底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路

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第二章 底辺配信者、畑を手に入れる

第12話 姫をダメにするスライム

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 ギルドに帰った後、メイヴィス姫は受付のお姉さんに叱られた。もう、お迎えの騎士が来ている。

「メイヴィス姫、ご無事なのは何よりですが、王国に黙って出ていかれては困ります」

「だって、またお見合いの話なんだもん。もううんざりよ」

 姫様は、見合いの席で脱走してきたらしい。

「そうおっしゃいますが、お世継ぎを産んでいただかないと」

「わたし、エルフの夫なんてイヤよ。ナルシストだし、頭が前時代的だし」

「とはいえ、ドワーフの男は、もっとひどいですよ? 亭主関白で、大酒飲みですよ?」

「だから、わたしに結婚する気なんてないのよ」

 受付のお姉さんの言葉にも、姫は耳を貸さなかった。

「どうして、結婚をしたがらないんです?」

 コルタナさんに、質問してみる。

「エルフは、寿命が長いからよ」

 そっか。コルタナさんだって、二〇〇歳を超えているんだよね。ずっと付き添わないといけないから、配偶者選びは慎重にならざるを得ない。

「とにかく、帰らないから。父上にもそうお伝えなさい」

「勝手は困ります、姫様!」

「コルタナが一緒だから問題ない、と言っておきなさい」

 突然ムチャぶりをされて、コルタナさんが困惑している。

「今日は、我々が面倒を見るわ」

「いいでしょう。ダンジョン以外なら、メイヴィス姫もムチャができませんし」

 コルタナさんと受付さんが話し合う。

 姫は「やった」と腕を上げた。

『よかったですなあ、姫様』

「母国を脱走した甲斐があったわ」

 メイヴィス姫は、ボクたちの家に泊まることになる。

「おお、もう改装ができてる」

「異世界からお姫様が来るってんで、大急ぎで改修した」

 王族がお泊りすることは、ボクの動画ですぐに伝わっていた。建築会社は急ピッチで、ボクの家を改造してくれたという。

「ベッドまでついてる」

 お姫様がお泊りするためか、寝室が一新されていた。

「お礼を言うわ、戦士センディ」

「代金は、王族が持ってくれるらしいからよお。問題ないって」

 センディさんには、多額の報酬が振り込まれているという。 

「ではお世話になるわね。ツヨシ。ワラビちゃん」

「よろしくお願いします。じゃあ、お風呂をどうぞ」

 ボクは浴室に向かい、お風呂を沸かす。

「いい香り。薬草よりキツくない。それでいて、雑草より土臭くないわ」

 メイヴィス姫が、深呼吸をする。

「畳の匂いだね」

 浴室から音楽が鳴って、お風呂が沸いたことを知らせる。

「ワラビちゃんと一緒に入っても?」

「どうぞ」

「じゃあ、遠慮なく」

 姫がオフロに入っている間に、従者のコンラッドから話を聞く。

「メイヴィス姫様って、地球に何をしに来たの?」

『あなたに会いに来たのだ。注目のスライム使いに』

 それは、ダンジョンでも聞いた。

「ボクの活動って、異世界でも配信されているの?」

『こんな感じで、我が世界でも公開されている』

 コンラッドが、手をかざす。

 手の上から、モニターのようなウインドウが映し出される。こちらの文明より、進んでいるじゃないか。

『向こうには、スマホといった高度な文明はないからな』

「それでも、すごいじゃないか」

 この機能があったら、スマホいらずだ。向こうの世界は、自分たちの利便性を知らないのかな?

『情報伝達、いわゆる動画配信程度しかできんのだ』

「十分すぎるよ」

『誰でも持っているから、最新機種を見せびらかしてイキったりできん』

「イキってる人の方が、おかしいんだよ」

 見栄を張るためにお買い物なんて、散財もいいところだよ。

「異世界にも、配信があるんだね?」

『我が世界が、こちらにどの程度影響を及ぼしているか、チェックが必要なのだ』

 大昔から、異世界と地球は繋がっていた。とはいえ、どの程度世間に認知してもらうかが課題だったという。ネットや配信業が普及し、政府はようやくダンジョンの存在を世間に公表した。それでも、理解してもらうまでまた数十年かかるわけだけど。

「ところで、遅いね」

 姫が入浴して、結構な時間が経っている。

「髪を乾かしてるんじゃね? 姫様、髪が長かっただろ?」

「ちょっと、様子を見てくるわ」

 料理の手を止めて、コルタナさんが浴室へ。

「ワラビちゃんを抱きしめながら、ぐでーっ、てなっていたわ」

 呆れ顔で、コルタナさんは戻ってきた。

 のぼせていないなら、放っておくか。

「お風呂をいただいたわ」

 さらに三〇分が経ち、メイヴィス姫が湯気を連れてきた。お泊りセットなのか、モコモコのパジャマ姿になっている。外泊前提で脱走してきたのか。

「ワラビちゃん、すごすぎでしょ。一瞬でわたしの髪を乾燥させるし、デトックスまでしてくれたわ」

「いい香りがしました」

 ワラビも、お姫様と交流できて楽しそう。 

「えと、一応、ご両親に報告しておいたほうがいいよね?」

「それもそうね。あなたのスマホを、お借りしていいかしら?」

 どうせなら、配信で伝えたいそうだ。

「父上、母上。メイヴィスです。わたしは無事よ」

 まずメイヴィス姫は、お見合いをダメにしたことを詫びる。

「しばらくは、地球にとどまるわ。もっと自分に何ができるか見つめ直したいの。このお屋敷を拠点として」

「え!?」

 こちらで当分世話になることを、姫様が告げたんだけど?

(第二章 完)
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