【完結】ブレイクスルートゥルー

笹川リュウ

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 特殊能力保護協会に属するために、土岐透琉は事故で死亡したことになった。
 寿美子は悲しむだろうし、将司も何か思うところはあるかもしれないが、透琉がそれを知る術はもうない。二度と土岐家に返されることはないからだ。
 土岐透琉はこの世からいなくなった。
 戸籍も、名前も、経歴もすべて失った。
 名前はまだ決まっていない。
 本来ならトクノウから言い渡された名に強制的に決まるものらしいが、御門の計らいで猶予をもらっているのだ。

 トクノウの本部は、高層ビルが立ち並ぶオフィス街のさらに奥まった場所にあった。
 六階建てのコンクリート打ちのビルは、どこにでもある一般的な建物だ。表向きは防衛省の支部だが、トクノウが管理しているらしい。
 トレーニング施設なども兼ね備えているため、当分はここに通うことになっている。

「二人ともおはよう。さあ、早速お披露目と行こうじゃないか」
 局長室のソファーに腰かけ、御門と向かい合う新多は少し緊張している。
「反対されても変えるつもりはねぇから」
「もお~なぁんで反対する前提なの? お父ちゃんが新多のいうこと聞かずにデート邪魔しに行ったことまだ怒ってんのか?」
「ああそうだよ、このチョビ髭オヤジ」
「と、とにかく確認してもらおうよ! 規則上難しいかもしれないし、その時は新多君がもう一度考えてくれるんだろう?」
「うん……」
 差し出された紙を受け取った御門は、ある程度予測していたのか、さして驚いてはいなかった。
 そして自慢の顎髭を触り、ふっと口角を上げた。
 御門の様子を見た新多は、自信満々で名を呼ぶ。
とおる岡崎徹おかざきとおる。これからは自分の気持ちを貫いて、自由に生きていけるようにっていう俺の希望を込めた名前」
 読み方は元の名前と同じだ。

 新多は、名付けに悩んでいた。
 そんな中、これまで何度も呼ばれた〝とおる〟という響きが消えてしまうのは、少し寂しい、とこぼすと、新多は紙に徹と書き綴った。
 岡崎という名字になったこと、とおるという愛されなかった名前を新多は自分以上に愛してくれていたことがわかって、徹は胸を打たれた。
 御門は眉を下げて二度ほど深く頷いた。
「まあ、いいんじゃないか。他にも元の名前の一部を使ってるやつはいるし」
「ありがとうございます!」
「良かったな、徹! とーおーる!」
 新多に肩を抱かれ、新しい人生の門出を祝福される。
「これで今日から岡崎徹もトクノウの一員だ。よろしく頼むよ」
「はい! よろしくお願いいたします!」
「戦闘訓練は、来週からスタートだから、今のうちにゆっくり療養しておくように」
「だああ! 俺はまだ徹が戦闘班になるのは認めてねぇからな!」
「おっ、かっこいいね彼氏! やんややんや」
 戦闘班に配属されるのは、訓練を積んでからだ。
 徹自身は受け入れているが、新多は徹が戦闘班に配属されることを未だに納得していないので、親子喧嘩は続いているようだ。

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