薬師だからってポイ捨てされました!2 ~俺って実は付与も出来るんだよね~

黄色いひよこ

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夜行馬車に乗ってみた

魔馬が引く馬車は馬車に非ず

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 何分経っただろうか。
 魔獣列車が意外と早い事に一頻り感動したタイミングで、扉をノックする音を確認した。

 「どうぞ」の言葉に扉が引かれ、

 「失礼します。切符を拝見致します」

  と言いながら、執事が着るスーツとはまた違う、何なら詰め襟に金ボタン(勿論本物では無いだろう)、膝まである長さのコート仕様(兼用か?)の上着に黒のスラックス、と黒い靴、そして帽子。

 おい、コレはわざとか。知っててやってる訳じゃないわな。けど、此処には転移者、転生者が居ない訳じゃ無いもんな。まさかなぁ。わざとじゃ無いんだろうけど、体型も一致するんだよなぁ、とある鉄道の車掌さんと(師匠の息子と小さい頃に一緒に読んだ『『漫画』の車掌さんにそっくりなんだよな~)。
 師匠の家と、その奥さん(姉さん)の実家、つまり俺の実家でもあるんだけど、転移者の(師匠の関係者限定)溜まり場だったから、彼等の知る世界や管轄下に有る世界の物や知識が家限定で腐る程有るんだよねぇ。その知識に俺もずっぷりとはまり込んでいたから、まぁ、この反応が出来る訳だけど。
 これで車掌さんの顔が真っ黒で解らなかったらと心配になったけど……、うん、丸顔ぽっちゃりの人間でした。

「はい、切符を拝見致します。終点キシャまでの乗車ですね」

 そう言って切符を確認する車掌さんを何気なしにぼーっと見ていると、彼がすっと手を出した。ん?なんだ?
 彼の行動に疑問を持って見ると、切符を差し出している。

 「お客様、切符をお返し致します」

 あぁ、切符の返却ね。俺は納得してそれを受け取る。車掌さんは一礼をして「良い列車の旅を」と言って、そっと扉を閉め去って行った。やっぱ、虚像と現実は違うか。見事に事務的対応だった。
 ふぅ…と、息を吐く。

 「ま、現実ってのはこんなもんか……」

 別段交流を期待した訳では無いが、つかず離れずのあの間柄には少し憧れる。そんな気持ちの楽しみくらい無いと郷愁にかられてしまうんだよね。

 考えても仕方が無いのにな。

さて、気を取り直して車内探検とでも洒落込もうかな?この車両には実は、客車意外に食堂車と展望室が有るんだ。食堂車は勿論飯を食う所なんだが、夜になるとバーになって大人の社交場へと早変わりする。
  俺はあまり社交には興味ないけど。でも、景色を眺めるのは好きだから展望室は興味有る。車窓しゃそうでも良いんだけどね。

 まぁ、そう言う訳で(どう言う訳だよ)展望室へ足を踏み入れた訳だけど、コレがまぁ、すごかった。この列車の目玉にする筈だよ。其処に入るなり左右に広がるパノラマ。天井から床スレスレまで硝子張りの車内に面食らった。この世界にこんな物作る技術なんかあったんだと真底驚く。

 魔獣列車はどうやら街中を出たのか、緑疎らな荒野を直走る。速度は通常の馬車より断然速い。規則正しく並ぶ列車の先頭車両がちらりと見えるのは、
線路が緩やかなカーブを描いているからなのだろう。   
 う~ん、見渡す限り荒野で、目視出来る範囲総て荒野でしかない。何か、この展望車必要なのかね。人が誰も来てない理由、何か解った気がする。俺は浅く息を付くと、

 「部屋に戻るか……」

 そう独り呟いて部屋へと踵を返した。

 だが、だ、それこそ想定外の事が此処で起こった。
 
 「キィヨエエエェェェ~~~」

 決して紙装甲では無い魔獣列車の中にまで、鉄を擦る甲高く轟く鳴き声が車内に響く。

 「何だよ、一体」

 つんざくような鳴き声に鼓膜が震え、思わず両手で耳を塞ぐ。独り呟いた言葉の根も乾かぬうちに、鳴き声の正体の確認が取れた。

 「黒禽こっきん……、何であんなもんがこんなとこに……?」

 この地方には居る筈の無い猛禽類に分類される怪鳥。勿論コレも魔獣だ。
それが列車の真上を飛行している。

 「何かを読んでいる?」

 魔獣列車に平行に飛ぶ姿は、列車がカーブを描けばそれに従って一緒に曲る。それがどうしたって言えば、餌を狙って同時に動く動物の動きと同じと言う訳で……。マジかよ。そうポロリと言葉が口からこぼれていた。
 あ、そうそう。この黒禽と言う鳥、その姿は黒く、脚が1本・・しかない、まさしく『八咫烏1本足のカラス』が実体化したのが、今まさに空を飛んでる魔獣だった。

 その時、俺が居る展望車に向けて黒禽が低空飛行で突っ込んで来た。思わず身構える。それとほぼ同時に隣の車両と繋がる扉がガラリと開いた。

 ガガッ、ガンッ!!

黒禽の脚が何かに当たり、火花のような光が散る。

 「大丈夫ですか?お客様」

 大丈夫じゃねぇ!

 俺は喉元までその言葉が飛び出しそうになったが、姿を現した車掌の、のほほんとした口調に思わず言葉を飲み込んだ。

 

 


                                                                                                                                                                                                  
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