転生特撮ヲタ、異世界でダークエルフの霊にそそのかされてパワードスーツの開発をして、世界を救うことに。俺は特撮フィギュアが作りたいだけなのに。

椎名 富比路

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第二章 猛将と、闇の博士

第11話 オークロード 撃破

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 不規則に動くムチを相手に、オレは前に出られない。

 オークロードなんて、単細胞だと思っていた。が、腕力に任せたムチの打撃はさすがに強力である。

「ほらほら、さっきまでの威勢はどうした、おい?」

 かろうじて、かわすことはできる。だが、懐に飛び込めない。

「おとなしくムチの餌食になって、豚のような悲鳴をあげるんだよ、おい! ライコネン国王はしぶとかったね、おい!」
「殺したのか?」
「いや。殺したかったけどね。猛将の手下に連れて行かれたよ。ほんとはもっとかわいがってやりたかったがね」

 よかった。まだ生きているのか。

「猛将は強い男が好きなのさ、おい。強いやつと戦って勝ち、すべて奪っていくのが猛将のやり方さ、おい。女も世界も!」

 つまり、猛将もいい性格ではないってわけだ。紳士にあるまじき行為である。

 倒す口実ができた。

「でもてめえはダメだ、おい。てめえは、あたしのおもちゃにする。あたしのムチでズタズタにして、死んでもずっとムチを打ち続けてやるのさ、おい!」
「貴重な情報をありがとうよ。じゃあ、くたばれ」
「なんだと、おい!?」

 オレはムチをものともせず、前進する。

「こいつ、なんだってんだ、おい!? あたしのムチを、耐えるなんておい!?」
「貴様のムチが、軽すぎるだけだ。何を言ってやがる?」

 やはりコイツは、格下としか戦った経験がない。腹筋女子の割に、やたら肌がキレイだと思ったのだ。

 ジーンの身体は、ビキニアーマーの下は隅々までキズだらけだった。回復魔法を施されたとしても、傷跡が残ってしまうのだろう。

 ブチーオもジーンと同じくらいの筋肉量かと思っていたが、技が軽い。ムチの性能だけに頼っている。

「よけられないから、観念したんだね、おい! いい子だ、おい。そのままボロボロになっち……おいいいいい!?」

 ムチが疲労でちぎれた。強靭なスーツに、ムチで攻撃をしすぎたせいであろう。

「スーツより、ムチのほうが先に逝っちまいやがったな?」
「なっ! どういうことだおい!?」

 ズタズタになったムチを握りしめながら、ブチーオはあとずさった。

「来るな、バケモノ。来るなよおい!?」

 玉座につまずいて、転ぶ。

「テメエの負けってこった」

 何も驚くことじゃない。

 オレは、ブチーオの顔面をアイアンクローでつかむ。そのまま立たせた。

「くそ、離せおい!」
「黙れよ」
「ぐえおい!?」

 腹パンをしたら、ブチーオは一撃で黙り込む。度胸のないやつだ。

 アイアンクローで、窓まで連れて行く。

「ま、待て待ておい! 助けてくれ、おい!」
「うるせえ。痛み全開で葬ってやるぜ」

 オレは、火力を全開にした。

 ブチーオの顔面に、火力マックスの光線を浴びせる。

 体内に光線を送り込まれ、オークロードは全身を膨らませた後、爆砕した。

 破裂したブチーオの破片が、地面へと落下していく。

 足跡に振り返ると、フローレンスとジーンだった。城内の敵は、片付いたらしい。

「終わったのか?」

 かけつけたジーンが、窓の下を見下ろす。

「ああ。ただ王様夫妻は、連れて行かれたらしい」

 猛将にさらわれたと聞くと、フローレンスは地面にへたり込む。 

「姫様!」

 ジーンが駆け寄ると、姫は毅然とした顔に戻った。

「まだ生きているなら望みはあります。が、相手が猛将となれば」

 具合が悪そうな顔になりながらも、姫は立ち上がる。

「父も心配ですが、まずは民たちの安全を確保します! 動ける人は、わたくしに続きなさい!」

 フローレンスが、兵隊たちに指示を送った。

 オレはまだ、やることがある。

「ああ、やっぱりいた」

 地下の牢屋に、大量の人々が入れられていた。

「どいてろ」

 指から光線を発し、牢の鍵を壊す。

 住民たちを、助け出した。

 その後は、また消火作業へ戻る。まだ街を燃やす火は消えていない。一刻も早く火を止めて、住民を助けなくては。

 ニョンゴのナビ機能を活用しつつ、生存者を助け出す。

「これで全員か?」
「そうみたいだ」

 助けられた住民たちは、姫が作った炊き出しに群がった。

 姫が対応に追われたちょうどそのタイミングで、他の国からの支援が。

「あとは、もう我々だけで十分だ。休んでいてくれ」

 ジーンに言ってもらえたので、オレも作業を終えることにする。

「そうさせてもらう」

 さすがに、丸一日飛びっぱなしは疲れた。

 レクシーの待つ家に、一旦帰る。

「ニョンゴ、ありがとうな」
「え? ああ、兵士たち治療は終わったよ」

 兵たちの肌を見ると、傷跡も残さずキレイに治っていた。さすが、ニョンゴの仕事は完璧だ。

 だが、オレが言いたいのはそうじゃない。

「あんたがオレに、誰かを救う力をくれた」
「キミにお礼を言われる資格なんて、ワタシにはないよ」

 しばし沈黙した後、ニョンゴが口を開く。

「ワタシは、キミを危険な戦いに巻き込んだ張本人なんだ。最初は、旅をしたかっただけだ。キミを仮初めの身体に入れる予定もなかった」
「でも、人の命を救った」

 オレはここに来て、よかった。いろんな人を助けられたんだなって、自覚できたんだ。

「よせよ。どれだけ力があっても、間違った使い方をしたら、人を傷つけるんだ」
「でも、あんたの力はたしかに、人を守る力だ」
「ありがとうね。魔女魔女って言われて図に乗っていたワタシでも、人の役に立てるんだね」
「そのとおりだ」

 しかし、オレのいた世界の文明を、悪用しているやつがいる。

「例のバイク男だね?」
「ああ。ヤツも、オレと同じ世界から来たんだろう」

 あいつとは、きっとどこかでやり合うことになる気がした。

「でも、あんたのくれたアーマーなら、なんとか倒せそうだ」
「なら安心だね」

 帰宅すると、部屋がすっかりキレイになっていたではないか。まるで違う人の家である。

「うわああ、こんなに広い家だったのか」
「自分でも、信じられないや」

 家主であるニョンゴでさえ、目を丸くした。

「だが、拡張は必要だな」

 人が一人増えたんだ。台所や寝室などは、新しく作り直しになる。なんせ、この家の台所は栄養食しか出てこない装置があるだけ。コンロもなく、レクシーはテーブルに簡易魔力コンロを置いて食事を取っていたという。

「それなんだけど、引っ越そう」
「え?」
「ライコネンとここの行き来は大変だからね。引っ越すことにする。ライコネンなら大きい土地や空き家もあるだろう。そこへ住もう」

 オレは別に構わないが、大丈夫なのか?

「平気さ。この家はマジックボックスに収納が可能なんだ。いつでも研究ができるようにね」
「どうして、ライコネンに行こうと?」
「このままだと、レクシーがずっと一人ぼっちだからだよ」

 召喚獣がいるから平気だと思う。けど、誰もいないなら遠くの街まで買い物に行く必要がある。

 街に引っ越せば、必要なものは手に入ろう。人もいるから、交流だって可能だ。

 そう考えて、ニョンゴは隠居生活を辞める決意をしたという。

「それに、ライコネンには目を光らせておきたいんだよね」

 わかる。また襲撃が来ないとも限らない。

「フローレンス姫とのパイプも、維持しておきたい。
「オレは引っ越しには賛成だ。交流は大事だからな。けど、レクシーはどうだ?」

 故郷であるエルフの里からは、結構離れてしまう。いいのだろうか?

「私は、嫁いだ身です。主人の住まう場所が、私の居場所です。ご心配なく」

 大丈夫そうだ。

「レクシー、離れていて」
「はい」

 レクシーが、召喚獣たちをしまって外へ。

 同じく外へ出たニョンゴが、ラボに光線を当てた。

 一瞬で、小さい建物が消える。

「ラボが、なくなった」
「次は、ライコネンで物件を探そう」

 オレはレクシーを連れて、ライコネンへ。
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