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第五章
第五章 第七話
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「すまん、先に行っててくれ」
俺は秀達にそう声を掛けると女性の跡を追った。
「あの、すみません」
俺は女性に声を掛けた。
「はい?」
「俺、覚えてますか? 神社で会った」
「ああ」
「よかったら連絡先、教えてもらえませんか?」
「どうして?」
「妖奇征討軍とトラブりそうなんです。あの二人にうちの猫が狙われてて……」
「そう。そういうことなら」
女性は連絡先を教えてくれた。
「あいつらが何か仕出かしたら遠慮なく連絡して」
「有難うございます」
俺は礼を言って頭を下げた。
連絡先には小林麗花と書かれていた。
根岸の寺には既に白狐が来ていた。
高樹が天狗に翼の事を相談している間、俺は白狐に矢の事を話した。
「そういう事なら雨月が葉を矢に変えてやれ」
「え!? それで良いのか!? 祖母ちゃん、なんで今まで……!」
「待て待て。早まるな。葉を矢に替えただけではダメだ」
葉で作った矢を神泉で清める必要があるとの事だった。
新宿を始めとした山手には湧き水が多い。
神社にある湧き水の池に漬けると清められると言って池のある神社を教えてくれた。
地図アプリに神社の場所を入力し終える頃、話が終わった高樹と天狗がやってきた。
「こーちゃん、さっきの女の人は誰だったの?」
雪桜の問いに俺が答えた。
「小早川の次に小早川の母親って順番だったのは単に機会の問題か?」
妖奇征討軍の話の後でミケ――というか小早川親子――の事を聞いた高城が首を傾げた。
「相続であろう」
白狐が言った。
「え?」
「何かは分からぬが、その娘は父方から何かを相続する事になっていたのではないか?」
白狐が言うには、父方の祖父母からの遺産は父親が亡くなっている場合、代襲相続と言ってその子供が相続する。
そして父親、子供の順で亡くなった時、母親が生きていると相続権は母親に行くらしい。
これが母親、子供(小早川あや)の順番だと相続が途切れたと言う事で小早川の父親の相続権が消える。
しかし、小早川(あや)、小早川の母親の順番で死んだ場合、小早川の母親の両親に相続権が移る。
そして母の親(あやの祖父母)が両方とも亡くなっている場合、その子供、つまり母親の兄弟にいくらしい。
だから小早川の母親の兄弟が小早川あやの父方の遺産が欲しいなら小早川、小早川の母親の順で死なないといけないらしい。
「狐なのに人間の法律知ってるんだな……」
高樹がなんとも言えない表情で俺達の気持ちを代弁した。
「こやつは公事師の家に住んでいた事があった故な」
「今は公事師ではなく弁護士というのだ」
白狐が天狗の言葉を訂正した。
どっちにしろ狐が人間の法律知ってるのか……。
俺達(人間)の間に微妙な空気が漂う。
「そういえば、あの人なんでここに来たんだろうな。お参りか?」
俺は気を取り直して言った。
「詫びに来たんだ」
天狗が俺の疑問に答えた。
「詫び?」
「ああ、昨日うちにも来たな。不忍池の主に大目玉食らったと言って辟易してたぞ」
白狐が言った。
「弟達の怪しげな儀式のせいで都内に化生が増えたんでな。元から住んでる我らからしたら迷惑な話だからな」
「しかも呼んだ当人達には見えないから増えただけで退治も出来ないのではな」
「不忍池の主の助力にも気付いてなくて礼も言ってなかったとかで相当お冠だったと聞いたぞ」
白狐の言葉にその場にいた全員が麗花に同情したような表情を浮かべた。
弟達の不始末のせいで東京中の化生達に謝罪行脚か……。
可哀想に……。
ホントに不詳の弟達なんだな……。
俺達は白狐と天狗に礼を言うと寺を後にした。
その夜、俺は母さんと姉ちゃんが側にいないことを確認してからミケに話し掛けた。
「ミケ、妖奇征討軍がお前を狙ってる。しばらくは外に出るな」
『妖奇征討軍って何よ』
「化生を退治して回ってる奴らだ」
『ふん』
ミケはバカにしたように鼻を鳴らすと、どこかへ行ってしまった。
まぁ、窓は開いてないから外へは行ってないだろう。
四月二十六日 日曜日
俺は祖母ちゃんと共に湧き水の池がある神社に来ていた。
祖母ちゃんに葉を矢に変えてもらい、それを池の水に浸けていく。
あまり数が多くても嵩張るし重いので、とりあえず十本ほどにしておいた。
この神社はうちからそれほど遠くないから足りなくなっても戦いの最中でない限り気軽に補充しに来られる。
山手は坂が多くて徒歩での移動が大変だし、都内は交通の便が良いと言っても目的地まで乗り換えなしの一本で行ける事は少ないから意外と徒歩での移動距離が長い。
乗り換えで一駅分歩く事もあるくらいだ。
しかしその山手という地形のお陰で湧水が多いのだから今回ばかりは有難かった。
夕食が終わり部屋に戻ると、ミケが窓の側に行った。
『窓開けて』
「どこ行くんだ?」
『どこだっていいでしょ。開けてよ』
何度見に行ったところで小早川は戻ってこない、とは言えなかった。
自分で納得しない限り他人がいくら言っても無駄だ。
俺も祖母ちゃんの帰りをずっと待ってた。
希望が諦めに変わるまで。
俺は窓を開けた。
「ちゃんと帰ってこいよ」
俺の言葉にミケは何も答えないまま闇の中に消えていった。
俺は秀達にそう声を掛けると女性の跡を追った。
「あの、すみません」
俺は女性に声を掛けた。
「はい?」
「俺、覚えてますか? 神社で会った」
「ああ」
「よかったら連絡先、教えてもらえませんか?」
「どうして?」
「妖奇征討軍とトラブりそうなんです。あの二人にうちの猫が狙われてて……」
「そう。そういうことなら」
女性は連絡先を教えてくれた。
「あいつらが何か仕出かしたら遠慮なく連絡して」
「有難うございます」
俺は礼を言って頭を下げた。
連絡先には小林麗花と書かれていた。
根岸の寺には既に白狐が来ていた。
高樹が天狗に翼の事を相談している間、俺は白狐に矢の事を話した。
「そういう事なら雨月が葉を矢に変えてやれ」
「え!? それで良いのか!? 祖母ちゃん、なんで今まで……!」
「待て待て。早まるな。葉を矢に替えただけではダメだ」
葉で作った矢を神泉で清める必要があるとの事だった。
新宿を始めとした山手には湧き水が多い。
神社にある湧き水の池に漬けると清められると言って池のある神社を教えてくれた。
地図アプリに神社の場所を入力し終える頃、話が終わった高樹と天狗がやってきた。
「こーちゃん、さっきの女の人は誰だったの?」
雪桜の問いに俺が答えた。
「小早川の次に小早川の母親って順番だったのは単に機会の問題か?」
妖奇征討軍の話の後でミケ――というか小早川親子――の事を聞いた高城が首を傾げた。
「相続であろう」
白狐が言った。
「え?」
「何かは分からぬが、その娘は父方から何かを相続する事になっていたのではないか?」
白狐が言うには、父方の祖父母からの遺産は父親が亡くなっている場合、代襲相続と言ってその子供が相続する。
そして父親、子供の順で亡くなった時、母親が生きていると相続権は母親に行くらしい。
これが母親、子供(小早川あや)の順番だと相続が途切れたと言う事で小早川の父親の相続権が消える。
しかし、小早川(あや)、小早川の母親の順番で死んだ場合、小早川の母親の両親に相続権が移る。
そして母の親(あやの祖父母)が両方とも亡くなっている場合、その子供、つまり母親の兄弟にいくらしい。
だから小早川の母親の兄弟が小早川あやの父方の遺産が欲しいなら小早川、小早川の母親の順で死なないといけないらしい。
「狐なのに人間の法律知ってるんだな……」
高樹がなんとも言えない表情で俺達の気持ちを代弁した。
「こやつは公事師の家に住んでいた事があった故な」
「今は公事師ではなく弁護士というのだ」
白狐が天狗の言葉を訂正した。
どっちにしろ狐が人間の法律知ってるのか……。
俺達(人間)の間に微妙な空気が漂う。
「そういえば、あの人なんでここに来たんだろうな。お参りか?」
俺は気を取り直して言った。
「詫びに来たんだ」
天狗が俺の疑問に答えた。
「詫び?」
「ああ、昨日うちにも来たな。不忍池の主に大目玉食らったと言って辟易してたぞ」
白狐が言った。
「弟達の怪しげな儀式のせいで都内に化生が増えたんでな。元から住んでる我らからしたら迷惑な話だからな」
「しかも呼んだ当人達には見えないから増えただけで退治も出来ないのではな」
「不忍池の主の助力にも気付いてなくて礼も言ってなかったとかで相当お冠だったと聞いたぞ」
白狐の言葉にその場にいた全員が麗花に同情したような表情を浮かべた。
弟達の不始末のせいで東京中の化生達に謝罪行脚か……。
可哀想に……。
ホントに不詳の弟達なんだな……。
俺達は白狐と天狗に礼を言うと寺を後にした。
その夜、俺は母さんと姉ちゃんが側にいないことを確認してからミケに話し掛けた。
「ミケ、妖奇征討軍がお前を狙ってる。しばらくは外に出るな」
『妖奇征討軍って何よ』
「化生を退治して回ってる奴らだ」
『ふん』
ミケはバカにしたように鼻を鳴らすと、どこかへ行ってしまった。
まぁ、窓は開いてないから外へは行ってないだろう。
四月二十六日 日曜日
俺は祖母ちゃんと共に湧き水の池がある神社に来ていた。
祖母ちゃんに葉を矢に変えてもらい、それを池の水に浸けていく。
あまり数が多くても嵩張るし重いので、とりあえず十本ほどにしておいた。
この神社はうちからそれほど遠くないから足りなくなっても戦いの最中でない限り気軽に補充しに来られる。
山手は坂が多くて徒歩での移動が大変だし、都内は交通の便が良いと言っても目的地まで乗り換えなしの一本で行ける事は少ないから意外と徒歩での移動距離が長い。
乗り換えで一駅分歩く事もあるくらいだ。
しかしその山手という地形のお陰で湧水が多いのだから今回ばかりは有難かった。
夕食が終わり部屋に戻ると、ミケが窓の側に行った。
『窓開けて』
「どこ行くんだ?」
『どこだっていいでしょ。開けてよ』
何度見に行ったところで小早川は戻ってこない、とは言えなかった。
自分で納得しない限り他人がいくら言っても無駄だ。
俺も祖母ちゃんの帰りをずっと待ってた。
希望が諦めに変わるまで。
俺は窓を開けた。
「ちゃんと帰ってこいよ」
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