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しおりを挟む「それで……一体なにがあられたのです?」
ララによる治療がひとまず済んだところでクロノスが尋ねる。
「そうだよ!ジェラルドがこんな負傷するなんてなにが……?」
まだ激しい疲労感を感じる体を起こしつつジェラルドは語り出した。
不穏な動きをしているゼットのこと、ディードリッヒの不在を彼らが狙ってくる可能性が高く警戒していたこと。それからついさっきのイグナーとの一戦。
「そんな…………じゃあ、ジェラルドは、僕のせいで……」
「あなたは悪くありません」
「でも……!」
反論しようとしたレイは目に涙を溜め、キュッと唇を噛みしめる。
身体の横で握りしめられた手がフルフルと震えていた。
「クロノス、ララ、他のみんなも。悪いけど席を外して欲しい」
「ですがレイ様……」
「命令だ」
顔を上げたレイの瞳の強さにクロノスが折れた。
「わかりました。部屋の前で待機致します」
それは譲らないと主張する彼の言葉にコクリと頷く。
パタンと閉まる扉を見送り、鍵をかけた。
そのままジェラルドの座るソファまで戻ると、レイは胸ポケットからアンプルを取り出した。
噎せかえる様な薔薇の芳香が漂うそれを一気に飲み干す。
「レイ様?!」
驚くジェラルドをよそに、彼の足を跨ぐように圧し掛かったレイはその肩をグイッと押す。
そしてあろうことか乱暴に胸元を寛げはじめた。
「ジェラルドの血を、頂戴?」
瞳を覗き込みながら告げるそれは、問いの形でありながら拒否権などない命令と同じ。
濃い緑に一滴の蒼を落としたような瞳は清廉な色合いでありながら、魅入られるという表現がこれ以上なく似合うほどに魅惑的だった。
白い指が血管を探るように首を這う。
まるで愛撫されているような感覚に知らず背筋が震える。
「ね、いいでしょ?」
まるで暗示にかかったように無意識に頷けば「ん」と満足そうに笑ったレイが首筋へと噛みついた。
全身の血が逆流するような感覚。
「……んっ、は…………」
薄く開いた唇から淫らに零れる牙と吐息。
淡く色づいた頬も、伏せられた長い睫毛とその奥にある瞳も、全てが理性を蹂躙するようでジェラルドは固く拳を握りしめて爪を立てる。
そうしないと今にも理性を手放してレイを押し倒してしまいそうだった。
いつもより長く、強烈な吸血。
充分な血を吸ったレイはその尖った牙で自分の唇をプツリと噛んだ。
珠になる血の雫を舌で舐めとり、ジェラルドへと唇を重ねる。
「……はぁ」
血と唾液の混合物がジェラルドの喉を下ったところで熱い吐息を漏らしながら唇を放した。透明な糸が名残のように2人を繋ぐ。
「少しは、楽になった?」
上目づかいに問いかけてくるレイにジェラルドは掌で額を覆う。
「お陰様で」
顔を隠しつつ、げんなりした気分で答えた。
己の血を分け与えることでレイは相手を回復させることができる。
彼はとんでもなく再生力が高いのだ。
解毒されようと身体に残っていた影響はいまのでだいぶ癒えた。
だが心境的にはガッツリとライフポイントを削られまくった。
もはや瀕死の息だ。
「ところでレイ様……」
ジェラルドの問いを遮るようにレイは彼の唇を指で押さえる。
「僕……すごく、怒ってるんだ」
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