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第56話
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──定時
もう屍のようだ。
初日からフルスロットル。
するとまた勇輝さんが来た。
「初日にしては上出来だな」
ムカつく。
「ええ、初日にしては到底一人でこなせるとは思えないような仕事量でした」
満面の笑みで答えた。
「明日は取引先へ行く。それまでに必要なものを用意しておけ」
そう言うと出て行った。
帰ろうと思ったのに!!
まぁ元から定時に帰れるなんて思ってなかったけど……。
勇輝さんの明日のスケジュールを確認する。
するとスマホに通知が。
『お疲れ様です。仕事どうですか?大丈夫ですか?』
勇凛くんからだった。
大丈夫じゃない……けど。
『なんとかやってる!今日はまだかかるから、先に帰ってて』
既読。
『待ってます』
勇凛くん……。
私のオアシス。
「仲良しだね~」
いつの間にか背後を取られていた。
見なくてもわかる。
「勝手に見ないで下さい。何の用ですか?」
「いつ終わるの?」
「わかりません。指示されたことを終えたら帰ります」
「ふーん。手伝おうか?」
なんなんだよこいつは……!
「もう私の事は放っておいてください!」
勇哉さんを睨んだ。
なぜか笑っていない。
「なんか放っておけないんだよね。気になるっていうか」
「は?」
勇哉さんはスマホを出して誰かに電話をかけている。
「森川くーん。七海ちゃんが遊んでくれないから一緒に遊びに行こうよ~」
めんどくさいやつ!
森川さんに申し訳ない。
「仕方ないから今日は諦める。じゃあ気を付けてね」
勇哉さんは出て行った。
何を考えているか本当にわからない。
あの人と毎日こんなやりとりをしないといけないことを考えるとストレスで胃に穴が開きそうだ。
私が終わるまでずっと待っているであろう勇凛くんのために急いで仕事を終わらせようとしていた。
***
──約ニ時間後
取引先に行くのに必要なもの
なんて取引先の名前だけでわかるはずもなく、結局調べ上げてなんとか理解できた。
準備を終えて急いで勇凛くんの元へ。
駅近のカフェで待ち合わせ。
店に入ると、窓の外を眺める勇凛くんの姿が。
「勇凛くん!遅くなってごめん!」
二時間も待たせてしまった……。
勇凛くんはこちらを向いたかと思うと立ち上がった。
「七海さん大丈夫ですか!?」
「え?」
「兄に何かされませんでしたか?」
どっちの兄!?
「大丈夫だよ。仕事してただけ」
そのとき、運悪くお腹が鳴った。
昼食べてなかったんだった!
「何か食べに行きますか?」
聞かれていた。
「ううん。家帰って適当になんか食べるから大丈夫!疲れたからもう帰ろうかと」
「そうですか……」
俯いた勇凛くんを見て、そっと手を繋いだ。
勇凛くんの手の温度を感じるだけで、私の疲れは吹っ飛ぶ。
──でも
「他の社員に見られるとまずいよね……」
現実に戻った。
勇凛くんは社長の息子。
噂が立つと仕事に支障が出るかもしれない。
私たちは夫婦だけど、私は今訳あり入社であって……。
「俺は大丈夫ですよ」
微笑む勇凛くんに救われる。
誰がなんと言おうと私たちは夫婦。
「七海さん……相談があるんですけど」
「うん?」
勇凛くんは神妙な面持ちをしている。
「両親が一時的に帰国することになりまして」
え?
「俺、七海さんを紹介したいと思ってます」
こ、このタイミングで……?
またもやピンチに立たされた……。
もう屍のようだ。
初日からフルスロットル。
するとまた勇輝さんが来た。
「初日にしては上出来だな」
ムカつく。
「ええ、初日にしては到底一人でこなせるとは思えないような仕事量でした」
満面の笑みで答えた。
「明日は取引先へ行く。それまでに必要なものを用意しておけ」
そう言うと出て行った。
帰ろうと思ったのに!!
まぁ元から定時に帰れるなんて思ってなかったけど……。
勇輝さんの明日のスケジュールを確認する。
するとスマホに通知が。
『お疲れ様です。仕事どうですか?大丈夫ですか?』
勇凛くんからだった。
大丈夫じゃない……けど。
『なんとかやってる!今日はまだかかるから、先に帰ってて』
既読。
『待ってます』
勇凛くん……。
私のオアシス。
「仲良しだね~」
いつの間にか背後を取られていた。
見なくてもわかる。
「勝手に見ないで下さい。何の用ですか?」
「いつ終わるの?」
「わかりません。指示されたことを終えたら帰ります」
「ふーん。手伝おうか?」
なんなんだよこいつは……!
「もう私の事は放っておいてください!」
勇哉さんを睨んだ。
なぜか笑っていない。
「なんか放っておけないんだよね。気になるっていうか」
「は?」
勇哉さんはスマホを出して誰かに電話をかけている。
「森川くーん。七海ちゃんが遊んでくれないから一緒に遊びに行こうよ~」
めんどくさいやつ!
森川さんに申し訳ない。
「仕方ないから今日は諦める。じゃあ気を付けてね」
勇哉さんは出て行った。
何を考えているか本当にわからない。
あの人と毎日こんなやりとりをしないといけないことを考えるとストレスで胃に穴が開きそうだ。
私が終わるまでずっと待っているであろう勇凛くんのために急いで仕事を終わらせようとしていた。
***
──約ニ時間後
取引先に行くのに必要なもの
なんて取引先の名前だけでわかるはずもなく、結局調べ上げてなんとか理解できた。
準備を終えて急いで勇凛くんの元へ。
駅近のカフェで待ち合わせ。
店に入ると、窓の外を眺める勇凛くんの姿が。
「勇凛くん!遅くなってごめん!」
二時間も待たせてしまった……。
勇凛くんはこちらを向いたかと思うと立ち上がった。
「七海さん大丈夫ですか!?」
「え?」
「兄に何かされませんでしたか?」
どっちの兄!?
「大丈夫だよ。仕事してただけ」
そのとき、運悪くお腹が鳴った。
昼食べてなかったんだった!
「何か食べに行きますか?」
聞かれていた。
「ううん。家帰って適当になんか食べるから大丈夫!疲れたからもう帰ろうかと」
「そうですか……」
俯いた勇凛くんを見て、そっと手を繋いだ。
勇凛くんの手の温度を感じるだけで、私の疲れは吹っ飛ぶ。
──でも
「他の社員に見られるとまずいよね……」
現実に戻った。
勇凛くんは社長の息子。
噂が立つと仕事に支障が出るかもしれない。
私たちは夫婦だけど、私は今訳あり入社であって……。
「俺は大丈夫ですよ」
微笑む勇凛くんに救われる。
誰がなんと言おうと私たちは夫婦。
「七海さん……相談があるんですけど」
「うん?」
勇凛くんは神妙な面持ちをしている。
「両親が一時的に帰国することになりまして」
え?
「俺、七海さんを紹介したいと思ってます」
こ、このタイミングで……?
またもやピンチに立たされた……。
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