三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして

七転び八起き

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第26話

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 私と勇凛くんは夫婦。
 ならもう勇凛くんは我慢する必要はないんだ……。

「すみません、寝る前にこんなこと言って。なんとか耐えるんで、七海さんは寝てください」

 勇凛くんは背中を向けてしまった。

 なぜだろう。
 今までそんなにしたいとは思ったことがないのに、私は無性に勇凛くんに触れたくなった。
 私は勇凛くんの背中に体をくっつけた。

「いいよ。我慢しなくて。」

 勇凛くんが振り返った。

「……え?」
「私たち夫婦だし。……私もそういう気持ちになってきてしまって」

 暗闇で見つめ合ったままの私たちは、しばらく動けなかった。
 だんだんと距離が縮まってきて唇が触れそうになった、その瞬間──

「七海さん、今日はやめましょう」
「え?」

 どういうこと?

「今勢いでするのは……なんか違うと思うんです」

 何が?

「ちゃんと日にちを決めましょう」

 なぜ!?

「それまでにちゃんと、心の準備をします」

 勇凛くんは深呼吸をしたあと、目を瞑った。

「七海さん、おやすみなさい」

 え、え?
 私は心の準備万端だったんだけど。
 寝ちゃうの?
 キツイ!!

 私はなかなか眠りにつけなかった──

 ***

 ──朝

 やっと寝れたのは三時ごろだろうか。
 多分人生で発情したのは、これが初めてではないだろうか……。

 私が布団から起き上がると、勇凛くんも気がついて起きた。
 二人でベッドに座ってボーッとしていた。

「……七海さん、おはようございます」

 勇凛くんの表情は、心なしか力がなく虚だ。

「うん……おはよう」

 ──しばしの沈黙。

「俺、朝方まで眠れませんでした……」

 お前もかい!と心でつっこむ。
 二人で夜中に悶々として眠れなくて起きていたっていう。

「……ふふっ」

 私は笑ってしまった。

「どうしたんですか?」

 勇凛くんは戸惑っている。

「いや、私たちってもしかして、似たもの同士なのかな……」
「え?どういう意味ですか?」
「いや、いいの。気にしないで」

 二人で寝ぼけ眼で歯磨きをして、着替えて、朝ごはんを食べる。
 テレビで朝のニュースを見る。

「8時になったら行くよ」
「はい。じゃあ会社まで送ります」
「うん、ありがとう」

 一人で行く、は、勇凛くんには通用しないから、もう言うのをやめた。

 ***

 二人で玄関から出て、朝日の中を歩く。
 寝不足のせいかお互い会話が出てこない。
 でも、手が触れ合って手を繋ぐ。
 それで満たされてしまった。

 もうすぐ会社。
 よーく見ると、見たことがあるシルエット。

 森川さんだ。

 気まずい!!
 私は勇凛くんの背後に隠れた。

「どうしたんですか?」
「ごめん、ちょっとこのままでいさせて」

 しばらく身を潜めていると──

「おはよ~」

 ああ……

 勇凛くんの肩越しに見ると、ガッツリ気づかれていた。

 勇凛くん、無言。

「なんで二人ともそんな元気ないの?」

 森川さんは揶揄うように言う。
 勇凛くん、相変わらず無言。

「朝から仲がいいことで。じゃあまた後でね~」

 そう告げてビルに入る森川さん。
 微妙な空気が流れる。
 振り返った勇凛くんの顔は険しかった。

「あの人馴れ馴れしくないですか?」
「……気さくな人、なんだよね」

 でもさっきのは悪意を感じた。

「七海さん。気をつけてください」
「うん」

 勇凛くんと私は、別れを惜しむように離れた。

 ああ
 恋してるな。

 朝の空を見ながら思った。

 その時スマホに通知がきた。
 勇凛くんからだった。

『兄から連絡が来ました。土曜日に来いと言われますが、予定空いてますか?』

 土曜日……
 はやっ
 心の準備が

『予定ないよ。大丈夫』

 勇凛くんのお兄さん。

 どんな人なんだろう。
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