三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして

七転び八起き

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第74話

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 一人で電車に揺られ、帰る道のり。

 前までこれが当たり前の日常だった。
 仕事をして残業して、理不尽に耐えて、波風立てず目の前にあることをこなす。
 そして空っぽな心と気怠い体を引きずって歩く。

 一人で暮らす、一人で過ごす。
 気楽だけど少し寂しくて、世の中に置いて行かれているようで。

 電車の窓の外の住宅街の夜景を眺めていると、スマホにメッセージがきた。

『七海さん、今日は迷惑かけてすみませんでした。気をつけて帰ってください』

 ──勇凛くん

 君に出会わなければ、今ごろ私はどうしていただろう。
 結局不満を溜め込みながらあの会社を続けていたかな。
 転職して、その先で別の人生があったかな。

 君に出会って何もかも変わったよ。
 忘れていた大切な気持ちをたくさんくれた。
 人を愛することを知ることができた。
 守りたいと本気で思える。

 突きつけられた現実に挫けそうになったけど、出会ったことに後悔なんて一度もしたことがない。
 むしろ出会えてよかったよ。

 入院したあの日

『七海さんとなら、うまくやっていけると思うんです。これからずっと』

 って言ってくれた。

 あの時は全く想像もできなかった。
 でも、今ならはっきりと言える。
 勇凛くんとなら何があっても私はずっと一緒に歩んでいける。
 どんなに大変でも頑張れる。

 君は私と恋がしたいと言った。
 私も君に恋をした。
 その気持ちは絆になって、愛になって、私は君に永遠を誓える。

 年下でも頼りなくても、誰がなんと言おうと、私は君のことが世界で一番大切だよ。


 私はそのあと、実家の母にメッセージを送った。

『約束通り、土曜日に連れて行くね』

 そして電車から駅のホームに降りた。

 ***

 家に着いて勇凛くんにメッセージを送る。

『家に着いたよ~』

 するとすぐに

『お帰りなさい』

 と返ってきた。

 そして、念のために森川さんにメッセージ。

『どうですか……?』

 やや情緒不安定な勇哉さんを丸投げしていたから気になっていた。

 すると着信が。

「お疲れ様です!大丈夫ですか?」
『うん。なんかあの人、マリッジブルー?みたいな感じだな』
「え……なんか全くその言葉と勇哉さんが結びつかないんですけど」

 意外すぎる。

『川崎さんと勇凛くんの事見て、羨ましいって言ってたし、たぶん色々あの人なりに悩んでるんだと思う』
「そうなんですね……」
『まあ、そんな感じだから、川崎さんはいつも通りで』
「あ、はい。教えて頂きありがとうございます」
『……勇凛くん。真っ直ぐで真面目な子だな』
「はい。勇凛くんはそういう人なんです」
『二人には幸せになってほしいよ』
「え……?」
『じゃあおやすみ』

 電話は切られてしまった。

 ──森川さん

 私もあなたに幸せになってほしい。
 勇哉さんには迷惑しかかけられてないけど、あの人にだって幸せにはなってほしい。
 私の今後のためにも……。

 そして私は、勇凛くんから前もらった、勇凛くんの高校時代の弓道着姿の画像を見ながらその日を終えた。

 これも私の宝物。
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