家庭菜園物語

コンビニ

文字の大きさ
49 / 95

46 卵かけご飯

しおりを挟む
 ——翌朝。

「コケコッコー!」
「お父さん、鶏さんが鳴いています」
「朝になると鶏さんは鳴くもんなんだよ。卵を回収していこうか、卵は簡単に割れちゃうから優しくね」

 ソーズさんも鶏は初めて見るらしく、俺たちの回収作業を興味深そうに眺めている。
 手伝うと言ってはくれたが、あの筋肉モリモリの体で力加減を間違えたら卵が悲惨なことになりそうだったので丁重にお断りした。

「にゃーん」
「卵かけご飯ですか。この卵、生で食べても大丈夫なんですかね?」
「わん」
「にゃーん」

 大福が「問題ない」と言いってるみたいで、姉さんがそれを通訳してくれる。
 卵焼きや目玉焼きもいいけど、まずは卵かけご飯だな。これは簡単なようでいて、人それぞれの流儀や趣味趣向が出る料理でもある。

 リビングに戻り、全員分の白米と味噌汁、漬物を並べ、卵を四つ用意する。
 醤油、胡麻油、ネギ、麺つゆ、チーズ、黒胡椒、塩、おかかをテーブルに並べ、それぞれの茶碗に卵を一つずつ割り落とす。

「ほう、繊細な技ですね」
「ただ割ってるだけですけどね。まずはシンプルに醤油でどうぞ」

 ソーズさんとモモがどう食べるのか迷っているので、姉さんのをお手本にする。卵の上に醤油を少しかけ、よく混ぜてから姉さんの前に置いた。

「にゃーん」

 姉さんは迷いなくガツガツとTKGをかき込んでいく。
 その様子に大福が興奮し、俺が用意している間も、モモとソーズさんは口を半開きにして姉さんの食べっぷりを見つめていた。

 卵の数が足りなかったので、ソーズさんの分は俺と半分こにしてもらう。
 二人は意を決したように、卵かけご飯をかき込んだ。

 ——うんうん、やっぱり卵が濃厚で美味い。高級卵の風味がする。
 おかかとネギ、胡麻油を追加してみると、これもまた良い。

「にゃーん」

 姉さんも満足そうだ。
 俺のトッピングを見たモモとソーズさんが、真剣に自分のアレンジを考えている。
 そう、この“考える時間”こそが卵かけご飯の楽しみでもある。

 ソーズさんはシンプルに塩と胡麻油で勝負。悪くないが、卵かけ道はもっと深い。
 モモはチーズをご飯にのせて少し溶かし、醤油と胡麻油をブレンドしてかけていた。

 ——さすが我が娘、良いセンスだ。

「モモ様、それを自分にも一口いただけないでしょうか……」
「だめです」
「ソーズさん、行儀が悪いですよ」
「も、申し訳ございません。ぐぬぅ」

 人の食ってるものって、なぜか美味しそうに見えるんだよな。
 また来たときにでも食べさせてやるか。

 朝食後、ソーズさんが「畑を耕した経験がある」と言うので、その言葉に甘えることにした。
 モモは動物たちの世話を継続。

 俺は洗い物を済ませ、外に出たころにはソーズさんの作業はほぼ終わっていた。
 ソーズさんにはツナギを渡していたが、上半身は腰に巻き、なぜかインナーも着ずに上裸だった。

「いいぞ! ヘラ、クレス! アレスとナタリーも素晴らしい!」

 誰もいないのに誰かと話しながら鍬を動かしている。正直ちょっと怖い。

「えっと、ソーズさん?」
「ああ、これは悠殿! もうすぐ耕し終わりますよ」
「それはいいんですけど……誰と話してたんですか?」
「はっはっは! 悠殿は面白いことをおっしゃる! 筋肉との会話に決まってるではありませんか」

 笑っているが、その目は一切の曇りがない。
 いや……曇りがなさすぎて逆に怖い。やっぱりビクドの連中は危ない気がしてきた。

「終わるんだったら、木を切るのも手伝ってもらえますか?」
「木を切る……トレーニングですね!」
「いえ、ただ木を切るだけですよ」
「では行きましょう!」

 伐採する木の前で、まず俺がやってみることに。
 いつも通り切れ込みを入れ始めると、ソーズさんが頷きながら口を開いた。

「悠殿、一度止まってください。足の角度はこう、もっと振りかぶる時の筋肉の動かし方も意識してみてください」
「え、はい……」

 アドバイス通りやってみると、筋肉がいつも以上に酷使されているのがわかる。簡単に言えば辛い。
 少し休もうかと思った瞬間——

「悠殿! いい! あと五回いきましょう!」

 笑顔なのに目が笑ってない。やっぱりこの人、常識人じゃない。
 結局追加で五回やらされ、さらに謎の“一回おまけ”まで振らされた。

 その後、ソーズさんは自分の番になると、斧を美しいフォームで振り続けたが……逆サイドを切らずに木を倒し、しかもそれを片手で受け止め、頭上に持ち上げてスクワットを始めた。

 ——いや、俺もこれやらされないよな?

 精神的にも肉体的にも疲労感マックスのまま家に戻ろうとした時、ソーズさんがふと足を止めて空を見上げた。
 モモや大福、姉さんも同じ方向を見つめる。

「みんなどうしたんだ?」
「あれは竜ですね」

 その言葉の直後、映画に出てくるようなドラゴンが真っ直ぐこちらへ飛んでくる——。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル
ファンタジー
 異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!  主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。  亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。  召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。  そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。  それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。  過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。 ――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。  カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

弓術師テイマー少女の異世界旅 ~なぜか動物系の魔物たちにめちゃくちゃ好かれるんですけど!?~

妖精 美瑠
ファンタジー
高校弓道部の部長・赤上弓美は、大学合格発表の日に異世界クラシディアへ突然転移してしまう。 弓道一筋で真面目な彼女には密かな悩みがあった。それは“動物にだけはなぜか嫌われてしまう体質”――。 異世界で女神様に謝罪されながら三つの能力と「テイマー」という職業を与えられ、さらに容姿まで10歳の赤髪少女に変わってしまった弓美。 それなのに、なぜか動物系の魔物たちにはやたらと懐かれまくって……? 弓術師+テイマーという職業を駆使し、回復・鑑定・アイテムボックスまで兼ね備えた万能少女となったユミは、 この世界で出会いと冒険を重ねながら、魔物たちに囲まれて異世界旅を始めていく! 弓術師&テイマーになった幼女、癒しスキルでモフモフ魔物に囲まれてます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー ※素人ですが読んでくれると嬉しいです。感想お待ちしています。 毎週月曜日12時公開です。

書道が『神級』に昇格!?女神の失敗で異世界転移して竜皇女と商売してたら勇者!聖女!魔王!「次々と現れるので対応してたら世界を救ってました」

銀塊 メウ
ファンタジー
書道が大好き(強制)なごくごく普通の 一般高校生真田蒼字、しかし実際は家の 関係で、幽霊や妖怪を倒す陰陽師的な仕事 を裏でしていた。ある日のこと学校を 出たら目の前は薄暗い檻の中なんじゃ こりゃーと思っていると、女神(駄)が 現れ異世界に転移されていた。魔王を 倒してほしんですか?いえ違います。 失敗しちゃった。テヘ!ふざけんな! さっさと元の世界に帰せ‼ これは運悪く異世界に飛ばされた青年が 仲間のリル、レイチェルと楽しくほのぼの と商売をして暮らしているところで、 様々な事件に巻き込まれながらも、この 世界に来て手に入れたスキル『書道神級』 の力で無双し敵をバッタバッタと倒し 解決していく中で、魔王と勇者達の戦いに 巻き込まれ時にはカッコよく(モテる)、 時には面白く敵を倒して(笑える)いつの 間にか世界を救う話です。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

処理中です...