【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―

七転び八起き

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第46話 本当の笑顔

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次の出勤日、私は指輪をつけて会社に行った。  

デスクに着く前にまた秋月さんと視線があった。  
胸が少しざわついたけど、私の心に迷いはなかった。  
何もなかったかのようにまた仕事をする。  

そして、お昼休憩に同じグループの先輩たちとご飯を食べる。  

「あ、秋月さん会社辞めるみたいだよ」  

え……?  

「えーーー!」  

もう一人の先輩が大きな声で不満を言う。  

「モチベ下がる!!」  

「次の上司変な人だったらすごい嫌なんだけど……」  

「なんで辞めるんだろうね」  

「離婚したから?よくわからないけど」  

その時、先輩たちの視線が私の指輪に向いた。  

「え、藤田さん彼氏いるの!?」  

「この指輪、雑誌で見たことあるんだけど……」  

「すごい羨ましい」  

その後いろいろ詮索されたけど、適当に答えた。  

私はお昼を食べ終わった後、秋月さんの退職理由が気になって仕方なかった。  

でも、聞いてしまうとまた心がざわつくかもしれないから、このまま知らない方がいいのか……。

その時——  

「藤田さん」  

振り返ると秋月さんがいた。  

「ちょっと話していい?」  

私はゆっくり頷いた。  

その後、私たちはフロアの片隅で窓の外の景色を見ていた。  

「俺、会社辞めるんだ」  

「……知らなかったのでびっくりしました」  

「妻と離婚が成立した後に、もう辞めようと決めていた。でも、藤田さんが現れた時、かなり迷った」  

遠くを見る秋月さんの顔はどこか寂しそうだった。  

「でもやっぱりここにいると、思い出に縛られるから、決心したんだ」  

秋月さんは私の指を見た。  

「彼氏と結婚が決まったの?」  

「はい」  

「そうか……」  

秋月さんは俯いていた。  

「藤田さんのこと、ちょっと押してみたけど、全然動かなくて根負けした」  

ほんの少し、心が揺らいだのは自分では認めたくないけど、本当だ。  
でも河内さんへの想いは揺らがなかった。  

「次の職場は決まってるんですか?」  

「地元の企業で働くよ」  

じゃあきっと、この人と会うことはもうない。  

「藤田さん、幸せになってね。それが俺からのお願い」  

「はい……頑張ります」  

私は幸せになりたい。  
河内さんと一緒に。  

「藤田さんの笑顔もっと見たかったな」  

秋月さんは私の顔を覗き込んだ。  
少しイタズラな笑顔。  

「俺といると警戒してるからさ」  

「すみません」  

恋とか関係なくこの人と仲良くなれれば、きっといい関係になれたかもしれない。  

「……営業スマイルならいいですよ」  

私はラウンジで培った笑顔を秋月さんに見せた。  

「ああ、やっぱり“さくら”さんだ。今度指名しよ」  

その時、二人で笑った。  
それは本当の笑顔だった。  

出会いと別れを繰り返して、私はだんだんと強くなっていく。  
私はもう迷わない。  

* * *  

その日、河内さんが仕事終わりに車で迎えに来てくれた。  

「お仕事大丈夫なんですか?」  

「今日は特に予定がなかったから問題ない」  

会社の社長が、他の会社の平社員を迎えに来ていると考えると申し訳なかった。  

「あの男とはどうなった?」  

河内さんは少し心配そうな表情をしていた。  

「ちゃんと決着をつけました」  

「……そうか」  

河内さんは何か言いたそうだったけど、その後、このことについては何も言わなかった。  
でも、家に帰った後、私を強く求めた。  

「優美、愛してる」  

「私もです」  

私たちの心は強く、固く結ばれた。  

もう二度と解けることがないように。
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