家庭菜園物語

コンビニ

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47 竜

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「ど、ドラゴンだああああ! なんで!? ここって結界があるんじゃないの!? 大福様! 助けて!」

 大福様、サイゼ様! お助け!

「わん」
「にゃーん」

 ……いつの間に二人とも来てたんだよ。

「え、問題ない? 俺の知ってる人? いやいや、ドラゴンの知り合いなんていないんだけど」

 遠くに見えていたドラゴンが、ぐんぐん近づいてきて目の前に降り立つ。
 二階建ての一軒家くらいの大きさがあり、迫力満点だ。
 近くで見ると怖い顔をしているけれど、鱗が陽に反射して輝き、美しい。

 大福の後ろに隠れていると、ドラゴンの背から人が降りてきた。その中の一人は、俺がよく知っている人物だった。

「ドナルさん!」
「兄貴」

 相変わらず口数の少ない彼とハグを交わし、握手をする。元気そうで何よりだ。
 モモもぺこりと頭を下げると、ドナルさんはモモの頭を優しく撫でた。

 そして——このドラゴンとカピバラいるんだけど。
 二足歩行している姿がめちゃくちゃ可愛い。

「ドナルさん、こちらの方々は?」
「彼は少々口下手ですので、自分から挨拶をさせてもよいですかね」

 ……モフモフしてぇ!

「僕はクルーク。よろしくね」
「えっと、悠です。それと娘のモモ、姉の杏、犬の大福です」

 カピバラのクルークさんが、一人ひとりと丁寧に握手を交わしていく。
 この世界にカピバラ種がいるなんて、初めて知った。

「あたしも挨拶したいんだけど!」
「ど、ドラゴンが喋った!?」
「驚かせてすみません。この方は王坂国の竜王様の妹君でして」

 ドラゴンが光ったかと思えば、あっという間に尻尾の生えた、赤いショートカットの可愛らしい少女が現れた。

「あたしはヒガシ・カイラだ!」

 王様の妹って、かなり偉い立場だよな? ……跪いた方がいいのか?

「わん」
「聖獣様、お邪魔いたします」

 妹さんも含め、全員が大福の前に正座して頭を垂れている。
 やっぱり大福って、王様以上に偉かったりするんじゃないか?

「にゃーん」

「この地の主なら堂々としていろ」って……いや、俺は管理人みたいなもんですけど。

「わん!」
「えっと……ごめんなさい」

 どうやら妹ちゃんは、大福に何か注意されてしょんぼりしているようだ。

「にゃーん」

 空から来るのは今回限りで、ちゃんと歩いてくるように——そんな感じのことを言っているらしい。
 この土地には、この土地なりのルールがあるのかもしれない。

 それにしても、なんでまた王様の妹なんて偉い人が、こんなところに来たんだろう。
 大福との話を終えたカイラちゃんが、てけてけとこちらに歩いてくる。
 ……目的は俺ではなく、後ろに隠れているモモのようだ。

 俺を挟んで覗き込むカイラちゃんと、それを避けるように隠れるモモ。
 微笑ましいやり取りだ。

「モモ、カイラちゃんは挨拶したんだから、モモも挨拶しなさい」
「えっと、モモです」
「お前がモモか! さくら様から聞いたぞ!」

 ……さくらさん? あの人、王坂に寄って行ったのか。

「モモ、カイラちゃんを案内してあげたらどうだ?」
「はい……」

 少し緊張しているのかもしれない。
 同年代っぽいし、いい友達になれそうだ。
 モモは渋々といった様子で、カイラちゃんを連れて牛小屋へ向かっていった。

「子供は無邪気でいいですねー。ああ、挨拶が遅れました、『武神』殿」
「そんな大層な者ではありません。自分は一介の坊主に過ぎません。王坂の四天王と言われるヒラカタ殿に会えるとは感激です」

 和やかそうに握手しているけれど、なんか意味深な雰囲気だ。
 武神とか四天王とか……何それ? ねぇ、ドナルさん教えてよ。

「兄貴」

 いや、頷かれたあとに「兄貴」って言われても理解できないんですけど!?

「立ち話もなんですから、お茶を出しますよ」

 モモたちの様子が見える縁側に案内し、麦茶を出す。

「それで、クルークさんはどんな話でここまで来られたんですか?」
「悠殿から、ガンジュがお預かりした大豆の種ですが、無事に豊作となりまして。そのお礼を兼ねて参りました」
「そうなんですか! よかったー、心配してたんですよ」
「クルーク殿、豊作とは……どういうことですか?」

 ソーズさんが驚きと興味を入り混ぜた表情で問いかける。
 他の地域や国では、作物の収穫は大変なんだもんな。

「落ち着いてください。我々は悠殿から託された種を栽培していたのですが、見事に成功しました。もしソーズ殿にその気があれば、国として協力関係を結びたいと考えています」
「なるほど、詳しく教えていただけますか」


 ——発育状況などを説明する中で、「総選挙」という単語が出てきた。
 最終的にソーズさんは立ち上がり、腕を組んだまま考え込むように歩き森の方に行ってしまった。

「ふふっ、やはり話が早い。武勇だけの方ではないですね」
「ところで、総選挙って何なんですか?」

 クルークさんの説明によれば、三年に一度、ビクドのトップ五を決める“神五”という行事があり、ソーズさんにはその参加資格があるらしい。
 神五ねぇ、アイドルとかで似たようなの聞いたことがあるな。

 なんでもガンジュさんの提案で、作物の栽培方法を他にも広げる予定だが、下手に広めると作物目当てで戦争になる可能性もあるため、慎重に進めているそうだ。

「なんか、かえって迷惑かけちゃいましたかね?」
「とんでもないですよ! 悠殿のおかげで光が見えてきました。僕もやりがいがあります」
「それはよかったです。でも、ソーズさんはなんであんなに迷ってるんですかね」
「目立つことを好まない方のようです。それにビクドは権力争いが激しい国。嫌気が差しているのかもしれませんし、自己研鑽に専念したいのでしょう」

 ソーズさんから聞く限りでは楽しそうな国だったけど、やっぱり裏の事情もあるんだな。
 それでも、彼が嘘をついていたとは思えないし、きっといい国なんだろう。

「ソーズさん以外に話を持っていくのは無しなんですか?」
「難しいですね。我々にパイプがないのもありますし、あそこまで誠実で高位の僧侶は彼以外にいません。総選挙に出てくれれば、神五入りは間違いないでしょうし、彼に付いてくる僧侶も多いはずです。もし乗ってくれない場合は、竜王様に持ち帰って再考する必要がありますね」

 政治って大変だな……俺が渡した種がきっかけになってるだけに、慎重に扱わないといけないか。

「なんにしても、ソーズさんに会えたのは幸運でした。これも神の思し召しかもしれませんね」
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