小っちゃくたって猛禽類!〜消えてしまえと言われたので家を出ます。父上母上兄上それから婚約者様ごめんなさい〜

れると

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第3章 強くなるために

アットホーム

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 バンっ!

 俺が勢いよくギルドの扉を開けると、中の空気は俺に一斉に注目する。

「お?草むしり終わったのかぁ?」
「見習いくんは今日も元気だねぇ」

 なんて言って俺のことをからかい始める。

「ふっふっふ」

 しかし、今の俺はいつもの俺と違う!

 俺は手に持っていた袋を掲げて高らかに宣言した。

「俺がダイアウルフを討伐した!!!」

 ……。
 …………。
 ……………………。

 しかし、誰も褒めたたえたり驚いたりする様子はなく、ただ静かに黙っている。

 え?誰か何か言ってよ?なんで皆無言なの?

 俺が不安になってきたその時、どこからともなく「ぷ」と笑う声が聞こえて来た。
 それを皮切りにギルド内が笑いに包まれる。

「おいおいおい、嘘はいけねぇぞぉ見習いくん」
「お前みたいなガキが倒せるかっての」
「どうせディーがやったんだろ」

 誰も信じてくれてない。それがすごく悔しくて、意地になって袋の中身をひっくり返した。
 ボトボトっとダイアウルフの尻尾が6つ、落ちてくる。

「嘘じゃないし!俺も倒したし!」

 ざわ……と空気が変わった。
 笑っていた冒険者のうち2人が立ち上がって近づいてきた。

「まじでダイアウルフの尻尾だ」
「本物、だな……で、肝心のディーは?」

「え、ディーならそこに……あれ?」

 振り返って見たがそこにディーは居なかった。

 あれ、そういえばディーに散々「歩け」と言われて、でも気持ちが高ぶって結局走ってきた気がするような……。

「多分、もう少ししたら来る」

 とりあえず、腕を組んで自信満々に言ってみた。

「"多分"ってなんだよ"多分"て」

 なんかみんなため息を吐いちゃった。なんで?

「……だから走っていくなと言っただろうが。……おい、なんで床にばらまいてんだ。報告したんじゃねぇのか?」

 そうこうしているうちにディーがやって来た。
 先程、俺が床にばらまいた尻尾を見て、声が低くなる。

「あ、あーっと、ちょっと手元が狂っちゃって、さ?報告は今からするよ、今から!お姉さーん!!」

 俺は慌ててばら蒔いた尻尾を拾い集めて犬耳お姉さんのいるカウンターに急いで向かった。

「あの、えと、ダイアウルフが出たので討伐しました!全部で6匹です!」

 お姉さんはにこやかに俺に質問をする。

「どこで出ましたか?いつもと違う様子はありましたか?他になにか気になることがあれば教えてください」

「え、えぇと、場所は……森?」

 ゴンっ

「痛っ!」

 依頼じゃない討伐申請ってこんなに色々聞かれるものなの!?俺はドギマギしながらも、きちんと質問に答えたつもりだったのだが、頭に拳が落ちてきた。

「なんでぇ??」

 涙目でディーを振り返ると、やれやれといった風にため息を吐かれた。

「阿呆か。"森"で場所が分かったら苦労しねぇだろ」

 その様子を犬耳のお姉さんはくすくすと笑いながら見守っている。

 ディーは俺のポケットから俺の依頼票をカウンターの上に広げながら説明しだした。

「こいつの依頼の、これが生えてる北の森の入口だ。奥に行けば遺跡のある場所だ。突然、森の奥から6匹が走ってきたんだ。それ以外は特に気になるところはねぇ。突然変異もなかった」

 え、あの奥に行けば遺跡があったの!?行きたかった!もしかしてアレク、遺跡探険に行ってたのか!?ずるい!羨ましい!

 でもそんな事より気になる単語があった。

「……突然変異?」

 俺が気になる言葉を繰り返すも、あっさりとディーに無視される。

「承知しました。検品と、残りは現地に?」

「あぁ、運べねぇからな」

「分かりました。そちらも確認しますので明日また来てください。ところでこのエルくんも倒したって本当ですか?」

「あぁ、2匹、こいつの手できちんと始末してたぜ」

「あら、すごいわね、エルくん」

「まぁな!なぁ、ところで突然変異って何!?」

 俺は褒められたことで機嫌が良くなり、無視された時のムッとした気持ちなど忘れて疑問を訪ねた。

「突拍子もない行動をする個体にはね、時々"普通とは違う特徴"が出ることがあるの」

「へぇー、そうなんだ」

「そうなの。突然変異の中には普通の個体より強いものがいるから気をつけてね」

「うん!分かった!」

 "突然変異"か。そういえば、ディーがアレクの事"突然変異"って言ってなかったっけ?あれ、どうだっけ?確かに普通とは違うみたいだけど……まぁ、いっか、今は俺の従魔で頼りになるし!

「見習い!お前2匹も倒したのか?すげぇじゃん」
「さすがディーの見習いだな!」

 ギルド内にいた冒険者がわらわらと集まって俺の頭を乱暴にガシガシと掻き回す。

「もう!髪の毛ぐしゃぐしゃになるだろ!なんだよ、俺の言うことは信じなかった癖にぃ!」

 認めてもらえて嬉しい反面、信じてくれなかった事が悔しくて声を荒らげたけど、冒険者たちはそんな俺をケラケラ笑うばかりでやっぱり悔しさが募っていく。

「だってなぁ?見習いだし?」
「そーそー、見習いだしなぁ?」
「見習いはみんな言うからなぁ?」
「見習いお前しかいねぇけど!」

「俺は嘘言わないし!」

 もう!なんだよみんなして。

 俺は頬を膨らませながらギルドを出た。でも心の奥はなんだか充実した気持ちでいっぱいだった。

 カバンがもぞっと動く気配がする。

 とりあえず、宿に戻ったらアレクにどこまで探検に行ったか聞かないと!
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