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第二章 底辺配信者、畑を手に入れる
第11話 異世界の姫 メイヴィス
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ボクたちができることなんてなにもないほど、ゴーレムは強かった。見た目はゴテゴテの西洋甲冑なのに、やけに素早い。マントをたなびかせて、単身で魔物を葬っていく。
『ふんふん!』
両手持ちの剣を軽々と振り回し、大型の盾で飛びかかるウルフを殴り飛ばす。常人では考えられない動きだ。あんな激しい攻撃を繰り返しているのに、まったく疲労している風に見えない。
「マスターツヨシ。あのゴーレムは、我々よりレベルが高いモンスターに思えます」
あれがゴーレムか。
「今のうちに。メイヴィス様!」
コルタナさんが、サモナー少女のもとに飛び出す。少女を抱き起こして、ポーションを飲ませる。
「ケガは、ないようね。起きられますか、メイヴィス様?」
少女は、コルタナさんが呼びかけると、目を開けた。
「あなたは、コルタナね? ということは、異世界にたどり着けたようね?」
ポーションのおかげか、本人の性格からか。少女はケロッと良くなったようだ。ピンチだと言うのに、表情は明るい。
「見た目が我が世界とほぼ同じ迷宮だから、単に迷っただけだと思ったわ」
「ご無事ですか?」
「召喚モンスターと一緒にここへ来たせいで、転移魔法に酔ってしまったみたい」
「またムチャをなさって」
「だって、コンラッドがついていくってうるさいんだもの」
姫の護衛をしているゴーレムは、コンラッドという名前らしい。
「どうして、ダンジョンなんかに」
「わたしは、例のスライムテイマーに会いに来たのよっ。あのかわいいスライムちゃんを、実際にこの目で見に来たの。配信だけでは、物足りないわ」
異世界にも、配信されているなんて、知らなかった。
ボクに会いに来たのか。
でも、呑気に会話なんてできる状況じゃないね。
騒ぎを聞きつけてか、ボスが現れてしまった。あるいは、ある程度ザコモンスターを倒すと出てくる仕様なのか。
敵は、大型のゴーレムだった。森の大木より大きい。
「ウッドゴーレムよ!」
『ムム。大将も、ゴーレムか。アイアンゴーレムの力を受けてみよ!』
大剣を振るって、コンラッドがゴーレムに切りかかった。
ウッドゴーレムは、両断される。
しかし、すぐに再生してしまった。棍棒で、コンラッドは弾き飛ばされてしまう。
『ムー。面妖なっ!』
剣で受け止めたが、コンラッドはかなり遠くへ飛んでいった。
「再召喚!」
メイヴィス姫が、コンラッドを再度呼び戻す。
『なんの、まだまだ!』
相手の棍棒に対して、コンラッドは盾で迎え撃つ。
今のうちに、ボクたちも攻撃を仕掛けた。
センディさんが、一番弱そうな足を攻撃する。
しかし、ゴーレムはヒザをついただけ。また、再生してしまう。
「マスターツヨシ、ゴーレムであんな再生能力はありえません」
「他のモンスターの気配を感じる?」
「はい。あれの体内から」
力でねじ伏せても、また再生する。ならばどこかに、操っているモンスターがいるはず。
「マスターツヨシ、あの作戦で」
「よし!」
ボクは、平らになったワラビの上に乗る。スノーボードの要領で、ゴーレムを滑り上がっていった。
ゴーレムも、ボクをつかもうともがく。
そうそう簡単に、ワラビを捕まえさせるか。
「ワラビ、弱点は、見つかった?」
「いました。背中です!」
「コンラッドさん、センディさん!」
ボクは二人に指示を出して、注意を引き付けてもらう。
「ワラビ、氷魔法で表面を固くして」
「はいっ。フロストノヴァ」
フロストノヴァという魔法は、一瞬だけ氷の爆発を起こして、対象を凍らせる魔法だ。
こんな攻撃で、ゴーレムが氷漬けになるとは、ボクも考えていない。
やはり、ゴーレムは身体を震わせて氷結から逃れようとする。
だが、その一瞬だけでいい。少しだけ動きを止められれば、こちらの勝ちだ。
「見つけたぞ!」
背中に、小さいアリが。コンソールを猛烈な勢いで叩き、ゴーレムを動かしている。
アリがこちらに気づいて、振り返った。
同時に、ボクは剣でアリを潰そうとする。
しかし、アリはゴーレムの中に潜ってしまった。
「敵の位置はわかる、ワラビ?」
「おまかせを。います。すぐ近く!」
「くらえええ!」
ボクは、ゴーレムの装甲を貫く。敵は硬い表皮に覆われていたが、センディさんが作ってくれた剣がやすやすと突き抜けていった。
剣に、アリを潰した感触が伝わってくる。
ウッドゴーレムが、動きを止めた。ゴーレムの周りに、ツタが絡まっていく。あっという間に、敵ボスはオブジェクトに変わった。
「この状態だったゴーレムを、アリが悪さしたのか」
「ボスは、アリだったようですね」
力が抜けて、ボクはズルズルとゴーレムから滑り落ちる。
「やったわ! あなたすごいのね。さすが、異世界で大バズリしているだけあるわね!」
メイヴィス姫が、ボクに抱きつこうとした。
「邪魔よ! ファイアランス!」
突然、姫様はボクに向かって炎の矢を飛ばしてきた。ボクには、興味ないのかな?
かと思ったら、ファイアランスはボクの座っている場所のスレスレに叩き込まれた。
そこには、毒々しい色をしたヘビ型の魔物が。
「ケガはないかしら? これで助けてくれたお礼だなんて、いうつもりはないのだけれど」
メイヴィス姫が、杖をしまう。
「ありがとうございます」
「ごあいさつが遅れたわね。わたしはメイヴィス・サマーヘイズ。コルタナと同じ世界から来た、エルフの王族よ」
『ふんふん!』
両手持ちの剣を軽々と振り回し、大型の盾で飛びかかるウルフを殴り飛ばす。常人では考えられない動きだ。あんな激しい攻撃を繰り返しているのに、まったく疲労している風に見えない。
「マスターツヨシ。あのゴーレムは、我々よりレベルが高いモンスターに思えます」
あれがゴーレムか。
「今のうちに。メイヴィス様!」
コルタナさんが、サモナー少女のもとに飛び出す。少女を抱き起こして、ポーションを飲ませる。
「ケガは、ないようね。起きられますか、メイヴィス様?」
少女は、コルタナさんが呼びかけると、目を開けた。
「あなたは、コルタナね? ということは、異世界にたどり着けたようね?」
ポーションのおかげか、本人の性格からか。少女はケロッと良くなったようだ。ピンチだと言うのに、表情は明るい。
「見た目が我が世界とほぼ同じ迷宮だから、単に迷っただけだと思ったわ」
「ご無事ですか?」
「召喚モンスターと一緒にここへ来たせいで、転移魔法に酔ってしまったみたい」
「またムチャをなさって」
「だって、コンラッドがついていくってうるさいんだもの」
姫の護衛をしているゴーレムは、コンラッドという名前らしい。
「どうして、ダンジョンなんかに」
「わたしは、例のスライムテイマーに会いに来たのよっ。あのかわいいスライムちゃんを、実際にこの目で見に来たの。配信だけでは、物足りないわ」
異世界にも、配信されているなんて、知らなかった。
ボクに会いに来たのか。
でも、呑気に会話なんてできる状況じゃないね。
騒ぎを聞きつけてか、ボスが現れてしまった。あるいは、ある程度ザコモンスターを倒すと出てくる仕様なのか。
敵は、大型のゴーレムだった。森の大木より大きい。
「ウッドゴーレムよ!」
『ムム。大将も、ゴーレムか。アイアンゴーレムの力を受けてみよ!』
大剣を振るって、コンラッドがゴーレムに切りかかった。
ウッドゴーレムは、両断される。
しかし、すぐに再生してしまった。棍棒で、コンラッドは弾き飛ばされてしまう。
『ムー。面妖なっ!』
剣で受け止めたが、コンラッドはかなり遠くへ飛んでいった。
「再召喚!」
メイヴィス姫が、コンラッドを再度呼び戻す。
『なんの、まだまだ!』
相手の棍棒に対して、コンラッドは盾で迎え撃つ。
今のうちに、ボクたちも攻撃を仕掛けた。
センディさんが、一番弱そうな足を攻撃する。
しかし、ゴーレムはヒザをついただけ。また、再生してしまう。
「マスターツヨシ、ゴーレムであんな再生能力はありえません」
「他のモンスターの気配を感じる?」
「はい。あれの体内から」
力でねじ伏せても、また再生する。ならばどこかに、操っているモンスターがいるはず。
「マスターツヨシ、あの作戦で」
「よし!」
ボクは、平らになったワラビの上に乗る。スノーボードの要領で、ゴーレムを滑り上がっていった。
ゴーレムも、ボクをつかもうともがく。
そうそう簡単に、ワラビを捕まえさせるか。
「ワラビ、弱点は、見つかった?」
「いました。背中です!」
「コンラッドさん、センディさん!」
ボクは二人に指示を出して、注意を引き付けてもらう。
「ワラビ、氷魔法で表面を固くして」
「はいっ。フロストノヴァ」
フロストノヴァという魔法は、一瞬だけ氷の爆発を起こして、対象を凍らせる魔法だ。
こんな攻撃で、ゴーレムが氷漬けになるとは、ボクも考えていない。
やはり、ゴーレムは身体を震わせて氷結から逃れようとする。
だが、その一瞬だけでいい。少しだけ動きを止められれば、こちらの勝ちだ。
「見つけたぞ!」
背中に、小さいアリが。コンソールを猛烈な勢いで叩き、ゴーレムを動かしている。
アリがこちらに気づいて、振り返った。
同時に、ボクは剣でアリを潰そうとする。
しかし、アリはゴーレムの中に潜ってしまった。
「敵の位置はわかる、ワラビ?」
「おまかせを。います。すぐ近く!」
「くらえええ!」
ボクは、ゴーレムの装甲を貫く。敵は硬い表皮に覆われていたが、センディさんが作ってくれた剣がやすやすと突き抜けていった。
剣に、アリを潰した感触が伝わってくる。
ウッドゴーレムが、動きを止めた。ゴーレムの周りに、ツタが絡まっていく。あっという間に、敵ボスはオブジェクトに変わった。
「この状態だったゴーレムを、アリが悪さしたのか」
「ボスは、アリだったようですね」
力が抜けて、ボクはズルズルとゴーレムから滑り落ちる。
「やったわ! あなたすごいのね。さすが、異世界で大バズリしているだけあるわね!」
メイヴィス姫が、ボクに抱きつこうとした。
「邪魔よ! ファイアランス!」
突然、姫様はボクに向かって炎の矢を飛ばしてきた。ボクには、興味ないのかな?
かと思ったら、ファイアランスはボクの座っている場所のスレスレに叩き込まれた。
そこには、毒々しい色をしたヘビ型の魔物が。
「ケガはないかしら? これで助けてくれたお礼だなんて、いうつもりはないのだけれど」
メイヴィス姫が、杖をしまう。
「ありがとうございます」
「ごあいさつが遅れたわね。わたしはメイヴィス・サマーヘイズ。コルタナと同じ世界から来た、エルフの王族よ」
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