それは、キラキラ光る宝箱

花町 シュガー

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White Christmas.

2022/12/04(日)

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【2022/12/04(日)】


「いらっしゃい彗眞くん!あがってあがって」

「お邪魔します」

 浬久が退院した次の日、失礼を承知で来させてもらった。
 通い慣れた玄関からリビングへ行くと、ソファーに座ってる姿。

「よう」

「おう」

「適当に座ってね、いまお茶を淹れるから」

「あ、大丈夫です、無理言って来させてもらってるんで」

「全然っ!浬久のためにありがとうね。
ゆっくりしてって」

 パタパタパタ…と軽やかな背中がキッチンに消えていく。

「……昨日帰ってきたばっかなのにごめん」

「いいって、母さんもあぁ言ってるし。
荷物もすぐ片付いて暇だったから」

「暇ってお前な、仮にも病み上がりなんだかr」


「あのさ、俺お前のこと本当に忘れてんだな」


「え……あぁ、うん」


 びっくりして浬久を見ると、「はぁぁ…」とため息を吐きながらスマホ片手にソファーへもたれこんだ。

「LINEの履歴見た。写真のフォルダとかも全部」

「あーね」

「あと母さんが昔のアルバム引っ張り出してきて、それも。
すげぇわ、行った記憶はあんのにお前と行ったことだけ記憶にない。でも写真にはちゃんと収まっててさ、なんか不思議な気分。他人の記憶見てるみたいな」

「…へぇ、そんな感覚なんだ」

「ってか俺たちまじで仲いいんだな、お前とのLINEのトーク画面ピン留めされてた。内容は普通に友だちって感じだけど。
写真もちょいちょい撮っててさ」


『彗眞、誰かに見られるとだるいからLINEは変なこと書かないようにしようぜ。
あと写真も、あくまで友だち的距離感で』

『当たり前だろ、そんな関係じゃないんだし。
というかそんな関係になるかもわからないじゃん』

『あー、そうだな。あと何年だっけ? 4年?』

『うーわ長げぇー、そのうち彼女できるかもなお互い』

『ははっ、そうかもな』


「もしかして、親友的存在だった?」

「そりゃそうでしょ、あんたたち幼い頃から一緒だったんだから」

 コトッとカップをテーブルに置きながら、浬久の母さんが笑った。

「彗眞くんとことは昔から仲が良くて、何をするにもいつも一緒だったのよ。あんたたち兄弟みたいだったもんね~。
おまけに小・中・高同じで、これから受験する大学も同じ。
遠くに行っちゃうけど、母さん安心してんのよ~」

「なんで安心? こいつと一緒だから?」

「そうに決まってんじゃない!彗眞くんのお母さんとも会いに行けるしねっ。
それに、母さんたちはあんたたちのこと信頼してるんです」

「信頼?」

「これまで一度も彼女紹介されたことないからね。
変に手出して大事にはならないでしょって」

 確かに、俺も浬久も今まで彼女をつくったことがない。

 (母さんたち、散々「せっかくイケメンに産んだのにつくらないのか」「揃いに揃って勿体無い」とか言ってたのに手のひら返しかよ…まぁいいけど)


「へーそうなんだ。

──なぁ、なんで俺ら彼女つくんなかったの?」


「……さぁ、なんでだろうな」



『あのさ彗眞、俺たちさ──』



「んなことより、いい加減呼びやめてくんない?」

「あ、それ。彗眞って呼んでいいの?」

「いいよ、俺も浬久って呼ぶから」

「おっけ」

「クスクスッ、なんだか変な会話よね」

「ほんとですよ。
まさか、この歳になってまたこいつと初めましてするなんて想像してなかったです」

 ほんと、想像もしてなかったわ。

「ま、とりあえず明日から学校行くからよろしく。
一緒のクラス?」

「そう、特進」

「だよな。あーまじで変な感覚、お前いたっけ? あ、彗眞。
なぁ、このあと部屋行くだろ? なんか思い出話してよ、ピンとくるかも」

「いいけど、俺勉強道具持ってきたから勉強しながら話すぞ」

「りょーかい、俺もやんなきゃだわ」

「頑張れ受験生!浬久は気分悪くなったらやめなさいよ」

「はいはいそうしますー」

「俺見とくんで大丈夫です、やばそうだったら止めさせるんで」

「ごめんね彗眞くん、いつもありがとう」

 会話もそこそこに、お茶を飲みきって浬久の部屋へ向かう階段を昇っていく。

 先に上がる背中も、雰囲気も、声も笑顔もなにひとつ今までと変わってないのに

 (なぁ、ほんとに俺は お前の中にはいないのか……?)




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