それは、キラキラ光る宝箱

花町 シュガー

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White Christmas.

2022/12/07(水)

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【2022/12/07(水)】


「おっす浬久、彗眞」

「おはよ」

「はよ、雪やばいね」

「今年は多いんだってさ。クソさみー」

「今日の体育、中がいいな」

「無理だろ絶対ぇ外だって」

「だよなーだりぃ……」

 朝、いつもの友人たち。
 初めこそ驚かれたものの、今じゃ普通に接してくれる。
 まぁ浬久のそれは俺にだけだから、他はなにも変わらないだろうけど。

「そういや、お前らのこと全学年にバレたらしいぞ」

「まじ? そんなに情報早い?」

「バレたってなに、別に俺ら隠してねぇけど」

「悪りぃ悪りぃ言葉のあやだって。
早いのはあれじゃん!お前ら有名だから」

「この学校の王子様方が記憶喪失だもんなー!
 いやードラマだわ」

 同じ背丈・似てはないけど互いにそれなりの顔・性格も、まぁ可もなく不可もなく。
 誰が呼んだか知らないけど、高校で俺たちには〝王子〟というあだ名が付いた。
 母さんたちに笑われ「鼻高だわ~」と言われたのは懐かしい記憶。

「まじでそんなことあんだな、浬久が彗眞忘れるとか信じらんねぇ」

「けどこういうのって大事な人ほど忘れるんだろ? なんか漫画とかであった気する」

「女子が騒ぐのもわかるよな」

「……お前らもいい加減その話やめてくんない? ストレス」

「ごめんって浬久、お前はなんのこっちゃわからんもんな」

「どんな感覚なんだ? まじで不思議」

 月曜は散々「やべーやべー」言われて、昨日も周りから遠巻きに見られて。
 しょうがないけど毎日ウザい。こっちは受験待ってんだし空気読んでほしい。
 浬久は俺より苛立ってるし、それにもムカつく。
 ちょっとは気ぃ遣えよ。


「彗眞、今日はどこ寄って帰る?」


「そうだな…今日は……」


 記憶を無くしてから、学校後はよく寄ってたとことか思い出のある場所へ行って帰ることになった。
 補講終わりで遅いから、近場をさっと。

 きっと、周りからの反応や自分は全然普通なのに普通じゃない気持ち悪さや、そういうのを早く無くしたいんだと思う。
 もちろん俺のためでもあるだろうけど、大半はそっち。

 (……今日は、何処行って帰ろうか)


『浬久、手 繋いでみようぜ』

『はぁ? なに言ってんの恥ずすぎ』

『誰も見てないだろ、暗いし。ほら』

『っ……
あー、初めて繋いだのが野郎の手とかやばすぎ、ウケる』

『俺も、ウケるわっ』

『このまま繋いで帰るか』

『流石に家近くなったら離せよ』

『当たり前だろ。
……なぁ彗眞、キスってどんな感じなんだろうな』

『は? 飛躍しすぎ、そこまではしないからな』

『いや手ぇ繋いでんじゃん!?』

『それとこれとは違げぇだろ』


 ──どう、説明すればいい?

 この 曖昧な関係を。
 なんでもない、秘密だった関係を。

 帰り道、夕飯前のコンビニ、馬鹿みたいにはしゃいだ公園のブランコ、他愛ない話と笑い声……
 そのなんの変哲もない普通の中にあった不確かなものを、どう言葉にすれば

 なんて言えば…いいんだ……


『こういうのって大事な人ほど忘れるんだろ?』


 (っ、うるさい)

 分かってる、医者にも言われた台詞。

 がないんだ、本当に。
 俺たちのは、もうそこ。

 けどこの関係を口にしていいのか?
 世間の普通とかけ離れた〝それ〟を、伝えても──

「病院にも通ってんだろ? 大変だな」

「ほんと、受験前だってのによ……けどこいつと行く場所一緒だし親もうるせーから戻しとかないとな。
あーさっさと記憶戻ってきてくれねーかな」

 気丈に笑う顔から見える、焦りと不安。
 そうさせてるのは紛れもなく周りと自分で。

「──っ、」

 なにも言えない自分にも、放っておいてくれない現実にも、すべてに腹が立って

 握った拳に、爪が食い込んだ。




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