弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり

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ルチーズの教え その1

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 コロネを幼い時から導いてくれた教師は、ルチーズ・ラフレスシア伯爵令嬢だ。

 本来なら彼女の身分はルチーズ・マリーナ侯爵令嬢となるはずだったが、母であるクリーミーが嫁ぎ先から追い出されたことで、ラフレスシアの姓に戻ったのである。

 その理由は、クリーミーの夫であるパワブルが病死したことで、パワブルの妹夫婦が侯爵家を継ぎたいと、義両親に訴えたことで始まる。

 クリーミーと義両親前侯爵夫妻との仲は良好であり、既に4歳になるルチーズがいる為、マリーナ侯爵家を継ぐのは我が子だと信じていた彼女。

 だがそれは、簡単に覆ることになる。

 そもそもパワブルの妹アーリオは、ブリズ伯爵家の次男ピマンに嫁入りしていた。爵位は領地のない男爵位を何とか貰い受け、ブリズ伯爵家の執務を補佐する形で生計を立てていた。
 その時点で王宮にも仕えることもできず、騎士でもない、優秀ではないことがうっすらと分かるだろう。
 
 優秀な嫡男のパワブルと才女のクリーミーが結婚し、マリーナ侯爵家は安泰のはずだった。けれど頼りにしていたその嫡男パワブルが早世してしまった前侯爵夫妻。

 悲しみに耽ることは罪ではないが、前侯爵は判断を誤ってしまう。健気に励ましてくれる娘アーリオの言葉に、深く傾倒してしまったのだから。


「クリーミーお義姉様は確かに優秀ですが、少し冷静過ぎますわ。まるでお兄様なんて愛していなかったみたいに。私ならこんな時に仕事なんか手につきませんわ。……お父様もお母様もお可哀想に」

 その言葉の後には「こんな嫁を持って」と聞こえる。
 嫁は侯爵夫人の地位だけが大事で、息子などどうでもいい存在だったのかと、魔が差し疑うことになる。今まで築いてきた絆も、簡単にほどけてしまうほどに。

「残されたクリーミーの私がマリーナ侯爵家を支え、ルチーズを育てていかなければ」と奮闘する気持ちを理解しては貰えないまま、「冷たい嫁はいらないわ。私達にはアーリオがいるもの」と、婚家を追われたのだった。


「ねえ、お母さま。お祖父さまとお祖母さまは、もうルチーズのことを嫌いになったの? 私はもうあの家に行けないの? お父さまの部屋にも入れないの? うえ~ん、悲しいよぉ、お母さまぁ」
「ごめんなさい、ルチーズ。お母様が誤解されたせいなの。貴女は悪くないの。ごめんなさい、ごめんなさい、あぁ」

 まだまだパワブルの死が辛いのに、素直に悲しむことさえ許されない母子は、抱きあって慟哭する。

 政敵結婚ではあったがクリーミーはパワブルを尊敬し、深く愛していた。だからこそ尚更辛く、義両親に信じて貰えないことが惨めだった。

 ルチーズは優しく微笑む父親が、「おいで、僕の愛しい子」と抱きしめてくれる逞しい腕の中が、世界で一番好きだった。それなのにその思い出ごと貶されたのだ。祖父母達の冷たい態度のせいで。


 このことはクリーミーとルチーズの深い傷となり、ラフレスシア伯爵家、並びに親族をも敵にまわす事態となった。

「許さんぞ、マリーナ侯爵家。もう2人から何も奪わせはしない!」
「勿論ですわ、旦那様我が夫。私も怒っておりますもの」


 ラフレスシア伯爵家は王太子と王太子妃教育も手掛ける、王家との縁故が深い間柄だ。それは前侯爵夫妻も分かっていたはずなのに。


 アーリオに唆され感情にままに、クリーミーへの慰謝料やルチーズの養育費と継承権も放棄する書類にサインをさせ、裸同然に彼女達を追い出した前侯爵夫妻。

 ここで彼らとの縁は完全に切れた。



 後に冷静となっても、完全に後の祭り。




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