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第六章
第六章 第四話
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「何して遊ぶの?」
雪桜の問いに、
「え?」
俺は意味が分からずに聞き返した。
ゲーム機を持ってる秀の家ならともかく、雪桜や俺の家で遊ぶ時は単にお喋りか、せいぜい宿題で分からないところを教え合う程度だ。
「繊月丸ちゃんにも出来る遊びなら一緒にどうかなって思って」
どうやら雪桜は繊月丸と話がしたいらしい。
学校やファーストフード店では姿を消さなければいけない事もあって繊月丸は常に見えない状態でいるようだ。
そうなると秀と高樹と俺はともかく雪桜は話が出来ない。
だから雪桜は繊月丸とはほとんど話をした事がないのだ。
しかし女の子同士で話したい事もあるのだろう。
「別に遊びじゃなくても繊月丸を呼べばいいだろ」
繊月丸は見た目が小学生くらいだから化生の話をしていても子供の空想に付き合っていると思って誰も変な目では見ないはずだ。
本人の意志で見た目を変えられるならもう少し幼い見た目にしてもらえば幼児の微笑ましいお伽噺にしか聞こえないだろう。
全部事実だけどな……。
「じゃあ、繊月丸ちゃんも来られるね」
雪桜が嬉しそうに言った。
その言葉に近くに来ていた繊月丸が不思議そうな顔で首を傾げた。
「繊月丸、姿を現してくれ」
俺がそう言うと見えるようになったらしい。
「あ、繊月丸ちゃん、おはよう」
雪桜が挨拶した。
雪桜は早速繊月丸にゴールデンウィークの話を始めた。
学校が近付くと繊月丸は再び姿を消した――らしい。
雪桜が残念そうな表情を浮かべた。
校門のところで東雲が繊月丸を待っていた。
「繊月丸、東雲は来られないのか?」
俺がそう訊ねると、
「東雲が離れたら学校が潰れちゃうから……」
繊月丸が答えた。
「そ、そうか……」
廃校が決まっても実際に無くなるのは今年の一年生が卒業する年だろうが母校が無くなるのは勘弁して欲しい。
長期休暇の度に独りぼっちになってしまうのは可哀想だと思うが。
休み時間、雪桜と高樹が俺達の教室にやってきた。
俺は高樹の顔を凝視した。
男の顔など気にした事はなかったが、そう言われてみれば顔は割と……というか、かなり良い方だな。
しかも背が高い。
痩せすぎてひょろひょろなわけでもなく、圧迫感や威圧感を与えるようながっちりとした体格でもない。
これなら女子に人気があっても不思議はない。
「俺の顔になんか付いてるか?」
高樹が顔を触りながら訊ねてきた。
「あ、すまん。何も付いてない」
「そうか。東からゴールデンウィークの話を聞いたんだが……」
高樹が言った。
「都合が悪いのか?」
「そうじゃなくて……また神隠しが起きてるから」
「またか……」
「だから、そう嫌そうな顔するな」
俺のうんざりした顔を見た高樹が顔を顰める。
高城によると、この高校からそれほど遠くない場所で神隠しが起きているらしい。
例の如く化生を見た者はいない。
GPSで居場所を探すとその場所の近くでスマホだけが発見されるらしい。
「仕方ない、祖母ちゃんに聞こう」
俺は溜息を吐いた。
放課後、祖母ちゃんと落ち合うと秀が、
「綾さん、明日、皆で遊ぼうって話になったんだけど綾さんの都合は?」
と訊ねた。
「空いてるわよ」
「じゃあ、明日、孝司の家に集合ね」
秀が言った。
「繊月丸、俺の家知ってるか?」
俺の問いに繊月丸が頷いた。
「なら、明日は姿を現して来いよ。でないと雪桜には声が聞こえないからな」
俺がそう言うと繊月丸は再度頷いた。
「繊月丸ちゃん、明日が楽しみだね」
雪桜が嬉しそうに言った。
繊月丸も表情からすると楽しみらしい。
ファーストフード店に入ったところで俺達が神隠しの噂を祖母ちゃんに報告すると、
「ああ、蜘蛛の井の」
祖母ちゃんが頷いた。
これも祖母ちゃんは知っていたようだ。
他にもあるのかもしれないが祖母ちゃんは聞かない限り教えてくれないから噂が耳に入らないものは俺達には知りようがない。
とはいえ、俺達も暇ではないから退治する必要のある化生の話を大量にされても困るのだが。
「蜘蛛の井?」
聞いた事があるような……。
「私もまだ生まれてなかった頃だけど、大蜘蛛がいて退治されたのよ。子孫が残ってたのね」
「祖母ちゃんは知らないのか?」
「例の儀式のせいで普通の蜘蛛として生きてきてた子孫が大蜘蛛になっちゃったんでしょ」
「退治されたのに子孫が残ってたのか?」
「蜘蛛は子供が多いから。狼だって草が一本揺れたらその影に千匹いるって言うでしょ」
「千匹!? ゴキブリでさえ三十匹なのに!?」
「狼は群れで行動する動物だから。沢山いるって意味でしょ」
「けど、この辺で狼の伝説ってあんまり聞かないよな?」
「あれは山の動物だから」
そう言われてみれば江戸やその近郊には山がない。
一番近くでも高尾山だろう。
天狗や河童のような想像上の生き物(実際には存在するのだが)はともかく、実在の動物の場合は生息地でなければ言い伝えなども残らないようだ。
そう言えば見ればクマやカモシカの話も聞いたことがない。
クマやカモシカは生息していないからだ。
ちなみにシカとイノシシはいたので骨が出土しているらしい。
「けど蜘蛛ってそんなに大量に卵産むのか?」
「蜘蛛の子を散らすって言葉があるくらいだし沢山産むんじゃないの?」
秀が言った。
「で、どうする? もし頻繁に人が消えてるなら早い方がいいよな」
明日は祝日だが、真っ昼間に路上でアーチェリーを使うわけにはいかない。
祖母ちゃんに誤魔化してもらうにしても矢が通り掛かった人に当たってしまう危険がある。
矢は木の葉だから祖母ちゃんが葉っぱに戻せるとはいえ間に合わなければケガをさせてしまうのだ。
となると夜、人通りと人目の少ない時間に行くしかない。
俺達は待ち合わせの時間を決めた。
雪桜の問いに、
「え?」
俺は意味が分からずに聞き返した。
ゲーム機を持ってる秀の家ならともかく、雪桜や俺の家で遊ぶ時は単にお喋りか、せいぜい宿題で分からないところを教え合う程度だ。
「繊月丸ちゃんにも出来る遊びなら一緒にどうかなって思って」
どうやら雪桜は繊月丸と話がしたいらしい。
学校やファーストフード店では姿を消さなければいけない事もあって繊月丸は常に見えない状態でいるようだ。
そうなると秀と高樹と俺はともかく雪桜は話が出来ない。
だから雪桜は繊月丸とはほとんど話をした事がないのだ。
しかし女の子同士で話したい事もあるのだろう。
「別に遊びじゃなくても繊月丸を呼べばいいだろ」
繊月丸は見た目が小学生くらいだから化生の話をしていても子供の空想に付き合っていると思って誰も変な目では見ないはずだ。
本人の意志で見た目を変えられるならもう少し幼い見た目にしてもらえば幼児の微笑ましいお伽噺にしか聞こえないだろう。
全部事実だけどな……。
「じゃあ、繊月丸ちゃんも来られるね」
雪桜が嬉しそうに言った。
その言葉に近くに来ていた繊月丸が不思議そうな顔で首を傾げた。
「繊月丸、姿を現してくれ」
俺がそう言うと見えるようになったらしい。
「あ、繊月丸ちゃん、おはよう」
雪桜が挨拶した。
雪桜は早速繊月丸にゴールデンウィークの話を始めた。
学校が近付くと繊月丸は再び姿を消した――らしい。
雪桜が残念そうな表情を浮かべた。
校門のところで東雲が繊月丸を待っていた。
「繊月丸、東雲は来られないのか?」
俺がそう訊ねると、
「東雲が離れたら学校が潰れちゃうから……」
繊月丸が答えた。
「そ、そうか……」
廃校が決まっても実際に無くなるのは今年の一年生が卒業する年だろうが母校が無くなるのは勘弁して欲しい。
長期休暇の度に独りぼっちになってしまうのは可哀想だと思うが。
休み時間、雪桜と高樹が俺達の教室にやってきた。
俺は高樹の顔を凝視した。
男の顔など気にした事はなかったが、そう言われてみれば顔は割と……というか、かなり良い方だな。
しかも背が高い。
痩せすぎてひょろひょろなわけでもなく、圧迫感や威圧感を与えるようながっちりとした体格でもない。
これなら女子に人気があっても不思議はない。
「俺の顔になんか付いてるか?」
高樹が顔を触りながら訊ねてきた。
「あ、すまん。何も付いてない」
「そうか。東からゴールデンウィークの話を聞いたんだが……」
高樹が言った。
「都合が悪いのか?」
「そうじゃなくて……また神隠しが起きてるから」
「またか……」
「だから、そう嫌そうな顔するな」
俺のうんざりした顔を見た高樹が顔を顰める。
高城によると、この高校からそれほど遠くない場所で神隠しが起きているらしい。
例の如く化生を見た者はいない。
GPSで居場所を探すとその場所の近くでスマホだけが発見されるらしい。
「仕方ない、祖母ちゃんに聞こう」
俺は溜息を吐いた。
放課後、祖母ちゃんと落ち合うと秀が、
「綾さん、明日、皆で遊ぼうって話になったんだけど綾さんの都合は?」
と訊ねた。
「空いてるわよ」
「じゃあ、明日、孝司の家に集合ね」
秀が言った。
「繊月丸、俺の家知ってるか?」
俺の問いに繊月丸が頷いた。
「なら、明日は姿を現して来いよ。でないと雪桜には声が聞こえないからな」
俺がそう言うと繊月丸は再度頷いた。
「繊月丸ちゃん、明日が楽しみだね」
雪桜が嬉しそうに言った。
繊月丸も表情からすると楽しみらしい。
ファーストフード店に入ったところで俺達が神隠しの噂を祖母ちゃんに報告すると、
「ああ、蜘蛛の井の」
祖母ちゃんが頷いた。
これも祖母ちゃんは知っていたようだ。
他にもあるのかもしれないが祖母ちゃんは聞かない限り教えてくれないから噂が耳に入らないものは俺達には知りようがない。
とはいえ、俺達も暇ではないから退治する必要のある化生の話を大量にされても困るのだが。
「蜘蛛の井?」
聞いた事があるような……。
「私もまだ生まれてなかった頃だけど、大蜘蛛がいて退治されたのよ。子孫が残ってたのね」
「祖母ちゃんは知らないのか?」
「例の儀式のせいで普通の蜘蛛として生きてきてた子孫が大蜘蛛になっちゃったんでしょ」
「退治されたのに子孫が残ってたのか?」
「蜘蛛は子供が多いから。狼だって草が一本揺れたらその影に千匹いるって言うでしょ」
「千匹!? ゴキブリでさえ三十匹なのに!?」
「狼は群れで行動する動物だから。沢山いるって意味でしょ」
「けど、この辺で狼の伝説ってあんまり聞かないよな?」
「あれは山の動物だから」
そう言われてみれば江戸やその近郊には山がない。
一番近くでも高尾山だろう。
天狗や河童のような想像上の生き物(実際には存在するのだが)はともかく、実在の動物の場合は生息地でなければ言い伝えなども残らないようだ。
そう言えば見ればクマやカモシカの話も聞いたことがない。
クマやカモシカは生息していないからだ。
ちなみにシカとイノシシはいたので骨が出土しているらしい。
「けど蜘蛛ってそんなに大量に卵産むのか?」
「蜘蛛の子を散らすって言葉があるくらいだし沢山産むんじゃないの?」
秀が言った。
「で、どうする? もし頻繁に人が消えてるなら早い方がいいよな」
明日は祝日だが、真っ昼間に路上でアーチェリーを使うわけにはいかない。
祖母ちゃんに誤魔化してもらうにしても矢が通り掛かった人に当たってしまう危険がある。
矢は木の葉だから祖母ちゃんが葉っぱに戻せるとはいえ間に合わなければケガをさせてしまうのだ。
となると夜、人通りと人目の少ない時間に行くしかない。
俺達は待ち合わせの時間を決めた。
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