それは、キラキラ光る宝箱

花町 シュガー

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美しい君

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「おはよう、カエデ。今日の天気はなんだい?」

 〝本日は少し雲がありますが、いいお天気ですよ〟

「そうか」

 ここへ来て早2ヶ月。
 朝起きてメイドが運んできた朝食を食べ、着替えを終えてから窓から手を出す。
 聞き始めはいつも天気。これが日課になってしまった。

 (この前は豪雨の中手を出したら握り返してくれたな……あれは流石に焦った)

 忠誠心が強いのだろうか?
 まさかこんな天気の中居ないだろうと手を出したら〝危ないですよ!〟と強く書かれ、慌てるように窓の中に手を戻された。

「いやいやお前が危ないだろう!」とこちらが慌てて窓の外へ聞こえるように叫んだが……


「……っ、ふふふ」


 〝?〟


「あぁすまない、思い出し笑いだ」

 何度か会話をするうちに慣れてきたようで、今では躊躇なく手を握ってくれる。

 (こうなるまでに1ヶ月はかかったな……まぁ壁を崩していくのは楽しかったが)

 さてどうやって懐いてもらおうかと試行錯誤してようやくこの距離。
 これまで私がこんなに人との距離感を詰めたいと思ったことがあっただろうか?
 いや無かったからこそ初めての体験で、だからこそとても面白かった。

 (ミートソースで釣って、使用人たちの話から両親の話までして、徐々に徐々にカエデの中へ私を擦り込ませたな……)

 今では、こうしてしっかりとカエデの日常に私と話をするということが組み込まれている。
 それを、とても嬉しいと思っている自分がいる。
 まったくもって不思議な感覚だ。

「そう言えば、今はなにを育てているんだっけ」

 〝ヒマワリです。今は夏ですからね。
 太陽に向かって真っ直ぐ伸びていますよ〟

「そうか」

 カエデは庭師の見習いなのだそうだ。
 この家には庭師が数名いて、その者たちから様々なことを学んでいるらしい。

 〝他にもいろいろな花を植えてるんですよ。アサガオやクレマチス、後プルメリアとか……それぞれに特徴があって育て方とか好きな場所が違うんです〟

「好きな場所?」

 〝はい。例えば日影が好きな植物や暖かい所が好きな植物、日を長く当てすぎるといけないものなど様々です〟

「ほう、ではその特徴ごとに分けて世話しているのか……面白いな。因みにそれぞれどんな花を咲かすんだ?」

 〝ヒマワリは黄色い花びらで大きな花を咲かせます。フェルナンド様の手のひらよりも大きな。
 アサガオは──〟

 いつもそう。
 カエデは本当に植物が好きで、語り出すと止まらない。

 好きなことに真っ直ぐで、羨ましいほどひたむきで──


 ポツリ

「……いいな」


 〝?〟

「私も、カエデが咲かせる花を、見てみたいな」

 見たら、何かが変わるだろうか?
 また仕事へ戻って、頑張っていけるだろうか。
 あのつまらない日常を…少しでも、楽しむことが──


 〝大丈夫です〟


「っ、」


 ぎゅうっと、暖かい手が私の手を包む。

 〝フェルナンド様の目はきっと良くなります。
 焦らず、少しづつ治されてください。花たちも主人に見られることをきっと心待ちにしていますよ〟

「──っ、あぁ、ありがとう」

 〝いいえ〟

 クスクスとカエデが笑っているのがわかる。
 多分……優しく微笑んでくれているのだろう。

「…ねぇカエデ。さっき植物には好きな場所があるって話をしたよね?」

 〝はい、そうですね〟

「カエデはこの場所が好き?」

 〝え、〟

「こうして窓辺で私と話をするこの時間は、好きかい?」

 〝っ、っ?〟

 あぁ、焦っているな。
 ワタワタ指が動いているのが振動で伝わる。

 (くくくっ、まったく。いじりがいがあるとはこのことか)

 可愛らしくて、純粋で。
 本当にカエデと話していると私は私のままでいられて。

 焦りまくったカエデが〝そ、そろそろ仕事に戻らないと〟と早足で書くまで、ずっとからかっていた。




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