・・どうするの?」
「そうだなぁ・・・丁度いい機会だし、剣術はユキに任せてオレは別の道を選ぶよ。」
「別の道?」
「前々から考えてたんだ。誰かが継いでくれたら、オレは刀を置こうって。」
「じゃあ、ロングソードとか?」
「いや。料理人らしく、包丁にしようと思う。」
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