取引先のエリート社員は憧れの小説家だった

七転び八起き

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第21話 伝えてしまった想い

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 三浦さんと映画館でばったり会ってしまった。

 三浦さんは同い年くらいの女の子と一緒にいて、手には私が見た映画と同じパンフレットを持っていた。

「ぐ、偶然ですね……」

 橘さんの顔を見れない。

「もしかして同じ映画見てたのかな……?」

「はい」

 その時、三浦さんの目が橘さんを見た。

「あ!!翠川さん!!」

 橘さんは私達を人通りのない場所に移動させた。

 三浦さんと一緒にいた女の子は、そこで帰った。

「翠川さんとまた会えるとは思わなかったです!」

 三浦さんは橘さんを尊敬の眼差しで見ている。

「……そんな事より、二人は知り合いなの?」

 橘さんは戸惑っている。

「はい!出版社のパーティーの時に忘れ物を届けてくれて……あと小説サークルで一緒です」

 三浦さん全部言いっちゃったー!!
 逃げたかった。

「あー……そうなんだ」

 橘さんからの視線が痛い。

「お二人は知り合いなんですか!?」

「はい……あるキッカケで懇意にさせて頂いてて…….」

 その時、橘さんに、強く肩を引き寄せられた。

「俺達は大人の関係だよ」

 なんでそんな言い方するの!?
 気まずい!!

「神谷さんすごい……翠川さんとプライベートで会える関係。羨ましい」

 三浦さんにとって翠川雅人は先輩作家で、三浦さんも憧れているのかな……。

「翠川先生!!俺にも指導して下さい!!」

 三浦さんはやる気に満ち溢れている。

「ちょっと今色々忙しい。あと、君は俺が指導しなくても俺も周りも認めてるよ」

 その言葉、羨ましい……!!

「じゃあ俺達もう行くから、またね」

 橘さんは私の腕を強く引っ張って連れて行こうとした。

「また会えるの楽しみにしてます!!あ、神谷さんの小説すごくよかったよ!また他のも見せてね!」

 三浦さんは手を振って爽やかに去って行った。

 私は逃げたい。

 怖い。

「どういう事か説明してもらおうか……」

 橘さんの声が地の底のように低い。

 そのまま引きずられるようにマンションに帰った。

 ◇ ◇ ◇

 橘さんの部屋で私は尋問されている。

「正直に全部詳しく話してもらおうか……」

 私は無意識に正座をしていた。

「ただ……偶然なんです全部」

「で?」

「三浦さんが言ったのが全てです」

「前忘れた小説って?」

 ヤバい、誤魔化さないと。

「……まさか、あの小説、持って行ってないよな?」

 勘づかれている……!!

「あれは俺のための小説だ。誰にも見せてはいけない……。」

 目が鋭くて、動けなくなる。

「あれは俺の前でしか見せない美鈴が描かれている」

 いつの間にか、私は床に敷かれていて、橘さんの手が肌に触れていた。

「俺だけの美鈴。他の男に見せたくない」

 強引に橘さんは私の服を剥いだ。

 体に少しずつ痕をつけていく。

 まるで自分のものと証明するかのように。

「でも……あれも私の綴った物語ですよ……」

 橘さんに唇を塞がれる。

「俺との物語だろ」

「いえ、あのキャラクターは私たちではないです」

 橘さんはお構いなしに色んな部分に這わせてくる。
 何も考えられなくなる。

「サークル……俺がいるのに、なんで」

「色んな人の作品や……創作の悩みや意見とかを共有したかったんです」

 乱れる呼吸の中、必死に答えた。

「そうか……それは悪くない。ただ……俺の心はぐちゃぐちゃだよ」

 両手を掴まれて、深く本能を揺さぶられた。

「どうすればいいんですか?」

「俺を愛してると言えよ」

 言えないってわかってるのに。

 でも、もう橘さんも限界なのはわかってる。

 ずっと悩んでた。
 夢が叶うまでって。

 でも私は……この人を──。

 不安にさせたくない。
 傷つけたくない。
 安心させたい。
 私ももう限界だ。

 その時涙が溢れた。

「美鈴……」

 橘さんが我に帰ったように止まった。

「橘さんの事……好きですよ」

 ──言ってしまった。

 言わないと決めてたのに。
 言ったら止められないって、この距離が壊れるって恐れてた。
 でも、もう遅い。

 橘さんは私を優しく包んだ。

「ごめん。言わせてごめん。でも……嬉しい」

 橘さんが私を慈しむようにキスをする。

「美鈴。俺の美鈴」

 耐えてた苦しみから私も解放されたように想いが溢れてくる。

「好きです……」

 私はちゃんと仕事でも小説でも、この気持ちを抑えてやっていけるのか……。

「私ダメになってしまうかもしれません」

「恋をしても、失恋しても、大事な人がこの世からいなくなっても、書こうと思った時に書けばいい。焦らなくていい。俺が急かした。ごめん」

 私達の関係をどう表現すればいいかわからないけど、想いを伝えてしまった。

 もう理由はいらない。

 私達が求めあう事に──
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