それは、キラキラ光る宝箱

花町 シュガー

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White Christmas.

2022/12/12(月)

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【2022/12/12(月)】


「………え?」

「ほら、彗眞も驚いてんじゃん!
そんくらいお前にはありえないことだったの!」

「…まじ? 女子とメシ食うくらいが?」

 登校してすぐ友人たちに囲まれた机。
 何事かと思えば、正に寝耳に水だった。

「驚きすぎて二度見したもん、あいつ浬久だよな?って。
一体昨日なにがあった!?」

「なにって、普通に病院終わって帰ってたら話しかけられたから、そのまま流れで?」

「流れで?じゃねぇよ、その流れだよ流れ!なにがどうしてそうなった!?」

 思えば、今朝はやけによく見られると思った。
 記憶喪失が知れてようやく1週間。やっと学校も落ち着いて俺らも一息つけて。
 学校帰りの思い出の地巡りもそこそこ順調、大分昔みたいに話もできてきた、そんなときだったのに。

 (確かに昨日、浬久は病院の日だった)

 だから俺も特に接することなく家にいた。
 なのに、病院後女子とメシ? どういうことだ??

「え、俺いままでそういうのしてないの? 一回も?」

「一回もかは知らないけど、少なくとも俺らの前ではなかったぞ。お前友だち優先みたいなとこあっていっつも俺らと一緒にいたし」

「? 女子も友だちじゃないの」

「いや、それはそうなんだけど…うあーなんて言えばいいんだ? くそむずい!!」

 頭をガリガリ掻きむしりながら「彗眞ぁ~」と助けを求められるが、俺も今はそれどころじゃない。

 なんでいきなり?
 いくら友だちでも、中学は全然なくて高校もクラス会とか以外用事ないと女子に話しかけないような奴だったのに。
 なのに、どうして──

 (……俺、か?)

 俺を忘れたから、浬久は男女分け隔てなく接するようになった?
 俺が、無意識にでも浬久を普通から遠ざけてたのか?

 ……けど、

 (けど、そんなのは 俺だって──)


「おーい、浬久ー!」


 教室のドアのとこで呼んでるクラスメイト。
 その後ろには、知らない女子。

「ほら見ろ、お前がハードル下げたから」

「あーぁ、これから大変だ~」

「え、昨日の今日だぞ?」

「女はお喋り多いしな、噂なんてすぐ広まんだろ」

「がんばれよ浬久ー、もうすぐクリスマスだし狙われんぞ」

「あーそっかクリスマスは強いわ、ワンチャン勢多そう。
ってか彗眞にも来んじゃね? 王子様の均衡崩れてチャンス!的な」

「ありえるー彼氏欲しい奴からしたら格好の獲物だよな、頑張れよ~彗眞は巻き込まれドンマイっ」

 あははっ!と明るくどつかれるけど、固まった笑みしか出てこない。

 青天の霹靂。
 お前まじでなに忘れてんだよ、有り得ないだろ。
 俺のこと思い出したいんじゃないの。思い出の地巡ってさ、いろいろ話もして。
 なのになんでそんなことしてんだ。
 もう日にちもないのに、意味わからない。

 (ここまでの時間どうすんだ)

 培ってきた月日は、一緒にいた記憶は

 10年前の、あのは──


「けーいま」


「っ、ぁ、なに」

「いや、なんかお前浬久があぁなってから結構黙ること多くなったから…大丈夫か?」

「大丈夫、ちょっと考えごと」

「んー、まぁ俺ら幼馴染とかじゃないし高校からの付き合いでなんも言えねぇけどよ、抱え込みすぎんなよ」

「そうそう、ちっと変わったかもだけど浬久は元気だし、お前らならすぐまた元通りだろ。
それに、あんま憂いた顔してっとお前も女子に話しかけられるぞ」

「ははっ、それは勘弁だわ」

「だろー!ならいつも通りにしとけ!それが1番!!」

「そうそう、大丈夫だ~」

 肩を組まれ、励ますように笑われて。
 浬久だけじゃなく俺にも気を遣わせて申し訳ない。
 ほんと、いい友人たちに恵まれたと思う。

 ──でも、

 (いつも通りって…なんだ……?)

 なにが大丈夫? どう接するのが正解?

 全部なくなったんだ、なにもかも。
 俺の中にはあるのにあいつの中にはない。ただの距離が近い友だち。
 俺もそれに戻れって? 無理だろ今さら。

 あともう少しだった俺たちのは、何処へやるんだ。
 捨てんのかこれを。捨てれんのか俺は

 俺は──


 足元が、ガラガラ崩れる感覚。
 少し考えればこうなることはわかってたのに。
 廊下で居心地悪そうに話す浬久と楽しそうな女子を見ながら、周りの友人と会話するので精一杯だった。




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