弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり

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《過去》 親達の思惑

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 スライストの父公爵セサミは、女性に興味を示さない彼のことを心配するものの、政略結婚をさせる気はなかった。
 
 仕事で家を空けることが多かったセサミが、妻に離縁されていたからだ。
 外務大臣である彼の仕事は多岐にわたっており、すぐには片付かないものが多い。その内容は国家間の和平(他国との平和協定や条約の締結、移民の受け入れ体制の調整など)・交易・行き来する海や陸路の山賊や海賊の対処などで多忙を極めていた。

 結婚前には「勿論理解しておりますわ」と言って微笑んでいた妻はあまりの放置振りに、「もう耐えられません。実家に帰らせていただきます」と離縁になった。
 政略で結ばれた結婚生活なのに、夢でも見ていたのだろう。夫に愛されずパーティーにも二人で参加できないと嘆く彼女は、明らかにこの場所に相応しい者ではなかった。


 公爵夫人になったのは、ただ美しい容姿の男と彼の地位が欲しかっただけ。もしくは家の方針に逆らえなかった為だろう。
 当然のように妻の生家は離縁に反対し、彼に謝罪を繰り返したが、当の本人が泣き喚く惨事で離縁が成立した。



 どちらかと言えば、分かり切っていた生活に不満を抱く妻有責の離縁だが、スライストを産んでくれた功績もある為、特に彼女の生家には圧をかけることもなく、手切れ金として多めの慰謝料を渡すことにしたセサミ。

 その資金があれば、次に嫁ぐ際の持参金には十分だろう。

 この家の状況に耐えられない妻を選び、引き合わせた彼の父前公爵と、不適正この上ない彼女を妻にと送り込んできた父侯爵に貸しを作ったと思えば、気分は少し軽くなる。
 今後婚姻に口を挟んでくることは、多くないだろう。見る目がないと証明されたのだから。




 その後彼は再婚することなく、一人息子を公爵にすべく育て上げた。
 公爵夫人になりたい令嬢が群がり、釣書がうずたかく積まれてもセサミはかわし続ける。

「女性より領地の方が大事なので」

 彼の趣味は豚の交配実験だった。
 自身が親にそうされたように、彼自らで美味しい豚を作ることを目的としたものだ。

 あくまでも美味しい豚を作り上げ、領地を富ますことが目的だが、彼は人の代わりに豚にその可能性を見ることに喜びを覚えていた。

「フフッ。人間など言うことを聞かないものより、彼らの方がよっぽど従順だ。けっして主を裏切らないのだから」

 仄暗い思考は隠しながら、周囲には完璧な人間のように見られる彼は割合と幸福だった。
 子豚には可愛いく癒され、成長して出荷されるのを悲しむほどに、たくさんの愛を注いでいた。



 そんな彼は全てを知った上で、悪い顔をしてミカヌレを嫁に迎えたのだ。

「スライストが、自らで選んだ妻のお手並みを拝見しよう」




 一方では宰相フォカッチャーは、嫡男ベグルに高位貴族の令嬢を娶らせて、次期宰相の座を磐石なものにしようと画策していた。

「ワッサンモフ公爵の息子の後ろ楯は、ないと同義だ。ベグルの妻には力のある貴族を迎えれば、自ずと地位は揺らがなくなるだろう」

 ほくそ笑むフォカッチャーだが、婚前調査でベグルに重大な欠陥が見つかった。 「恐らく、幼い時の流行り病の時に生じた高熱で、子種が殆ど(壊滅的に)ないようです」と言う医師の診断内容。
 そのせいもあり、今まで多くの女性と付き合っても妊娠させることがなかったようだ。

 自分の顔によく似た嫡男を可愛がっていたフォカッチャーは、彼をあっさり見捨て次男であるメローを次期後継に指名した。

 ベグルは二重の意味で、苦しむことになるのだった。






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