27 / 66
第一章
27 勝敗の行方
しおりを挟む
一方、檻の中の小蘭にも、血と砂塵にまみれた試合の全てが見えている。
小蘭は、蒼龍が樊将軍に苦戦している間にも、簪で檻の継ぎ目をつついたり、前についた錠前をいじったりして、何とか自力で逃げる方法を探していた。
ただし、試合の行方が気になり、何かあるたびその手は止まる。
――蒼龍、またあの強そうな人に倒された。さっきから何度も地を這わされ、そのたびに立ち上がっている。その姿が痛々しくて胸が締めつけられる。
(大丈夫よね、蒼龍、死なないよね?)
いくら皇帝が残虐非道でも、親子の仲が悪くても、自分の一人息子が殺されていいなんて絶対に思うはずない。そう思いたいが――。
あれほどの剣技に闘気。あれは、間違いなく強い戦士だ。直感だけれど、きっと軍の頂点に立つくらいの。そんな人と闘わせるなんて。
そこまで考え、小蘭は小さく首を横に振った。
(ううん、まずは彼を信じよう)
それでも何とか試合の体裁を保っている蒼龍はやはり強いのだ。彼ならきっと、勝ってくれる。
ふいに目頭が熱くなり、ほろりと雫が頬を伝った。
(ごめんね、蒼龍)
きっと凄く痛いだろう。自信家の彼が、そう何度も転がされたら、恥ずかしくて悔しいだろう。
そうよ、私だって蒼龍にばかり頼ってはいられない。存分に、力を出して闘って、負けたら負けたでそれでいい。
私のために、ボロボロになって挑んでくれている。そんな姿が、私の胸を熱く焦がしているから。
『自分の命は自分で守れ』は小さい頃からの教え。
一人でも、私はなんとか生き延びてみせる。
小蘭は首を強く横に振ると、再び、錠前を壊しにかかった。
一方、何度倒されてもしつこく立ち上がる蒼龍に、苛々と身体を揺らす人物がいた。
覇皇帝だ。
彼は、あの夜閨に忍んだ蒼龍のことを決して許してはいなかった。
罰として、彼奴が入れあげている姫を処刑し、己の無力を知らしめた上で、自分の膝下に屈服させる。
そのために、樊将軍という切り札まで持ち出したというのに。
皇帝は、苛立ちを噛み殺しながら思う。
――国のすべては自分のものだ。あの若造は、その当たり前を分かっていない。
覇皇帝は玉座の肘掛けを強く掴んだ。たまらず声を張り上げる。
「樊よ、蒼龍程度の若造に、何をてこずっておるか! 少し手加減しているのではないのか? そろそろ片をつけなくては、そなたを迎えに来ている娘親子が、待ちくたびれようぞ」
それが、人質に取られた樊将軍の息子と孫だと解るのは、樊自身と蒼龍だけ。
「娘だと? 何のことだ」
知っていて、わざとらしく大声で尋ねた蒼龍。
樊将軍は、それを恨めしげに睨んだ後、すぐに、皇帝の玉座に向かって礼を取った。
「はっ、我が帝」
樊将軍がわずかに焦り、気がそぞろになった時だった。
右足を引きずり、身体を左右にふらつかせて、立つのがやっとに見えた蒼龍が、素早く動いて将軍の左脛を払った。
「ぐ、はあっ」
将軍が、大きく叫んで尻餅をつく。初めて、樊将軍に土がついた瞬間だった。
「くっ……小癪な。皇子、手負いのフリを?」
「フン、何を今さら。油断は禁物ってのは、いつも爺に言われていたことだってえの!」
顔を歪めて笑った蒼龍は、更に強く攻勢を仕掛ける。
「ぐああっ」
ガキイィィンッ。
派手な金属音が会場に木霊し、蒼龍の剣が樊の左肩の継ぎ目に命中した。
ただし、蒼龍が効果のある打撃を与えたのはその二撃のみで、将軍は即座に体勢を立て直して応戦した。
だが、そこを境に、戦局は明らかに変わっていった。
それまでずっと押され気味だった蒼龍が、以降は樊将軍を押し、徐々に手数を増していった。
蒼龍の息は荒いが、まだ崩れていない。
対して、樊将軍の肩がわずかに上下し始めていた。
——くそっ、消耗戦で粘り勝ちしようという魂胆か。
樊将軍は歯噛みをした。
今まで、経験と技でそれを補ってきた樊将軍だが、齢六十を超える老体は、そろそろ限界に近づいている。
このままでは埒が明かない。
ならば。
「は、ああああああああああっ」
彼は、一際大きな咆哮を腹の底から響かせた。
それは彼の渾身の一撃。
反撃への備えのない必殺の剣技。
「!!」
一歩間違えば命を奪う必殺剣を、蒼龍に向けて放ったのだ。
怖い——!
喉が詰まり、剣を握る指先が一瞬だけ白くなる。
いけないと分かっていながら、思わず身体は癖のまま、勝手に左に動いてしまう。
「もらったあああっっ」
樊将軍の叫びとともに、待っていましたとばかりの迎撃が加わった。
バンッッッ!!
派手な打撃音とともに、砂埃が辺りに舞いあがる。
砂埃が舞う中、しんと会場は静まり返る。
皆が息を呑んで見守る中、やがて砂煙が風に散ると、真ん中に伏した蒼龍が現れた。
「やった、やったぞ!!!」
思わず勝利の叫びを上げる将軍。
観客席からは、悲鳴とも感嘆ともつかぬ声が聞こえてくる。
樊将軍が、伏せたままの蒼龍の前に立った。とうとう、教え子を斬り伏せてしまった。見下ろす将軍の目に暗い哀しみの影が差す。
「……だから言ったでしょう。皇子、貴方は左に避けるくせがあると。最初の一撃は脅し。本体は二撃目です」
蒼龍はピクリともしなかった。
その姿は、全観客に見えている。
無論、小蘭の檻からも。
その瞬間を、小蘭は息をするのも忘れて見守っていた。
思わず、錠前を削る手が止まる。鉄格子にしがみつき、砂の舞う中、蒼龍の姿を見付けようと目を凝らす。
「……終わったか」
皇帝は、その姿に目をやると、嗜虐的な笑みを浮かべた。
「では早速、妃の刑を――」
左手を、宙づりの檻に向かって上げる。会場全体の注意がふとそちらへ逸れたその時。
ドオオオオーンッッ。
大地を揺るがすほどの衝撃音とともに、中央に再び砂塵が舞い視界が一気に白くかき消された。
さっきまでそこにあった筈の樊将軍の姿が消えている。
息を呑む観客の目に、再び現れた光景は――。
小蘭は、蒼龍が樊将軍に苦戦している間にも、簪で檻の継ぎ目をつついたり、前についた錠前をいじったりして、何とか自力で逃げる方法を探していた。
ただし、試合の行方が気になり、何かあるたびその手は止まる。
――蒼龍、またあの強そうな人に倒された。さっきから何度も地を這わされ、そのたびに立ち上がっている。その姿が痛々しくて胸が締めつけられる。
(大丈夫よね、蒼龍、死なないよね?)
いくら皇帝が残虐非道でも、親子の仲が悪くても、自分の一人息子が殺されていいなんて絶対に思うはずない。そう思いたいが――。
あれほどの剣技に闘気。あれは、間違いなく強い戦士だ。直感だけれど、きっと軍の頂点に立つくらいの。そんな人と闘わせるなんて。
そこまで考え、小蘭は小さく首を横に振った。
(ううん、まずは彼を信じよう)
それでも何とか試合の体裁を保っている蒼龍はやはり強いのだ。彼ならきっと、勝ってくれる。
ふいに目頭が熱くなり、ほろりと雫が頬を伝った。
(ごめんね、蒼龍)
きっと凄く痛いだろう。自信家の彼が、そう何度も転がされたら、恥ずかしくて悔しいだろう。
そうよ、私だって蒼龍にばかり頼ってはいられない。存分に、力を出して闘って、負けたら負けたでそれでいい。
私のために、ボロボロになって挑んでくれている。そんな姿が、私の胸を熱く焦がしているから。
『自分の命は自分で守れ』は小さい頃からの教え。
一人でも、私はなんとか生き延びてみせる。
小蘭は首を強く横に振ると、再び、錠前を壊しにかかった。
一方、何度倒されてもしつこく立ち上がる蒼龍に、苛々と身体を揺らす人物がいた。
覇皇帝だ。
彼は、あの夜閨に忍んだ蒼龍のことを決して許してはいなかった。
罰として、彼奴が入れあげている姫を処刑し、己の無力を知らしめた上で、自分の膝下に屈服させる。
そのために、樊将軍という切り札まで持ち出したというのに。
皇帝は、苛立ちを噛み殺しながら思う。
――国のすべては自分のものだ。あの若造は、その当たり前を分かっていない。
覇皇帝は玉座の肘掛けを強く掴んだ。たまらず声を張り上げる。
「樊よ、蒼龍程度の若造に、何をてこずっておるか! 少し手加減しているのではないのか? そろそろ片をつけなくては、そなたを迎えに来ている娘親子が、待ちくたびれようぞ」
それが、人質に取られた樊将軍の息子と孫だと解るのは、樊自身と蒼龍だけ。
「娘だと? 何のことだ」
知っていて、わざとらしく大声で尋ねた蒼龍。
樊将軍は、それを恨めしげに睨んだ後、すぐに、皇帝の玉座に向かって礼を取った。
「はっ、我が帝」
樊将軍がわずかに焦り、気がそぞろになった時だった。
右足を引きずり、身体を左右にふらつかせて、立つのがやっとに見えた蒼龍が、素早く動いて将軍の左脛を払った。
「ぐ、はあっ」
将軍が、大きく叫んで尻餅をつく。初めて、樊将軍に土がついた瞬間だった。
「くっ……小癪な。皇子、手負いのフリを?」
「フン、何を今さら。油断は禁物ってのは、いつも爺に言われていたことだってえの!」
顔を歪めて笑った蒼龍は、更に強く攻勢を仕掛ける。
「ぐああっ」
ガキイィィンッ。
派手な金属音が会場に木霊し、蒼龍の剣が樊の左肩の継ぎ目に命中した。
ただし、蒼龍が効果のある打撃を与えたのはその二撃のみで、将軍は即座に体勢を立て直して応戦した。
だが、そこを境に、戦局は明らかに変わっていった。
それまでずっと押され気味だった蒼龍が、以降は樊将軍を押し、徐々に手数を増していった。
蒼龍の息は荒いが、まだ崩れていない。
対して、樊将軍の肩がわずかに上下し始めていた。
——くそっ、消耗戦で粘り勝ちしようという魂胆か。
樊将軍は歯噛みをした。
今まで、経験と技でそれを補ってきた樊将軍だが、齢六十を超える老体は、そろそろ限界に近づいている。
このままでは埒が明かない。
ならば。
「は、ああああああああああっ」
彼は、一際大きな咆哮を腹の底から響かせた。
それは彼の渾身の一撃。
反撃への備えのない必殺の剣技。
「!!」
一歩間違えば命を奪う必殺剣を、蒼龍に向けて放ったのだ。
怖い——!
喉が詰まり、剣を握る指先が一瞬だけ白くなる。
いけないと分かっていながら、思わず身体は癖のまま、勝手に左に動いてしまう。
「もらったあああっっ」
樊将軍の叫びとともに、待っていましたとばかりの迎撃が加わった。
バンッッッ!!
派手な打撃音とともに、砂埃が辺りに舞いあがる。
砂埃が舞う中、しんと会場は静まり返る。
皆が息を呑んで見守る中、やがて砂煙が風に散ると、真ん中に伏した蒼龍が現れた。
「やった、やったぞ!!!」
思わず勝利の叫びを上げる将軍。
観客席からは、悲鳴とも感嘆ともつかぬ声が聞こえてくる。
樊将軍が、伏せたままの蒼龍の前に立った。とうとう、教え子を斬り伏せてしまった。見下ろす将軍の目に暗い哀しみの影が差す。
「……だから言ったでしょう。皇子、貴方は左に避けるくせがあると。最初の一撃は脅し。本体は二撃目です」
蒼龍はピクリともしなかった。
その姿は、全観客に見えている。
無論、小蘭の檻からも。
その瞬間を、小蘭は息をするのも忘れて見守っていた。
思わず、錠前を削る手が止まる。鉄格子にしがみつき、砂の舞う中、蒼龍の姿を見付けようと目を凝らす。
「……終わったか」
皇帝は、その姿に目をやると、嗜虐的な笑みを浮かべた。
「では早速、妃の刑を――」
左手を、宙づりの檻に向かって上げる。会場全体の注意がふとそちらへ逸れたその時。
ドオオオオーンッッ。
大地を揺るがすほどの衝撃音とともに、中央に再び砂塵が舞い視界が一気に白くかき消された。
さっきまでそこにあった筈の樊将軍の姿が消えている。
息を呑む観客の目に、再び現れた光景は――。
0
あなたにおすすめの小説
大正浪漫? 夫婦契約致しました ~暗闇の中、契約夫と密やかにはぐくむ愛~
佳乃こはる
キャラ文芸
老舗製糸屋・両口屋家のひとり娘、陽毬(17)は、父の事業失敗の責任を負う形で、成金の物産商・権藤家へ嫁いだ。
それは恋ではなく、家を救うための契約の婚姻。
しかも、夫となる権藤宿禰(26)は病のため人前に出られず、屋敷の地下で暗闇に閉ざされて暮らしているという。
不安と恐れを胸に、初めて対面した夜。
陽毬が出会ったのは、噂とはまるで違う、知的で誰より暖かい心を持つ夫だった。
契約から始まった夫婦は、言葉を交わし、寄り添い、少しずつ心を育んでいく。
これは、温かな闇の中で選び合う、切なくも、けなげな愛の物語。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる
えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。
一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。
しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。
皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
冷たい王妃の生活
柴田はつみ
恋愛
大国セイラン王国と公爵領ファルネーゼ家の同盟のため、21歳の令嬢リディアは冷徹と噂される若き国王アレクシスと政略結婚する。
三年間、王妃として宮廷に仕えるも、愛されている実感は一度もなかった。
王の傍らには、いつも美貌の女魔導師ミレーネの姿があり、宮廷中では「王の愛妾」と囁かれていた。
孤独と誤解に耐え切れなくなったリディアは、ついに離縁を願い出る。
「わかった」――王は一言だけ告げ、三年の婚姻生活はあっけなく幕を閉じた。
自由の身となったリディアは、旅先で騎士や魔導師と交流し、少しずつ自分の世界を広げていくが、心の奥底で忘れられないのは初恋の相手であるアレクシス。
やがて王都で再会した二人は、宮廷の陰謀と誤解に再び翻弄される。
嫉妬、すれ違い、噂――三年越しの愛は果たして誓いとなるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる