異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ

文字の大きさ
94 / 107

エイシオさんの訴え※アユム視点

しおりを挟む

 ソフィアさんを見た時に、俺は気が付いた。
 あの呪いを解いた時に、見えた女性の顔だった……。

 あれは沼に映ったソフィアさんの顔なんだ……。
 見た事がある? と思ったのはシャルロットちゃんとイヨン君に似ているからだった。

 涙を流すソフィアさん。
 ドレスも破れて、手も擦り切れている。
 多分、暗殺を止めようと相手の家から逃げ出す時に揉めて怪我をさせられたのだろう。

 誰にも聞かれないように、あの沼で愚痴をこぼしていたつもりが……。
 皮肉な事に黒精霊がいた沼で……エイシオさんのお父さんに呪いになってしまった。
 結果病気が悪化してソフィアさんの孤独が更に増えて苦しみ、沼で思いを吐き出し呪いが……と負の連鎖になったんだ。

 不安や寂しさが、こんなにも辛いことになってしまうなんて……。

「父上! 毒の事ですが、あれはアライグマの自作自演でした!」

 エイシオさん!?

 俺の腕の中にいたザピクロス様がもちろん怒り出したけど、口に大粒の飴玉を咥えさせた。

 最高級のとろけるように美味しい特別な飴玉だから、ザピクロス様は夢中でハムハムしだした。
 そっと耳を塞ぐように抱きしめる。
 
「どういうことだ!?」

 フレイグルスお兄さんが怒り出す。

「このアライグマは、少々意地汚い部分がありまして……タルトを独り占めしようと毒を盛ったところ量が多すぎて自滅してしまったようです」

「そ、そんな馬鹿なことがあるか!」

「あっはっは! それは面白いねぇ」

 ウルシュお兄さんは手を叩いて笑い出した。

「エイシオ兄様……」

 あ、エイシオさんがソフィアさんやイヨン君、シャルロットちゃん三人を隠すように前に立って、お父さんと向き合った。

「父上。毒事件も、この度の騒動も全て僕の責任です」

「……どういうことだ?」

「僕が次期領主と言われながらも、無責任に家を出て全てを投げ出した事から始まっています。父上が病気である事も知っていました。それなのに……もう帰るつもりもなかった。しっかり向き合い、フレイグルス兄さんに後を継いでもらわなければいけなかったのです」

「……エイシオ……」

「僕の勝手で兄弟達の未来も不安定なものにさせてしまった。ソフィア様を不安にさせ続けたのは僕のせいだ」

「エ、エイシオ様、そんな事……」

 ソフィアさんに寄り添っていたシャルロットちゃんとイヨン君も泣き出した。

「それに、あの暗殺者をやすやすと屋敷に入れてしまったのは僕の責任です。僕の連れという事で大した荷物検査もなく通してしまいました。父上を危険に晒したのも僕のせいです」

 エイシオさん……。
 俺も全然気が付かなかった。
 旅の仲間だとすっかり信じて……。

「ラミリアとも話をしました。婚約は解消します。僕には領主になる意志はありません。ですので罰になるかはわかりませんが、今回の騒動の罪は僕がロードリア家からの追放ということで許してはいただけませんか父上……!」

 そういうとエイシオさんはお父さんの前に跪いた。
 深い沈黙が部屋を包んだ。

しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。  2026/01/09 加筆修正終了

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい

夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが…… ◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。 ◆お友達の花々緒さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。 ◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。

動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする

葉空
BL
SS級治療師、ルカ。それが今世の俺だ。 前世では、野犬に噛まれたことで狂犬病に感染し、死んでしまった。次に目が覚めると、異世界に転生していた。しかも、森に住んでるのは獣人で人間は俺1人?!しかも、俺は動物アレルギー持ち… でも、彼らの怪我を治療出来る力を持つのは治癒魔法が使える自分だけ… 優しい彼が、唯一触れられる竜神に溺愛されて生活するお話。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...