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第一章 再会
第8話
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私は全力で逃げた。
何も考えずに、ただ走った。
急いで駅に飛び込み、電車に飛び乗った。
心臓が壊れそうなくらい脈を打ち、
全身から汗が噴き出していた。
怖い。
もう、二度と会いたくない。
なんでこんな目に遭うの?
先生はどうして、あんなことを平気で言ってくるの?
頭がおかしくなりそうだった。
その時——
スマホに着信があった。
表示された名前は、夏雄先生。
「財布ってこれ?」
写真付きのメッセージだった。
私はすぐに返せず、画面を見たまま固まった。
全身が震えていた。
財布が先生の手にあるなら、悪用されることはないと思う。
けど……キャッシュカードも入ってるし、お金が引き出せない。
数日なら耐えられるかもしれないけど……。
なんで——
なんで逃げようとしてるのに、こうして逃げ場を塞がれていくんだろう。
朦朧とした頭で、必死に答えを探す。
……平日の日中に学校に取りに行こう。
その時間なら他の先生や生徒もいる。
職員室で受け取って、すぐ帰る。
——そう決めた。
* * *
その日は、激しい雨が降っていた。
私は傘を差しながらも、少し濡れながら母校へ向かった。
学校の事務室で、夏雄先生に用があることを伝える。
ほどなくして、先生が職員玄関まで出てきた。
あの、優しい笑顔を浮かべながら。
「はい、財布」
先生はあっさりと財布を差し出した。
「ありがとうございます……」
私はそれを受け取り、小走りで玄関を出た。
やった。
やっと——
これで、会う理由がなくなる。
……そう思ったその時。
背後から、腕を掴まれた。
振り返ると、そこにいたのは夏雄先生だった。
その表情は一変していた。
私は何が起こっているのかもわからないまま、引っ張られるようにして、体育館裏の倉庫に連れていかれた。
混乱しているうちに、私は世界から遮断された。
戸惑っていると、肩を掴まれて、先生がキスをしてきた。
それは甘さとは程遠く、息ができなくなるような、何かを奪い去るような激しさだった。
私はまともに立っていられず、その場に座り込んでしまった。
どうして……?
先生を見ると、全身が雨で濡れていて、
その表情には、どこか憂いが漂っていた。
「お前はバカだな。昨日あれだけ酷いこと言ったのに、また来て」
先生はしゃがみ込み、私をじっと見つめた。
「お前が俺を狂わせてるんだよ。自覚ないだろ?」
……何言ってるの、この人。
私は何もしてない。
「先生……私、何か怒らせてしまったんですか……?」
先生は、しばらく黙っていた。
「いや……お前は悪くない。ただ俺がお前に近づいて、お前は怯えてるのに俺に手を差しのべたり頼ってきたり、またこうしてのこのこ現れて。哀れだと思うよ」
意味が分からない。
先生は私をそっと床に倒し、虚ろな目で私の首筋に唇を寄せた。
その瞬間、頭が痺れるような感覚に襲われる。
逃げなきゃいけない——そう思ってるのに。
体がうごかない…。
どうしてだろう。
先生の言葉は刺のように痛いのに、触れてくる手は優しい。
掴まれている手首には力が入っていない。
きっと、私が本気を出せば振り払える。
なんで私は逃げないんだろう。
どうして、先生はこんな中途半端なことをするの?
気がつけば、服は少しはだけていて、先生の唇が、ろんな場所に触れていた。
わからない。
こんな状況で、こんなにも心を弄ばれたはずなのに、どうして私は受け入れてしまってるの?
先生の心が全然わからない。
自分の心もよくわからない。
でも、今わかってしまった。
こんなことをされても、私は先生に惹かれているのだと。
何も考えずに、ただ走った。
急いで駅に飛び込み、電車に飛び乗った。
心臓が壊れそうなくらい脈を打ち、
全身から汗が噴き出していた。
怖い。
もう、二度と会いたくない。
なんでこんな目に遭うの?
先生はどうして、あんなことを平気で言ってくるの?
頭がおかしくなりそうだった。
その時——
スマホに着信があった。
表示された名前は、夏雄先生。
「財布ってこれ?」
写真付きのメッセージだった。
私はすぐに返せず、画面を見たまま固まった。
全身が震えていた。
財布が先生の手にあるなら、悪用されることはないと思う。
けど……キャッシュカードも入ってるし、お金が引き出せない。
数日なら耐えられるかもしれないけど……。
なんで——
なんで逃げようとしてるのに、こうして逃げ場を塞がれていくんだろう。
朦朧とした頭で、必死に答えを探す。
……平日の日中に学校に取りに行こう。
その時間なら他の先生や生徒もいる。
職員室で受け取って、すぐ帰る。
——そう決めた。
* * *
その日は、激しい雨が降っていた。
私は傘を差しながらも、少し濡れながら母校へ向かった。
学校の事務室で、夏雄先生に用があることを伝える。
ほどなくして、先生が職員玄関まで出てきた。
あの、優しい笑顔を浮かべながら。
「はい、財布」
先生はあっさりと財布を差し出した。
「ありがとうございます……」
私はそれを受け取り、小走りで玄関を出た。
やった。
やっと——
これで、会う理由がなくなる。
……そう思ったその時。
背後から、腕を掴まれた。
振り返ると、そこにいたのは夏雄先生だった。
その表情は一変していた。
私は何が起こっているのかもわからないまま、引っ張られるようにして、体育館裏の倉庫に連れていかれた。
混乱しているうちに、私は世界から遮断された。
戸惑っていると、肩を掴まれて、先生がキスをしてきた。
それは甘さとは程遠く、息ができなくなるような、何かを奪い去るような激しさだった。
私はまともに立っていられず、その場に座り込んでしまった。
どうして……?
先生を見ると、全身が雨で濡れていて、
その表情には、どこか憂いが漂っていた。
「お前はバカだな。昨日あれだけ酷いこと言ったのに、また来て」
先生はしゃがみ込み、私をじっと見つめた。
「お前が俺を狂わせてるんだよ。自覚ないだろ?」
……何言ってるの、この人。
私は何もしてない。
「先生……私、何か怒らせてしまったんですか……?」
先生は、しばらく黙っていた。
「いや……お前は悪くない。ただ俺がお前に近づいて、お前は怯えてるのに俺に手を差しのべたり頼ってきたり、またこうしてのこのこ現れて。哀れだと思うよ」
意味が分からない。
先生は私をそっと床に倒し、虚ろな目で私の首筋に唇を寄せた。
その瞬間、頭が痺れるような感覚に襲われる。
逃げなきゃいけない——そう思ってるのに。
体がうごかない…。
どうしてだろう。
先生の言葉は刺のように痛いのに、触れてくる手は優しい。
掴まれている手首には力が入っていない。
きっと、私が本気を出せば振り払える。
なんで私は逃げないんだろう。
どうして、先生はこんな中途半端なことをするの?
気がつけば、服は少しはだけていて、先生の唇が、ろんな場所に触れていた。
わからない。
こんな状況で、こんなにも心を弄ばれたはずなのに、どうして私は受け入れてしまってるの?
先生の心が全然わからない。
自分の心もよくわからない。
でも、今わかってしまった。
こんなことをされても、私は先生に惹かれているのだと。
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