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第七章
第七章 第四話
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「えっ!? まさか……あいつら、狐だったのか!?」
「あやつらは人間よ」
「化生なら鬼や河童が見えたはずでしょ」
秀が俺に突っ込んだ。
それもそうだ……。
妖奇征討軍の二人は桜の木の人喰いも河童も見えなかった。
血が薄くなりすぎていて先祖が誰か分からないほどの秀ですら見えるものが見えないのだからほぼ純粋な人間だろう。
おかしな儀式をしていた事を考えると狸が見えたのも、化生の血が入っているからではなく修行か何かでそう言う能力を得たのかもしれない。
そして、能力は得たものの未熟すぎて役に立たない、と……。
俺は頭を抱えたが、後始末をして回っている麗花は頭痛どころではないだろう。
胃に穴が開いているかもしれない。
妖奇征討軍の二人が駐車場に入ってきた。
「お主らが持っているものを渡してもらおう」
と白狐が妖奇征討軍に言った。
「白……お前、なんでカツアゲしてんだよ!」
「孝司、今、尾裂の話してたところでしょ」
「あ……そうだった」
「なんのことだ!」
妖奇征討軍の片方が答えた。
「茶筒か壺か、とにかく小さな入れ物を持っておろう。それを渡せ」
「誰が渡すか!」
もう一方がそう答えると二人は踵を返して歩き出したがその場をぐるぐる回っている。
「おい、この駐車場、こんなに広かったか?」
「いや、そんなはずは……」
二人はそう言いながら狭い駐車場を歩き回っている。
「入れ物を渡せ。さすれば……」
白狐がそう言った時、妖奇征討軍の片方の懐から黒い影が飛び出してきた。
そのまま俺達の方に向かってくる。
「ヤバい!」
俺は秀を庇うように前に立った。
「繊月丸!」
高樹が急いで刀を掴むと影に斬り掛かる。
避けられてしまって切っ先が掠めただけだったが、それでも影の方から骨が砕けるような音が聞こえた。
相変わらず凄い威力だな、繊月丸。
「おい、お前ら、離れろ!」
俺は妖気征討軍に声を掛けた。
振っただけで骨が砕けるのでは人がいたら高樹は思うように戦えない。
駐車場から出そうにも二人がいるのは奥で、間に尾裂がいる。
ぎりぎり脇を通り抜けられない事はないが、それは尾裂があいつらを攻撃しないなら、と言う但し付きだ。
用済みと思えば――。
と考えた側から尾裂が妖奇征討軍に向かっていった。
「マズい!」
尾裂の向こうに妖気征討軍がいるから高樹も手が出せない。
突っ立ったまま目を剥いている妖奇征討軍に突っ込んでいった尾裂が何かにぶつかったように後ろに下がった。
尾裂が振り返って白狐を睨む。
白狐が何かしたようだ。
と思うと妖気征討軍が倒れた。
「おい!」
俺が白狐を振り返ると、
「眠らせただけだ。これで邪魔にはなるまい」
という答えが返ってきた。
なるほど……。
繊月丸を下に向かって振らなければ地面に転がっている妖奇征討軍は巻き添えにならずに済む。
高樹は素早く尾裂に駆け寄ると繊月丸を横に払った。
尾裂が飛び上がって避ける。
高樹が更に踏み込んで下から上に斬り上げた。
尾裂が妖奇征討軍の向こうに弾き飛ばされる。
高樹は二人を飛び越えると尾裂に繊月丸を振り下ろした。
尾裂が絶叫を上げる。
胴体が真っ二つになった時、何故か重い物を叩いたような大きな金属音が聞こえた。
尾裂の叫び声に被さるように車の警報音が鳴り始めた。
「げっ!?」
高樹が後退る。
見ると車のフロント部分が裂けていた。
繊月丸が尾裂ごと、その向こうに止まっていた車まで叩き切ってしまったのだ。
切れ味良すぎだろ……。
「白狐、これで終わったんだよな!? 妖奇征討軍はここに放っておいても大丈夫だよな?」
「うむ」
「よし、逃げるぞ。繊月丸、人の姿に戻れ」
俺はそう言うと歩道で待っていた雪桜の腕を掴んで駆け出した。
秀と高樹、繊月丸が後に続く。
中央公園で祖母ちゃんと落ち合うと、いつものファーストフード店に入った。
何故か一緒に随いてきた白狐も同席している。
「わざわざ退治したの?」
「王子の狐が怒ったらどうする」
「怒らないと思うわよ。尾裂が入ってきたのはこれが初めてじゃないんだし」
祖母ちゃんはどうでもよさそうに言った。
「もしかして、化生を呼び寄せたのは尾裂のせいだったのか?」
「取り憑かれていたわけではないから、化生退治をしたいと言った彼奴らに儀式の方法を教えただけであろう」
「尾裂は何かに入ってたんだよな?」
俺が訊ねた。
白狐は入れ物を出せと言っていた。
「尾裂を封じ込めていた物を持っていたのであろうな」
小さな容器に尾裂を封じ込める時、大量のケシの実を一緒に入れておくと一年に一粒ずつ食べるから中から出てこなくなるらしい。
そうやって封じ込められた状態の尾裂狐が王子稲荷の支配地域であるここに持ち込まれてしまったのだろうと言う話だった。
「おそらく封じ込めてある事を子供に伝え忘れたか何かで中にケシの実を足すのを忘れたのであろうな」
それで食べる物が無くなり、封印が解けてしまった――というか尾裂が出てきてしまったのだろうという事だった。
「それをなんで持ち歩いてたんだ?」
「何かを与える事と引き替えに彼奴らに知恵を授けていたのであろう」
例えば化生を退治する方法とか、か……。
「白狐にバレて用なしになったからあいつらに襲い掛かったのか?」
「取り憑こうとしたのだ。お主が離れろと言ったのを聞いて人間に憑いてしまえば手出し出来なくなると思うたのであろう」
「取り憑けなかったってことは全くの無能じゃないって事か」
「あれは儂が邪魔したのだ」
なるほど……。
憑いたり憑かせたりという事が出来るのなら憑くのを妨害するのも可能という事か。
「どっちにしろ尾裂を倒したならもう尾裂の悪知恵は使えなくなったって事だね」
秀が安心したように言った。
「儀式の効果自体は残ってるがな」
白狐の言葉に俺達は肩を落とした。
「あやつらは人間よ」
「化生なら鬼や河童が見えたはずでしょ」
秀が俺に突っ込んだ。
それもそうだ……。
妖奇征討軍の二人は桜の木の人喰いも河童も見えなかった。
血が薄くなりすぎていて先祖が誰か分からないほどの秀ですら見えるものが見えないのだからほぼ純粋な人間だろう。
おかしな儀式をしていた事を考えると狸が見えたのも、化生の血が入っているからではなく修行か何かでそう言う能力を得たのかもしれない。
そして、能力は得たものの未熟すぎて役に立たない、と……。
俺は頭を抱えたが、後始末をして回っている麗花は頭痛どころではないだろう。
胃に穴が開いているかもしれない。
妖奇征討軍の二人が駐車場に入ってきた。
「お主らが持っているものを渡してもらおう」
と白狐が妖奇征討軍に言った。
「白……お前、なんでカツアゲしてんだよ!」
「孝司、今、尾裂の話してたところでしょ」
「あ……そうだった」
「なんのことだ!」
妖奇征討軍の片方が答えた。
「茶筒か壺か、とにかく小さな入れ物を持っておろう。それを渡せ」
「誰が渡すか!」
もう一方がそう答えると二人は踵を返して歩き出したがその場をぐるぐる回っている。
「おい、この駐車場、こんなに広かったか?」
「いや、そんなはずは……」
二人はそう言いながら狭い駐車場を歩き回っている。
「入れ物を渡せ。さすれば……」
白狐がそう言った時、妖奇征討軍の片方の懐から黒い影が飛び出してきた。
そのまま俺達の方に向かってくる。
「ヤバい!」
俺は秀を庇うように前に立った。
「繊月丸!」
高樹が急いで刀を掴むと影に斬り掛かる。
避けられてしまって切っ先が掠めただけだったが、それでも影の方から骨が砕けるような音が聞こえた。
相変わらず凄い威力だな、繊月丸。
「おい、お前ら、離れろ!」
俺は妖気征討軍に声を掛けた。
振っただけで骨が砕けるのでは人がいたら高樹は思うように戦えない。
駐車場から出そうにも二人がいるのは奥で、間に尾裂がいる。
ぎりぎり脇を通り抜けられない事はないが、それは尾裂があいつらを攻撃しないなら、と言う但し付きだ。
用済みと思えば――。
と考えた側から尾裂が妖奇征討軍に向かっていった。
「マズい!」
尾裂の向こうに妖気征討軍がいるから高樹も手が出せない。
突っ立ったまま目を剥いている妖奇征討軍に突っ込んでいった尾裂が何かにぶつかったように後ろに下がった。
尾裂が振り返って白狐を睨む。
白狐が何かしたようだ。
と思うと妖気征討軍が倒れた。
「おい!」
俺が白狐を振り返ると、
「眠らせただけだ。これで邪魔にはなるまい」
という答えが返ってきた。
なるほど……。
繊月丸を下に向かって振らなければ地面に転がっている妖奇征討軍は巻き添えにならずに済む。
高樹は素早く尾裂に駆け寄ると繊月丸を横に払った。
尾裂が飛び上がって避ける。
高樹が更に踏み込んで下から上に斬り上げた。
尾裂が妖奇征討軍の向こうに弾き飛ばされる。
高樹は二人を飛び越えると尾裂に繊月丸を振り下ろした。
尾裂が絶叫を上げる。
胴体が真っ二つになった時、何故か重い物を叩いたような大きな金属音が聞こえた。
尾裂の叫び声に被さるように車の警報音が鳴り始めた。
「げっ!?」
高樹が後退る。
見ると車のフロント部分が裂けていた。
繊月丸が尾裂ごと、その向こうに止まっていた車まで叩き切ってしまったのだ。
切れ味良すぎだろ……。
「白狐、これで終わったんだよな!? 妖奇征討軍はここに放っておいても大丈夫だよな?」
「うむ」
「よし、逃げるぞ。繊月丸、人の姿に戻れ」
俺はそう言うと歩道で待っていた雪桜の腕を掴んで駆け出した。
秀と高樹、繊月丸が後に続く。
中央公園で祖母ちゃんと落ち合うと、いつものファーストフード店に入った。
何故か一緒に随いてきた白狐も同席している。
「わざわざ退治したの?」
「王子の狐が怒ったらどうする」
「怒らないと思うわよ。尾裂が入ってきたのはこれが初めてじゃないんだし」
祖母ちゃんはどうでもよさそうに言った。
「もしかして、化生を呼び寄せたのは尾裂のせいだったのか?」
「取り憑かれていたわけではないから、化生退治をしたいと言った彼奴らに儀式の方法を教えただけであろう」
「尾裂は何かに入ってたんだよな?」
俺が訊ねた。
白狐は入れ物を出せと言っていた。
「尾裂を封じ込めていた物を持っていたのであろうな」
小さな容器に尾裂を封じ込める時、大量のケシの実を一緒に入れておくと一年に一粒ずつ食べるから中から出てこなくなるらしい。
そうやって封じ込められた状態の尾裂狐が王子稲荷の支配地域であるここに持ち込まれてしまったのだろうと言う話だった。
「おそらく封じ込めてある事を子供に伝え忘れたか何かで中にケシの実を足すのを忘れたのであろうな」
それで食べる物が無くなり、封印が解けてしまった――というか尾裂が出てきてしまったのだろうという事だった。
「それをなんで持ち歩いてたんだ?」
「何かを与える事と引き替えに彼奴らに知恵を授けていたのであろう」
例えば化生を退治する方法とか、か……。
「白狐にバレて用なしになったからあいつらに襲い掛かったのか?」
「取り憑こうとしたのだ。お主が離れろと言ったのを聞いて人間に憑いてしまえば手出し出来なくなると思うたのであろう」
「取り憑けなかったってことは全くの無能じゃないって事か」
「あれは儂が邪魔したのだ」
なるほど……。
憑いたり憑かせたりという事が出来るのなら憑くのを妨害するのも可能という事か。
「どっちにしろ尾裂を倒したならもう尾裂の悪知恵は使えなくなったって事だね」
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