104 / 125
恋愛編
103
しおりを挟む
太陽が真上に上る少し前の、まだ比較的涼しい時間帯
俺とセシリアは朝に決めた通り、数人の護衛騎士とメイドを連れて湖の周りの森にやってきた
森特有の自然の薫りをすーっと吸い込んで深呼吸をしたセシリアが、俺にふわりと笑顔を向ける
「いい天気ですねぇ」
「あぁ、そうだな」
「水辺のせいか涼しくて気候もちょうどいいですし、とてもいい気持ちです
ずっとここにいたいくらい…」
呟くようにそう言って、木々の間から漏れる日の光を眩しそうに見つめた
囀ずる鳥や野に咲く小さな花を見つけるたびに柔らかい微笑みを浮かべ、側によって穏やかに観察している
森の散策を楽しんでいる様子の彼女に、俺はほっと息をついた
よかった
昨日と今日の反応から考えて、この離宮に来た最大の目的
《彼女を楽しませ、喜ばせたい》というものは達成したと思っていいだろう
そして、第二の目的
《彼女と俺の距離を縮める》というものも、今のところ順調だと思ってもいいのではないだろうか
あとは最後の目的…というか目標であり、最大の難関
《彼女と腕を組む》さえ達成でにれば完璧なのだ
問題はどうやって腕を組むかだ
彼女の性格から考えて、ローズマリーのように自分から積極的に来てくれることはまずないだろう
ならば俺から誘わなければならないのだが…
はたして俺にそんなことが出来るのか
何かきっかけでもあればいいんだが…
そんなことを考えつつ目的地の広場に向かって森を進む
チャンスを伺うように隣を歩くセシリアを横目でみやると、同時に彼女が小さく声を上げた
「ぁっ!」
「!」
ぐらりと彼女の体が傾ぐ
どうやら地面から飛び出ていた木の根に足をとられたらしい
後ろからついてきていた護衛の騎士達が動くよりも早く、咄嗟に手を伸ばして彼女を抱き止めた
「…大丈夫か?」
「ぁ…はい…
申し訳ございません」
支えたまま体制を整えてやると、セシリアはすぐに離れて頭を下げる
「殿下こそお怪我はございませんか?」
「あぁ、大丈夫だ
だが、そうか。女性が歩くには少し足元が悪い場所だったな…」
言いつつ、ハッとした
もしかしてこれは俺が伺っていたチャンスなのでは…!?
そうと気づいたなら誘わなければ!
「…」
おい、何をしている
せっかくのチャンスだ
支えるという名目で腕を組めばいいじゃないか!
頭の中で自分が喚いている声が聞こえる
わかっている
わかっているんだ
だが、緊張してしまって言葉が出てこないのだ
「…?」
黙ってしまった俺をセシリアが不思議そうに見つめている
「…」
言葉を探して彼女から目をそらすと、後ろにいた騎士達が視界に入った
手をパタパタと動かして何か俺に伝えようとしているようだ
なんなんだ?俺は今忙しいんだ
…ん?待てよ
…ジェスチャー…
…それならできる!
ハッと気がついてセシリアに向かって腕を付き出した
「…?」
首をかしげるセシリア
「…捕まれ
足元が悪い。手でエスコートするより腕に捕まった方が安定するだろう」
勢いのままにそう言えば、彼女は一瞬目を瞬く
「…ぇっと、ありがとうございます
…では、失礼して…」
そう告げて彼女の手が俺の腕にかかる
俺はそれに満足し、再び歩き始めた
俺とセシリアは朝に決めた通り、数人の護衛騎士とメイドを連れて湖の周りの森にやってきた
森特有の自然の薫りをすーっと吸い込んで深呼吸をしたセシリアが、俺にふわりと笑顔を向ける
「いい天気ですねぇ」
「あぁ、そうだな」
「水辺のせいか涼しくて気候もちょうどいいですし、とてもいい気持ちです
ずっとここにいたいくらい…」
呟くようにそう言って、木々の間から漏れる日の光を眩しそうに見つめた
囀ずる鳥や野に咲く小さな花を見つけるたびに柔らかい微笑みを浮かべ、側によって穏やかに観察している
森の散策を楽しんでいる様子の彼女に、俺はほっと息をついた
よかった
昨日と今日の反応から考えて、この離宮に来た最大の目的
《彼女を楽しませ、喜ばせたい》というものは達成したと思っていいだろう
そして、第二の目的
《彼女と俺の距離を縮める》というものも、今のところ順調だと思ってもいいのではないだろうか
あとは最後の目的…というか目標であり、最大の難関
《彼女と腕を組む》さえ達成でにれば完璧なのだ
問題はどうやって腕を組むかだ
彼女の性格から考えて、ローズマリーのように自分から積極的に来てくれることはまずないだろう
ならば俺から誘わなければならないのだが…
はたして俺にそんなことが出来るのか
何かきっかけでもあればいいんだが…
そんなことを考えつつ目的地の広場に向かって森を進む
チャンスを伺うように隣を歩くセシリアを横目でみやると、同時に彼女が小さく声を上げた
「ぁっ!」
「!」
ぐらりと彼女の体が傾ぐ
どうやら地面から飛び出ていた木の根に足をとられたらしい
後ろからついてきていた護衛の騎士達が動くよりも早く、咄嗟に手を伸ばして彼女を抱き止めた
「…大丈夫か?」
「ぁ…はい…
申し訳ございません」
支えたまま体制を整えてやると、セシリアはすぐに離れて頭を下げる
「殿下こそお怪我はございませんか?」
「あぁ、大丈夫だ
だが、そうか。女性が歩くには少し足元が悪い場所だったな…」
言いつつ、ハッとした
もしかしてこれは俺が伺っていたチャンスなのでは…!?
そうと気づいたなら誘わなければ!
「…」
おい、何をしている
せっかくのチャンスだ
支えるという名目で腕を組めばいいじゃないか!
頭の中で自分が喚いている声が聞こえる
わかっている
わかっているんだ
だが、緊張してしまって言葉が出てこないのだ
「…?」
黙ってしまった俺をセシリアが不思議そうに見つめている
「…」
言葉を探して彼女から目をそらすと、後ろにいた騎士達が視界に入った
手をパタパタと動かして何か俺に伝えようとしているようだ
なんなんだ?俺は今忙しいんだ
…ん?待てよ
…ジェスチャー…
…それならできる!
ハッと気がついてセシリアに向かって腕を付き出した
「…?」
首をかしげるセシリア
「…捕まれ
足元が悪い。手でエスコートするより腕に捕まった方が安定するだろう」
勢いのままにそう言えば、彼女は一瞬目を瞬く
「…ぇっと、ありがとうございます
…では、失礼して…」
そう告げて彼女の手が俺の腕にかかる
俺はそれに満足し、再び歩き始めた
25
あなたにおすすめの小説
無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。
木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。
本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。
しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。
特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。
せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。
そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。
幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。
こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。
※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした
Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。
同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。
さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、
婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった……
とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。
それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、
婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく……
※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』
に出てくる主人公の友人の話です。
そちらを読んでいなくても問題ありません。
戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました
志熊みゅう
恋愛
十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。
卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。
マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。
その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。
――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。
彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。
断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜
まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。
【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。
三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。
目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。
私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。
ムーンライトノベルズにも投稿しています。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる