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しおりを挟む翌日、予定になく姿を現した魔王の存在に魔族たちは驚いた。
なかでも驚いたのはゼットとイグナーだ。
守りを固め籠城するだろう魔王の元へ攻め込む計画を立てていたのにその相手がむざむざと姿を現したのだから。
「イグナー、それからゼット。この僕に喧嘩を売ったからにはそれなりの覚悟はできているんだろうな?」
突然の発言に魔族たちは何事かと顔を見合わせる。
そこへジェラルドが昨夜イグナーに襲撃されたことを話せば、ますます場は騒然とした。
あまりにもダメージを受けていないジェラルドの姿にイグナーは細い眉を怪訝そうに跳ね上げる。
その一方でゼットは舌なめずりしながら拳を掌に打ち込んだ。
イグナーの襲撃に彼は関与していないが、弁明をする気もないようだ。
「魔王サマよぉ!オレはアンタの実力を疑ってる!!なぁ、その疑惑を晴らす為にもオレと勝負しちゃあくれねぇか?!オイ!!」
「いいだろう。ただし城に被害を出す気はない。場所を変えるぞ」
そうして移ったのは闘技場だった。
大勢の野次馬たちの中から結界術が得意な数名に一帯に強固な結界を張らせた。
ぽっかりと開いた空間にレイだけが歩み出れば薄笑いを浮かべたゼットがジェラルドへと顔を向ける。
「オイオイ、魔王サマだけかぁ?そっちの頼りになる副官サマはどぉした?」
「必要ない。貴様らの相手は僕だけで充分だ。もっとも……そちらは何人だろうと構わないがな」
「っざっけんな!」
明らかな侮蔑にゼットの怒りが爆発した。
筋肉質な体が大きく膨れ上がる。
一方でイグナーは困惑していた。
魔王を実力の見合わぬ弱者だと判断したからこそ彼は今回動いた。
だが当の魔王があまりにも平然としていることに驚いているのだ。
もしや判断を誤ったのか…………背に汗を垂らしつつ焦るも、もはや彼に引く道などなかった。
足音荒く進み出るゼットと、躊躇いながらもそのあとに続くイグナー。
開始の合図と共にゼットが躍り出た。
まずは挨拶代わりと振り下ろされた拳を最低限の動きで避ける。重い拳は地面を穿ち、クレーターのように周囲を凹ませた。
巨体に似合わぬ俊敏な動きで猛攻をかけるゼットをひらりと躱す。
ゼットの背後ではイグナーが低く陰鬱な呪文を唱えていた。
バチバチと輝く雷の矢が30本ほど頭上を包囲した。
中央目掛けて一斉に放たれる矢。
その数と、味方であるはずのゼットの存在などお構いなしに放たれたそれに周囲の魔族たちが思わず声をあげる。
だが……その矢は一本たりとも目標へはたどり着かなかった。
ゼットの攻撃をなんなく躱しながらレイが軽く指を払っただけで全て空中で撃ち落とされたからだ。
「なっ!」
驚愕の声をあげたのはイグナーだけではなかった。
雷の矢自体を阻むのはそう難しくない。けれど30本ものそれを無詠唱で、しかも氷の矢を持って一瞬で相殺するのは正しく神業だ。
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